控え選手中心の半2軍に我が日本チームが145点取られて惨敗した対ニュージーランド戦。
そのニュージーランドを破って、初出場ながら初優勝を飾った南アフリカの快進撃。
国際試合からオミットされていたので未知数でしたが「強いらしいよ。」とは聞いていました。
でも、未だ見ぬ強豪っていうのは蓋を開けてみれば大したこと無いっていうのが相場と
思っていたから、オールブラックスに守り勝った南アフリカのディフェンスは衝撃的でした。
そんな見る人によってはノートライの凡戦。見る人によっては力の入る熱戦の舞台裏に
こんなドラマがあったとは・・・
「メイクマイデー!」と挑発し犯人を容赦なく撃ち殺してきたクリント・イーストウッドが
齢を重ねてたどり着いた「自己犠牲」の境地が『グラン・トリノ』だったとしたら本作は
「赦しによる統一」がテーマ。
はっきり言えばスポーツの政治利用に他ならないんだけど、あえて征服者の誇りを
擁護し支援することで国威を掲揚しようとするあたりマンデラという人は高度に政治家
だったんだなあと思う。「10億人が我が国に注目するのか。」といってほくそ笑む
シーンがあるんだけど、なかなかの策士ぶりです。
同時にアメリカで黒人のリーダーが誕生したこの時期に、サッカーワールゴカップを
控え、再び注目を集める南アフリカを舞台に、映画を撮るイーストウッド監督も策士
だよねえ。商業的にタイムリーじゃないと観てもらえないし、観てもらえないことには
メッセージは伝わらないんだから、一流の芸術家でありながら商業的嗅覚を持つ
御年80にして現役最強の映画監督です。
後半のラグビーのシーンも含め緊張感溢れる画面作りにも年齢を感じさせません。
映画は彼が出獄するところから始まっているので、生まれつき平衡感覚に富んだ
平和的人物のように見えるけど、元々はレジスタンスで政権側から言えば完全な
テロリストだったんだよね。
長い投獄の間に白人を観察し、研究し、結果的にやられてもやりかえさないという
方法を選択した彼の内なる変化にも興味のあるところ。「マンデラの名も無き看守」や
「遠い夜明け」も併せて見ることをお勧めします。