長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

331. 絵画作品『獅子図』を制作する日々。

2018-05-08 19:19:30 | 絵画・素描
3月から今秋の聖獣・幻獣をテーマとした絵画個展に向け、時間の取れる限り、日々絵画作品の制作をしている。現在制作しているのは東西世界の神話や伝説に登場する『獅子・しし』である。

古代よりシルクロード文化圏の西アジア・シュメール王国やアッシリアなどでは獅子(=ライオン)は、百獣の王、王者の証し、大地母神を背に乗せて疾駆する随獣、侵入者を許さない王城の守護獣、魔除け、真夏の季節のシンボルなどであった。そのダイナミック動きや生命力の強さなど獅子が担ったさまざまな性格、姿をイメージの源としてスフィンクスやグリフォンなどの多種多様な聖獣、幻獣が生み出されて行った。その原型的なイメージがライオンのいないベトナム(獅子頭)、中国(カイチ)、日本(狛犬、唐獅子)などの東アジア地域にも交易と共に伝承され変容し続けてきた。

今回の僕の絵画作品『獅子図』では、シルクロードの最終地点である日本で形成され古典絵画や彫刻作品となった獅子のイメージに西アジアに観られる有翼のライオンのイメージを重ねて創作してみた。全体のようすや動きは葛飾北斎の「北斎漫画」の中の獅子を参考としつつさまざまなシルクロードのライオン、獅子たちを合体させていったのである。

それから画材は前回の絵画個展同様、手漉きの紙を用いている。前回はネパールの手漉き紙だったのだが、今回は能登半島の輪島の紙工房に特注で漉いてもらった和紙を使用している。また東洋的なイメージが強くなるので描画材には墨や胡粉、金泥などもふんだんに用いている(画像参照)。

この2~3カ月の間、国内外で軍事対立や政治不信などのニュースが続き、毎日、工房のつけっぱなしのラジオから情報が流れてきていた。獅子の顔を描きながら気が付いたのだが、徐々に「憤怒相・ふんぬそう」となってきているのである。無意識のうちに人間の邪悪な欲望世界に対する怒りの顔になってきたのである。西域に広く伝わった幻獣なので、その顔が単なる怒りを超えてアジア特有の「慈悲」の表情となってはこないだろうかと描き込みに想いがこもってくるのである。

東京での絵画の新作個展は9月末から。これから夏までの間、幻獣たちを集中して描く日々が続きそうである。完成作品の全体像は個展会場でご覧いただきたい。


画像はトップが制作中の『獅子図』部分。下が向かって左から作品の中に脇役として登場する鳳凰の顔、今回制作に使用している墨などの画材、シルクロード文化圏に伝承されるさまざまな獅子たち3カット(資料から)。



            







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1 コメント

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ありがとうございました。 (uccello)
2018-05-26 18:10:33
ブロガーのみなさん、今回も多くの方々にお立ち寄りいただき感謝いたします。
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