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長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

293. LTAP・リトルターン・アートプロジェクトに参加する。

2017-06-09 19:04:42 | 野鳥・自然
今月、3日。自宅から浜松町駅まで電車で移動、ここからモノレールに乗り換えて昭和島駅で下車、東京都大田区の昭和島にある「東京都下水道局 森ケ崎水再生センター」に行ってきた。こう書くと「絵描きがそんな場所に何をしに行ったんだ」と言われそうである。
この施設の屋上に毎年、今の季節になるとカモメ科のコアジサシという夏鳥の野鳥がコロニー(集団営巣地)を形成し子育てを行っているのである。「なんだぁ、バードウォッチングかぁ」と思われるかも知れないが、今日はただの個人的な野鳥観察ではない。

コアジサシはかつては首都圏近郊でも湾岸域や河川、内陸湖沼など水辺ではどこでも必ず普通に観察できた野鳥だったが現在では繁殖地の大規模な開発により、その生息数が激減し環境省が発行しているレッドデータブック(絶滅の危機に瀕する野生生物のリスト)に「絶滅危惧種」として掲載されてしまっているのである。

16年以上前、この地の人口基盤上でコアジサシの営巣が確認されてから、この危機に瀕する野鳥たちを救おうと立ち上がった人たちがいた。少しずつ賛同する人たちを募りながら地道な調査研究活動、営巣地の保全・再生のための環境整備事業、観察会、環境学習会、関連自然保護団体とのネットワーク構築などの活動をコツコツと積み重ね、現在はNPO法人「LTP リトルターン・プロジェクト」という組織としてコアジサシをはじめとした野生生物と人間との共生を目指す非営利活動を展開している(リトルターン・Little Tern とはコアジサシの英語名)。

僕もLTPの活動の事は以前よりさまざまなメディアを通して知り、「とうとう日本にも本格的な野鳥保護活動をする人たちが出て来たんだな」と、たいへん感心し注目してきた。
今年の春、都内の公共施設で開催された日本の野生生物を描くアーティストたちのグループ展に参加したところ知人のイラストレーター、O女史より、LTPの中心メンバーとして活動されているM氏を紹介された。そして二人は今「LTAP リトルターン・アートプロジェクト」というコアジサシの保護活動と連動した展覧会の企画を計画中であるというのだ。そこで是非、僕にもアーティストの1人として参加してほしいというのである。二人の真剣な表情、特にM氏の熱っぽい説明にその場でつい「よし、コアジ(コアジサシの略称)のためにみんなで一肌脱ごうじゃあないか!」と言ってしまった。いや、これで良かったのである。

3日はその参加メンバーでの「現地取材観察会」。普段は関係者以外は入れないのだが、特別にコロニー内に入れてもらったのだった。午前10:30集合時間に入り口に辿り着くと今日の参加メンバーである画家、イラストレーター、漫画家、立体作家などのアーテイスト19名が勢ぞろいしていた。さっそくM氏のコロニー内での観察行動の注意事項が説明され、いざ取材に出発となった。今年は約1000羽のコアジサシが飛来しているという。

施錠された門が開けられ中に入ると人口的な建築物の屋上という広くて平らな環境には砂利や貝殻が敷き詰められ所々に外敵からの保護用の煉瓦ブロックが組まれている。参加者は暑さ除けに設置されたテントの周辺まで移動すると各々、双眼鏡や望遠鏡で観察を始める。カメラでコアジサシたちの姿を撮影する人、スケッチブックを取り出してスケッチを始める人、ノートにメモを取る人などそれぞれの取材内容となる。

望遠鏡で観察していると巣の上にうずくまる親鳥の下から生まれたての可愛いヒナの姿や卵が観られた。よく見回していくとそこかしこに巣ができている。ときおりコアジサシたちがワッと群れで飛び立つことがある。カラスが出現するのだ。M氏の解説では、ここでの最大の天敵はカラスたちで卵やヒナを丸呑みしてしまうそうである。それから猛禽類のハヤブサやチョウゲンボウも出現し親鳥も捕えられるとのことだった。まさに「命がけの子育て」なのである。昼食後はM氏の誘導でさらに巣が近くにある特別な場所や保護区内に作られた水辺のビオトープなどを案内してもらったり至れり尽くせりの取材だった。

炎天下の中、ちょっとハードな取材となったが、アーティストそれぞれが、生きたコアジサシの姿を取材し脳裏に焼き付けて16時に解散となった。展覧会は早いものが今年の11月、それから何か所かを巡回する。さぁてここからが勝負。どんな作品に仕上げて行こうか。仕上がった作品はLTPの保護活動に使用される。コアジサシたちの未来のため、少しでも保護活動の役にたてる作品を制作するために気持ちを引き締めて行こう。

画像はトップがコロニー内のコアジサシの成鳥。下が向かって左からコアジサシ成鳥と飛翔図、取材のようす3カット、営巣地内の環境4カット。

                           






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2 コメント

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ありがとうございます。 (ミスター缶バッジ)
2017-06-10 00:11:43
LTAP取材記事ご掲載ありがとうございます。
当日は朝から夜までお付き合いいただき感謝しかありません。コアジサシのためにお手伝いいただけてほんと幸せです。ご参加の皆さまが今後どんな素敵な作品を創られるかと思うと泣けてきます。どうぞお力をお貸しください。よろしくお願いいたします。
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こちらこそ感謝します。 (uccello)
2017-06-16 17:57:26
缶バッジ様

こちらこそ、普段は入れない貴重な場所に入れていただき感謝します。
千葉の幕張のコロニーが大型スーパーになってしまってからひさびさにコロニーの観察ができました。
微力ながら少しでもコアジたちの役に立てるように筆をとろうと思います。
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