横浜北部 障害児者支援 NPO法人 みどり福祉ホーム

横浜北部で重度重複障害者の日中活動、障害児者の生活支援、セイフティーネット構築を行っています。

食べるということ 生きているということ

2022-06-17 09:20:58 | 日記
みどり福祉ホーム統括所長は今、51歳で
幸か不幸か歯も胃も丈夫で育ち
無類の食いしん坊(早食い大食い)で
嫌なことがあった時はお酒を飲みいいことがあった時はもっと飲みお休みの日はお昼ご飯を待てずにビールの缶をプシュッと開けグラスに注ぎ
柏餅とかカステラとかにも目がなく
先日立派な糖尿病となりました
お医者さんにこっぴどく叱られとても不思議なビデオをみせられ
野菜中心の食事(1食ゆっくり30分)と週1~2回の休肝日、朝夕のヨガ、間食は原則禁止、ノートに血圧と食べたものを記録し、愛する長女(大学2年)がアルバイトしているバイキングレストランにも絶対行かないと心に誓い
なんとか今も生きさせてもらい、仕事も続けることが出来ています

育ち盛り食い盛りの長男(高3)から
「好きなものも我慢して食べないで生きてる意味ないじゃん」と言われ
返す言葉もなかったです
心の中で
「2年前までは私も同じことを‥」

統括所長51歳の最近の楽しみは寄席に行くことで
夜寝るときに布団の中でイヤホンをつけて落語を聞いたりします
この間、柳家小三治という人の落語を聞いていたら、まくらで
「卵かけご飯をものすごい勢いでかき混ぜる人がいるけどあれはいけない、白身とか黄身とかご飯とかが適当に残った状態で食べておなかの中で一体にするのが良い。おいしい鰻をミキサーにかけて流し込んでもおいしくないでしょ」
みたいなことを言っていました

統括所長51歳はこう見えても(どう見えてるかわかってないのですが)
拘りが強く
スーパーで買ったお寿司やコロッケを
プラスチック容器のまま食べることが出来ません
絶対に陶器のお皿に移してから食べ始めます
缶ビールもガラスのグラスに注がなければ飲みたくないと思ってしまいます
家にはお気に入りのお皿やカップがあって
割れてしまうとホームセンターで買った補修材と釣具屋で買った金粉と漆を使って金継ぎのまねごとをして使い続けたりしています

統括所長51歳の周りにいる尊敬すべき医療職の方何名かが
「口からご飯食べれなくなったら、私、死ぬから」
と言っているのを聞いたことがあります

長々と済みません
なんのこっちゃとお思いでしょう

みどり福祉ホームに通ってくる若く元気な障害のある仲間の
大体半分くらいは私たちと同じような形態の食事をとっています
残りは離乳食や老人介護食に似たムースやペースト状の再調理食を口から食べています(私たち職員はほとんどの方の食事介助を行っています)
みどり福祉ホームにじいろに通ってきている何名かの仲間は
口からご飯を食べ栄養を取り続けることが難しく
鼻から胃にチューブを挿したり、胃に穴をあけたりして
経管栄養という方法で食事をとったり栄養をとったりしています
昔は甘いバニラドリンクのような液体で栄養を取ることが主流でしたが、最近は胃ろうという方法でミキサーで流しやすくした食事を胃に直接注入する方法がトレンドのようです
私の知り合いの障害のある方のお母さんは
「鰻でもなんでも、私たちと同じものミキサーして同じご飯食べてるわよ、この子」と言っていました
最近聞いた話では今、高校に通っている重症心身障害児は、まだ口から食べれるうちから胃に穴をあけて、将来の急な体調不良に備えるのが流行っているとか
実は昨年度、みどり福祉ホームにじいろの仲間が2名、胃に穴をあける胃ろう手術をしました。1人はもう30年以上、口からご家族が作ったおいしいご飯を食べ続けてきました。今もちょっとしたデザートは口から楽しんでいます

私が知っている限り、みどり福祉ホームやにじいろにいる、元気でまだまだ若い口以外のの方法も使ってご飯や栄養をとっている仲間たちは、色々なことを楽しんでいるようで、基本的には幸せそうにみえますし、ほとんど体調不良で休みことはなく、この状態は今後何十年も続くように思えます

みどり福祉ホームは
立ち上げにかかわった石橋陽子さんが常々
「お昼ご飯はスタッフも利用者も同じものを適当な温度で一緒に食べる!」と
言っていました
私もそのことを常に頭に入れ、仕事をしていましたが
今ではスタッフは休憩時間を昼にとり持参した弁当やカップラーメンを別室で食べています
利用者の昼ご飯は、常食は近所の生協系のお弁当を毎朝配達してもらっています。再調理食は、評判の良い企業の冷凍食品を毎日解凍しだしています
導入に際しては、皆で試食して納得するものに決めました
食器は障害のある方が食べやすいように、後片付けをしやすいようにプラスチック容器に盛り付け使い捨てにしています
同じものを適温でみんな一緒には
配膳のヘルパーさんに毎日鍋いっぱいのみそ汁(時にはミネストローネ、中華風スープ)を作ってもらい、みんなで飲んでいます、障害のある方のおかわりリクエストがものすごく多いです
具は近所の障害事業所の畑でとれたものを買って使ってます
お味噌汁に関わる費用は法人が負担しています

食べること、生きているということ
答えがないことなのかもしれません

愚行権という考えがあって
(朝までゲームに明け暮れ昼間寝不足で仕事に来るスタッフや、毎朝少ない小遣いで近所の自販機にコカコーラを買いに行くことを楽しみにお昼にもまた買いに行きたいと訴え寝不足のスタッフにコーラは1日1本!と叱られる利用者、問題)
太く短くという考えもあります
知的障害のある方の愚行権をどう支えるかは相当難しい問題なんだと思います
障害者支援に関わる人や医療職の方は自身の生活はともかく会議や判断や日々の中でとかく清く正しく安全に(無難に)といいがちなのかもしれません
行政による監査や、組織の長による会議や現場での発言が、職員一人一人を委縮させているのかもしれません

みどり福祉ホームというところは
時代の流れや法律とも無縁にいられる訳もありませんし
立ち上げのスピリットを捨て去るわけにもいきません
なんのために仕事をしているかの根本を忘れることは私たちにとって死を意味すると思っています
行って戻って
右往左往です

昨日会議で
私は提案をしました
「昼食の弁当を盛り付ける食器を陶器と漆器にしようよ」
「ムースや、ペーストの昼食を、介助する職員は、利用者に1口頂戴とことわってから、必ず味見しようよ」
結論は出ませんでした

私は決めていることがあるんです
人生最後の食事は
鰻でもしめ鯖のお寿司やレアのヒレステーキではなく
生のマンゴーをすりつぶしたピューレにしようと
口から流し込むか、胃に直接注入してもらうかは、まだ決めていません