首相の「暴挙」発言は国民の声…前原外相が説明(読売新聞) - goo ニュース
【モスクワ=穴井雄治】前原外相は11日の日露外相会談で、菅首相がロシアのメドベージェフ大統領の北方領土訪問を「許し難い暴挙」と批判したことについて、「国民の声を代表するものだ」と説明した。
日本の国内世論の厳しさを伝えるとともに、日本政府の公式な見解ではないと釈明する狙いもあったとみられる。
この問題については、結論から言えば4島の(一括であろうがなかろうが)返還はあり得ないことだと思う。タイトルにも書いたように、せいぜい色丹・歯舞のニ島返還もしくは面積二分論だろう。その理由を以下に述べる。
どういうわけかマスコミは沈黙しているが、1956年、鳩山一郎政権下において日ソ国交正常化交渉が開始された際、アメリカのジョン・フォスター・ダレス国務長官は、当時の外相重光葵との会談(ダレス・重光会談)において、サンフランシスコ講和条約締約当時、「歯舞と色丹は千島の一部とはみなされていなかった」けれども、「択捉と国後が千島の一部でないと主張することは困難である」と述べているのである。
すなわち、同条約で日本は千島を放棄したが、この放棄した千島の中に北方四島のうちニ島の択捉、国後が含まれているのだから、同条約締約によって日本は択捉、国後を放棄したということだ。逆から言えば、色丹と歯舞は「放棄対象」に入っていないのだから、この両島については返還の対象となりうるということである。だから私はタイトルに「ニ島返還論」と書いたのだ。
しかも、こうした見解は当時の外務省の認識とも一致していたのだ。というのは、1946年11月に外務省が作成した「日本本土に隣接する小諸島」と題する資料において、国後と択捉は「南千島」と記載されているからだ。
それでは、面積二分論はどうか。かかる見解を表明したのは麻生太郎氏だが、氏が安倍内閣において外相を務めていたとき、2006年12月、国会において、氏によりかかる見解は表明された。
当時、ロシアはこの麻生氏の見解を歓迎した。すなわち、メドベージェフより、「双方にとって受け入れられる解決」という表現がなされ、ロシア側も北方領土問題を片づけ、日本との間に平和条約を結ぼうと動いていたように見えるからだ。
しかも、実質上ロシアの最高権力者であるあのプーチンまでもが、面積二分論が「問題解決に向けたあらゆるオプション」のうちに入ると明言していたのである。したがって、この提案は両国にとって吝かでないものになりつつあった。
しかし、北方領土は(確かに法的に見ても歴史的に見ても)ロシアによる「不法占拠」であることに変わりないのだが、これを日本側から言ってしまった。これによりロシア国内の風向きは変わった。しかも石油価格の高騰により、ロシア財政は非常に潤い、東の果ての四つの小島に対してもインフラを敷けるようになった。
すなわち、もはやロシアは日本と北方領土について交渉する「メリット」を感じていないのだ。だから私としてはニ島返還論よりも日本側にメリットのある面積二分論はもう望めないものとなってしまったように見える。
とは言え、四島返還論よりは先述した2つの案のほうが現実的なのは確かだ。ロシアだけではないが、どこの国も(どちらに非があるかは別として)領土問題の解決においては、双方の痛み分けが定石である。
確かにロシア側の「不法占拠」が、法的にも道義的にも許されるわけはない。しかし、原理原則に拘ってロシアとの交渉のテーブルに着こうとしないことのほうが、日本の国益を毀損するのではないか。
したがって、私はニ島返還論もしくは面積二分論しかもはや解決策はないと思っている。
【モスクワ=穴井雄治】前原外相は11日の日露外相会談で、菅首相がロシアのメドベージェフ大統領の北方領土訪問を「許し難い暴挙」と批判したことについて、「国民の声を代表するものだ」と説明した。
日本の国内世論の厳しさを伝えるとともに、日本政府の公式な見解ではないと釈明する狙いもあったとみられる。
この問題については、結論から言えば4島の(一括であろうがなかろうが)返還はあり得ないことだと思う。タイトルにも書いたように、せいぜい色丹・歯舞のニ島返還もしくは面積二分論だろう。その理由を以下に述べる。
どういうわけかマスコミは沈黙しているが、1956年、鳩山一郎政権下において日ソ国交正常化交渉が開始された際、アメリカのジョン・フォスター・ダレス国務長官は、当時の外相重光葵との会談(ダレス・重光会談)において、サンフランシスコ講和条約締約当時、「歯舞と色丹は千島の一部とはみなされていなかった」けれども、「択捉と国後が千島の一部でないと主張することは困難である」と述べているのである。
すなわち、同条約で日本は千島を放棄したが、この放棄した千島の中に北方四島のうちニ島の択捉、国後が含まれているのだから、同条約締約によって日本は択捉、国後を放棄したということだ。逆から言えば、色丹と歯舞は「放棄対象」に入っていないのだから、この両島については返還の対象となりうるということである。だから私はタイトルに「ニ島返還論」と書いたのだ。
しかも、こうした見解は当時の外務省の認識とも一致していたのだ。というのは、1946年11月に外務省が作成した「日本本土に隣接する小諸島」と題する資料において、国後と択捉は「南千島」と記載されているからだ。
それでは、面積二分論はどうか。かかる見解を表明したのは麻生太郎氏だが、氏が安倍内閣において外相を務めていたとき、2006年12月、国会において、氏によりかかる見解は表明された。
当時、ロシアはこの麻生氏の見解を歓迎した。すなわち、メドベージェフより、「双方にとって受け入れられる解決」という表現がなされ、ロシア側も北方領土問題を片づけ、日本との間に平和条約を結ぼうと動いていたように見えるからだ。
しかも、実質上ロシアの最高権力者であるあのプーチンまでもが、面積二分論が「問題解決に向けたあらゆるオプション」のうちに入ると明言していたのである。したがって、この提案は両国にとって吝かでないものになりつつあった。
しかし、北方領土は(確かに法的に見ても歴史的に見ても)ロシアによる「不法占拠」であることに変わりないのだが、これを日本側から言ってしまった。これによりロシア国内の風向きは変わった。しかも石油価格の高騰により、ロシア財政は非常に潤い、東の果ての四つの小島に対してもインフラを敷けるようになった。
すなわち、もはやロシアは日本と北方領土について交渉する「メリット」を感じていないのだ。だから私としてはニ島返還論よりも日本側にメリットのある面積二分論はもう望めないものとなってしまったように見える。
とは言え、四島返還論よりは先述した2つの案のほうが現実的なのは確かだ。ロシアだけではないが、どこの国も(どちらに非があるかは別として)領土問題の解決においては、双方の痛み分けが定石である。
確かにロシア側の「不法占拠」が、法的にも道義的にも許されるわけはない。しかし、原理原則に拘ってロシアとの交渉のテーブルに着こうとしないことのほうが、日本の国益を毀損するのではないか。
したがって、私はニ島返還論もしくは面積二分論しかもはや解決策はないと思っている。