ひとり井戸端会議

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北朝鮮を「テロ支援国家」から外すのは時期尚早

2007年11月27日 | 外交事情考察
 アメリカは、国内の総選挙での共和党の惨敗、イラク政策の失敗と、ブッシュ政権の根底が揺さぶられて以降、北朝鮮への態度を急速に軟化しつつある。一時は「拉致問題の解決なくしてテロ支援国家リスト除外はない」とまで言い日本の拉致問題をバックアップしてきたが、今やヒル次官補をはじめ、アメリカ外交の中枢の人物はテロ支援国家解除に前向きだが、これに対し、このまま拉致問題を御座なりに処理されないよう、日本政府はアメリカに対しあらゆる努力を行うべきは言うまでもない。そこで、今回はいかに北朝鮮の「テロ支援国家」解除が時期尚早のものか、検討していきたい。

 アメリカが「テロ支援国家」として指定している国は北朝鮮のほかに、イラン、シリア、キューバ、スーダンがあり、2006年まではこれら各国に加えてリビアが含まれていたが、アメリカはリビアの民主化、非核化の傾向を評価して26年ぶりに外交関係を回復させた。

 リビアがテロ支援国家を解除されるまでの道のりは、今の北朝鮮のそれとは比較にならないほど厳しいものであった。アメリカはリビアに対し北朝鮮のような「ゴネ得」は絶対にさせなかった。
 たとえば、リビアは1988年にパンナム航空103便爆破事件を起こし、乗客・乗員259人全員とスコットランドのロッカビーの住民11人を殺害の決行、更にその後核開発を断行したが、前者については容疑者全員の身柄引き渡し(当初はこれを拒否していた。)および被害者遺族等らに対し一人12億円もの賠償を行い、後者に関してはIAEAの職員の査察受け入れならびに核施設の完全無能力化を実行に移した。こうした経緯を経て、ようやくアメリカによる「テロ支援国家」からの解除は実現したのだ。では翻って北朝鮮はどうか。

 周知のとおり、拉致問題に関しては「解決済み」の態度を変えていないのはもとより、赤軍派メンバーの日本人妻は、松木薫さん、石岡亮さん、有本恵子さん等の日本人拉致事件への関与していたが、北朝鮮側はこの問題を棚上げしているし、ラングーン事件では未だに賠償はおろか、その関与すら否定している有り様である。挙句、日本海にミサイルを撃ち込み、核実験まで断行したのはつい昨年の話である。
 この「ザマ」で、どうして「テロ支援国家」解除という発想が出てくるのであろうか。アメリカのとっている態度はリビアのときと比べ、明らかにダブルスタンダードであり、もし北朝鮮のような程度で「テロ支援国家」指定解除が可能ならば、リビアなどとうの昔に解除されている。

 アメリカは、核施設の無能力化という曖昧模糊とした表現で、クリントン政権のときと同じ轍を踏んではならない。核施設の無能力化など、北朝鮮がその気になれば、またいつでも「危ない玩具」を振り回して恫喝外交ができてしまう程度のものである。これでは、そのとばっちりを真っ先に受ける日本はたまったもんではない。しかも、拉致事件も有耶無耶にされる。

 ブッシュ大統領は「拉致を決して忘れない」と言ったはずだ。それならば有言実行をしてもらわなければならない。拉致被害者家族の方に残された時間は多くない。このまま拉致被害者の家族の方々が肉親と再会できないとなれば、その心境は察するにあまりある。日本政府が、国家の主権が侵害されている「現在進行形」のテロ行為に、アメリカが目を瞑ろうとしているのに、指を銜えて黙って見ていれば、国民感情も爆発するだろう。

 しかしながら、日本がアメリカに対し毅然と「解除をしてはならない」と言えるためには、テロ特措法の成立も不可欠だということを忘れてはならない。「俺はお前を助けないけど、お前は俺を助けろ」という独善的な主張は、国際社会では通じない。

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