横浜北部 障害児者支援 NPO法人 みどり福祉ホーム

横浜北部で重度重複障害者の日中活動、障害児者の生活支援、セイフティーネット構築を行っています。

だって未来しかないじゃないですか

2020-01-11 14:53:01 | 日記
「だって未来しかないじゃないですか」
失礼ながら私より少しばかり人生の先輩の最近入られた
ヘルパーさん(みどり福祉ホームでは非常勤職員のことをこう呼ぶ風習があります)
との面談で彼女が言った言葉です
未来しかないのは、49歳の所長である私でも、みどり福祉ホームという法人でも、
日本の国でもありませんでした
みどり福祉ホームに通われている、ほとんどが、非常に重い、
身体と知的に障害がある重度重複障害といわれる10代から40代までの
利用者たちには、未来しかないと言われたのです
未来しかない彼らの半分くらいは言葉を話さず、ほとんどはおむつをあてていて
ミキサー食と呼ばれるご飯を食べ、
みどり福祉ホームが支給する工賃は年間計5,000円で
2名の方は医療的ケアというものが日々の生活に必要な方です

ここ数日、
みどり福祉ホームの利用者の成人を祝う会があったり、
やまゆりの事件の裁判があったり、
私の頭の中には
この言葉がぐるぐる渦巻いているのです
「だって未来しかないじゃないですか」
私は
もう何十年も重度重複障害の方たちと、
最初は家族として、最近は長い時間職員として関わってきて
彼らの未来というものを
心の底から信じて来れたのだろうか
身体の変形や健康状態や社会性や、少なくとも
今のままの状態が少しでも維持できれば御の字だと
思ってはいなかったかと

生意気で傲慢で思い上がりが過ぎるのかもしれませんが
今のみどり福祉ホームの生き生きとした日中の日々は
もしかしたら
その言葉を彼女に言わせた要因の一つなのかもしれません

翻って
やまゆりでかけがえのない愛おしい命に刃を向けた男が
やまゆりで職員として過ごした日々はどうだったのか

私は所長として
障害のある方の過ごす環境を健全に保つことが
いかに不断の努力の連続で当たり前でないかを知っています
多くの職員や地域や障害のある方の家族や
なにより障害がある方の強い意志と働きと協力の中で
本当に微妙なバランスの中で成り立っているのです
私が
もしくは私以外の職員の多くが
予算や人手や社会の雰囲気といった理由で
みどり福祉ホームがみどり福祉ホームであることをあきらめてしまったら
あっという間に当たり前のことが当たり前でなくなります

津久井やまゆり園の再生に関して
運営法人の選定を白紙に戻すというニュースがありました
多くの今いる利用者の家族や津久井やまゆり園の運営を担ってきた法人の
反対がある中でと新聞には書かれていました

障害のある方と障害のある方の家族と関わることは
切れ目のなさや関係性の深さが重要なのは言うまでもなく
みどり福祉ホームの運営法人や職員や所長がころころ変わるのは
原則的に良くないことです

しかし、今回は、敢えて
私は津久井やまゆり園の運営法人は1回白紙に戻すべきだと考えます
事件に至るまでの日々の支援の中身や施設の雰囲気をきちんと検証し
なぜ事件が起きてしまったのかを
犯人個人の問題だけにするのではなく
最低でも彼が働いた職場とその運営法人の理念やシステム、実態をも含めた
問題として考えるべきなのです
そもそも2016年11月に神奈川県がまとめた
「津久井やまゆり園事件検証報告書」はそのような視点が全く足りていなかったと思っていました
白紙に戻し検証し直した上で
今と未来のやまゆりになにができるのかなにをするのかを
真剣に考え動く法人に運営を委ねるべきなのです

みなさま
今年もよろしくお願いいたします

私は
みどり福祉ホームでは
やまゆりのような事件が絶対起きない
みどり福祉ホームに勤めていればやまゆりのような事件を起こすような職員になるわけがないなどと
言い切ることはできません
だから今年も
自分自身の傲慢を振り返り法人運営に常に怯え
慌ただしい日々だからこそ新しいチャレンジを行い
障害のある方やその家族一緒に働く職員へ優しい視線を持ち多様性を認め
課題をあきらめずどうしたら解決できるか泣きながら考え抜き働ける
職員にやさしい職場にしたいと
強く心に決めているのです
健康にも(お酒の飲み過ぎと暴食にも)気をつけようと思っています
みどり福祉ホームのたくさんの素敵な未来に
できるだけ長く寄り添っていたいからです