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MIUコンサルティングオフィス・社会保険労務士三浦剛のブログです。

コンプライアンス経営へ No.54(制裁その2)

2011年01月16日 | 会社の法律ミニレッスン
企業へのコンプライアンス(法令遵守)の要請は高まっています。
 「知らなかった」では済まなくなってきています。日曜日、「会社の法律」をお勉強!

 第54回は、「制裁」その2です。

 会社が社員(労働者)に制裁処分(懲戒処分)を課すためには、就業規則などに制裁に関する規定がなければなりません。
 しかしながら、これで十分かと言えばそうではありません。「社員(従業員)への周知」を行うことが必要です。過去の判例を見ると、就業規則が社員(従業員)に周知されていまい会社での懲戒解雇を有効とした判決を最高裁が破棄した『フジ興産事件(最高裁第2小 平成15年10月10日)』があるので、就業規則の周知は重要事項になっています。

 懲戒を行う際は
(1)就業規則への「服務」「懲戒」の規定整備
(2)社員への周知を行う
ことが前提になります。 

 懲戒処分では
□1.明確性・該当性の原則
□2.相当性の原則
□3.不遡及の原則
□4.一事不再理の原則(二重罰の禁止)
□5.手続きの保障
□6.バランス・平等(不当な動機や目的がない)
であることが必要とされています。

 明確性は就業規則等に懲戒規定があるかどうか、該当性は処分を行った事実が懲戒事由に該当しているか否かが、最初の判断基準となります。そして、社会通念に照らしても「そりゃそうだよ」と言えるかが相当性になります。
 問題が発生した後で、あわてて就業規則等を変更してもダメですよ!というのが「不遡及の原則」です。慌てて新しい規則を作っても、その規則をすでに起きてしまった事件にさかのぼって(遡及して)適用することはできません。

■フジ興産事件(最高裁第2小 平成15年10月10日)
 就業規則に基づき労働者を懲戒解雇したが、懲戒事由に該当するとされた労働者の行為の時点では就業規則は周知されていなかった事例で、就業規則が拘束力を生ずるためには、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するとし、懲戒解雇を有効とした原審を破棄し、差し戻した事件。
【判決の要旨】から
『使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する(最高裁昭和54 年10 月30 日第三小法廷判決〈国労札幌支部事件〉)。そして、就業規則が法的規範としての性質を有する(最高裁昭和43 年12 月25 日大法廷判決〈秋北バス事件〉)ものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するものというべきである。』