ひとり井戸端会議

主に政治・社会・法に関する話題を自分の視点から考察していきます。

「直近の民意」とは何ぞや!?

2008年01月13日 | 国政事情考察
 テロ特措法が衆院で再可決をされた。それをもって野党の一部から、「直近の民意は参院なのだから、衆院で再可決するのは、直近の民意に反する」という批判が聞こえた。今回は、この一見もっともらしい、「直近の民意」というフレーズの欺瞞性を抉ってみたい。

 この、最近よく聞くようになった「直近の民意」という言葉。このような言葉は、自分は政治に関心を持ち出して数年経つが、これまで聞いたことはなかった。このフレーズがよく聞かれるようになったのは、思うに、民主党が参院で第一党になってからではないか。

 これはもの凄く都合のいいフレーズではないか。なぜならば、一番最近に選挙をして勝った党が正しい、その前の選挙の結果しか反映していない党の意見は民意を反映していない、って言っているのと言っているに等しいでしょう?いつから政治は、「勝てば官軍、負ければ賊軍」の原理が支配するようになったのか。

 直近の選挙結果を反映した党なり議院が正しいというならば、いっそ憲法も改正して、衆院の優越を定めた規定も削除すればいいではないか。直近の民意云々と言うならば、民主党は次の衆院選で負けたときに、同じことを言われても、それに甘んじて受け入れる覚悟はあるのか?

 これは邪推の域を出ないが、仮にも衆院が参院に優越するという原則がなければ、民主をはじめとした野党は、「直近の民意を反映すべきだ」などと言わないだろう。というのも、彼ら野党がマジョティーを占めた参院は、首相の選出はできないし、法案を否決しても衆院で可決すれば、そちらが優先していまうからだ。要するに、極端に言ってしまえば政権を取れないことへの、僻みだ。

 そもそもだが、直近の民意を正確に反映しようとするならば、毎週のように選挙をせねばなるまいに。なぜなら、「2007年7月現在」の民意とは、もう半年近くも前のものでしょ?もはや当時とは民意も変わってきていると思うが、野党の皆さんは、そこはどのようにお考えなのでしょうかね。

 このような「直近の民意」論は、二院制不要論を加速させるものでしかないのではないか。直近の民意に重きを置くならば、解散のない参院は、それこそ直近の民意を反映させるのに相応しくない。しかも任期は6年もある。これでは参院の半数は、選挙末期時点では、5年11ヶ月前の民意の結果であって、もはや直近の民意の欠片も有していないからだ。にも関わらず、参院から「直近の民意を反映していない」という批判が出てくることは、不思議で仕方がない。

 それから、一部には、直近の民意は野党に与党を上回る議席を与えたのだから、これはテロ特措法にノーという意思表示を示したのも当然という暴論が聞かれるが、先の参院選では、焦点となったのは「消えた年金」問題などであって、国民はテロ特措法を選挙の投票基準に据えていたとは考えにくい。
 国民は、与党の年金問題への対応のまずさ、相次ぐ閣僚の不祥事、失言等にお灸を据えるために、最大野党である民主党に議席を与えたのであり、テロ特措法に反対してもらうために、民主党を躍進させたのではない。現に、テロ特措法の問題が浮上してきたのは参院選後ではないか。

 あと、民主党も、「直近の民意」なんて婉曲な表現はしないで、「選挙で勝てたオレらが何でも正しいって言ってんの!オレらの言うとおりにすればいいの!」って、正直に言えばいいのに(苦笑)。

 ということで、そんなに直近の民意を反映したいなら、憲法の規定は削除して、毎週のように選挙もして、ポピュリズムに踊り狂えばいいじゃないですか・・・。

 あのね、民主さん・・・?民意に直近も昔もないの!最新の民意を反映した政党が正しくて、その前の民意を反映した政党は正しくない、とかいう次元のものじゃないの。民意は、昔の民意も今の民意も等しく同じ重さを持ってるの!分かった!?そもそも、アンタたちは、2005年の衆院選挙で与党が大勝したとき、「直近の民意」に従っていたのかい!?

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