先月の25日と26日、2日間の札幌芸術の森での木口木版画のワークショップを行った翌日、フリーの時間を作って、「北海道立 野幌(のっぽろ)森林公園」に探鳥に行ってきた。せっかく千葉からはるばる北海道まで来ているのである。何か見て帰らないともったいない。僕の場合、地方都市に個展や出張で出向いた時、必ず一日半ぐらいのフリータイムをとることにしている。関西方面に行けば「古寺巡礼」をするし、この北海道のように大自然に恵まれた地域に行けば自然の中を動植物を探して徘徊することに決めているのだ。
と、いうわけで、6/27の朝、8:30宿泊中の札幌市内のホテルを出発、昨日までの悪天候とはうって変っての晴天である。まずは市内のコンビニで昼食、行動食、水分(ペットボトルのお茶2本)を補給する。特に水分は前回来た時(4年前)、あまく見ていて、途中で脱水症状になってしまったので忘れずに2本キープした。それからJR札幌駅に移動して森林公園駅に向かう。札幌から4-5駅だったと思う。16分で森林公園駅に到着。ここからは徒歩で公園入口まで舗装された道路を歩いて行く。9:44森林公園入口に到着。りっぱな地図案内板でコースを確認してから進路をとり進んでいく。
野幌森林公園は札幌市・江別市・北広島市の3市にまたがる、石狩平野に島のように残された、なだらかな野幌丘陵に広がる森林公園で2053haという広大な面積を有する。天然記念物のクマゲラ(大型のキツツキ)を始め希少な野生動植物が見られる貴重な森となっている。札幌市に隣接しているが、このような大都市近郊の広大で原始の面影を持つ平地林は国内外に例をみない貴重な自然遺産となっている。
これだけの広さのある森林公園なので散策コースもたくさんできている。前回は森林の奥深くに入っていくロングコースをとったのだが、変化に乏しい印象を持った。今回は記念塔広場から森林内に入り野鳥との出会いが多いという「瑞穂の池」周辺を散策し、林道を途中までもどってから「自然ふれあい交流館」にたどり着くコースをとることにした。高く巨大なコールテン鋼材でできたモニュメント「開拓百年記念塔」を迂回し、森林の中に入っていくと、眼前に別世界が広がっていく。ウエストポーチにクマよけの鈴を付け”チリン、チリン”と音をさせながら別世界に入って行く。北海道といっても6月の下旬である。木々の葉はうっそうと繁り昼なお薄暗くひんやりと涼しい。林内では”ヨーキン、ヨーキン、ケケケケク…”とそこら中からエゾハルゼミの鳴き声がうるさいほど聞こえてくる。コースを確認しつつさらに進んでいく。まずはヒガラ、シジュウカラ、コゲラなど森林性の小鳥たちの声を確認。そして夏鳥はウグイスの仲間のセンダイムシクイの”チヨチヨヴィー”、ヤブサメが、しり上がりの虫のような”シシシシシシシ…”とそこかしこで鳴いている。次いでヒタキの仲間のキビタキがピッコロのような美しい声で鳴く。声はすれども姿は見えない。これだけ森林に葉の繁った季節は何もここに限らず全国区で言えることで、野鳥たちの姿を見つけることは「至難のわざ」なのである。さらに進むと三叉路に出た。ここから「瑞穂の池」に向かう道へと分かれる。フライヤーの地図でコースを確認していると”トッピンカケタカ”と大きな声が頭上から落ちてきた。北海道の低地林に夏鳥として渡って来るエゾセンニュウである。双眼鏡で声がする方向を探すが見つからなかった。
「今日は野鳥の姿はあきらめて森林浴と決めよう!」と独り言を言う。一人で山や森を徘徊している時に独り言を言うのは僕のクセである(あぶない人間ではない)。道標に添って「瑞穂の池コース」を進んで行く。森林の中の単調な道を黙々と歩いて行くと、ポッカリと視界が開けた場所に出た。林道の先にステップが付いていて下ったところに池が広がっている。そんなに広くはないが今までの環境が退屈だったので、青い空を写し込み澄んだ水面は暗い森に囲まれてパッチリ開いた瞳のように見えた。入口から約一時間半で目的地の一つ「瑞穂の池」に到着した。池の端の広場に四阿が一つ建っていたのでここのベンチに座りながら、じっくりと野鳥観察を始める。水面には夏羽のカイツブリが1羽浮かんでいるだけで他には鳥影はない。ザックからランチを取り出して大休止。明るく静寂な時間が過ぎて行く。ここまでのコースで4-5人の人にすれ違っただろうか。「このまんま昼寝にするか」また独り言を言う。ぼーっと池周辺を眺めていると上空をすばやく飛び回る鳥のシルエットが見えた。あわてて胸の双眼鏡を取り上げ追って観る。何度か同じところを旋回飛行した。「チゴハヤブサだっ!」ハヤブサの仲間の小型(ハト大)の猛禽類で北海道と東北地方北部の平地の林で少数が繁殖している。下面の特長もよく観察することができた。少し満足。
池で昼食をとり、一時間強休憩したので、そろそろと腰を上げた時、背後の林から”ボボッ、ボボッ”とカッコウの仲間のツツドリがよく響く声で鳴いた。ここからは、さっきエゾセンニュウの声を聞いた三叉路まで戻り「自然ふれあい交流館」へと続くコースに入る。相変わらずの森林の中の単調な道。鳥の種類もあまり変わらない。声をカウントして行くが、この林の夏鳥はセンダイムシクイ、ヤブサメ、キビタキの個体数が多いようだ。途中、野鳥以外に植物や昆虫などを楽しみながら観察した。13:37自然ふれあい館に到着するが公共施設なので月曜日が休館だった。中に入れず、周辺の木陰で小休止。冷たいお茶を飲みながらフィールドノートを確認する。この日、観察できた(声が聞けた)野鳥はちょうど20種だった。ここからは最初に通った「開拓百年記念塔」の広場まで行きとは別コースで戻ることになる。15:08記念塔広場に到着。北の大地の上を真っ白な夏雲が雄大に広がっていた。元来た道を駅まで向い、また札幌の宿まで帰ることになる。電車の車窓から石狩平野の広い風景をぼーっと眺めながら、なんとも言えない心地よい疲れを感じた。「今夜はすすきので美味しい魚と冷たい生ビールで一杯やろう」ここでさらに一人言を言うのでした。画像はトップが森林公園内の「瑞穂の池」。下が向って左から開拓百年記念塔、森林内の様子5カット、植物、昆虫など5カット、空の雲、「自然ふれあい交流館」外観、唯一撮影できた普通種の野鳥のキジバト。