児童文学作家を目指して② 《楠章子先生との出会い~次は私の番》 丸山千耀
私は拙作『星屑のブロンシュ』を執筆するまで、
漠然と「作家になりたい」としか考えていませんでした。
しかし、大学2年生の児童文学を学ぶ講義で楠章子先生にお会いし、
「児童文学作家になる!」と決意しました。
楠先生の授業では、
何歳のどの子に向けて書くかによって、
テーマや登場人物の設定の仕方、物語の書き方などが大きく変わることなどを学びました。
例えば、幼年さん向けなら、
シンプル(簡単)な文章・内容を、ストレートな表現で描くことが大事になります。
また楠先生は、相手の心を動かす原稿の書き方を勉強する方法として、
「作品の構造分析」を教えてくださりました。
作品全体を見た時に1章は何のために存在するのか、
登場人物の気持ちはどのように変化しているのか……。
感覚で物語を書いていた私にとっては、大きな気づきを得た時間でした。
児童文学は先生の授業で初めて書いたのですが、
心の中で火花がぷちぷちと鳴っているような、
身体が生き生きとしたことをよく覚えています。
思い返せば、私は誰かの光となる物語が書きたいと考えていました。
窮屈な気持ちを抱いている人の心をほぐせるような、
そんな物語が書きたいと思っていました。
大人になると思うことがあるんです。
子どものころ、いろんな児童書を読んでいたから、
つらいことも苦しいことも、乗り越えることができたのだと。
実は小学生のころに、楠先生が執筆された『神さまの住む町』は読んだことがあり、
胸のあたりが、じーんと温かくなったことを覚えています。
作品の舞台になっている町に行ってみたいとも思いました。
また、大学見学の際にお会いした越水利江子先生の『忍剣花百姫伝』については、
同作品の人物を登場させた物語を書いて一人で楽しんでいたことがありました。
次は私の番ではないかと、勝手に思っております。
私も、柔らかい魂を持つ子どもたちに、
「一人の人間として大事にしたいこと」「苦しくてもきっと小さな光はあるということ」
が伝わる物語をそうっと届けることができたら、
やさしい世界を構築するためのお手伝いができるのではと信じています。
長くなりましたが、
物語を読む、書く行為には心を強くする力があると思っています。
ただ、物語を書くというのは楽しさだけでなく、不安も少し付き纏うような気がします。
私はまだ、児童文学作家になれていません。
でも、児童文学作家になりたい!と
社会人になった今でも強く思い、行動し続けることができたのは、
学校や大学の先生・同期、児童文学作家の方々、童話塾で出会った方々など、
大変素敵な縁に巡り合えたからだと思っています。
そして、「賞」というお守りをいただくことができたからです。
私は、みちのく童話賞も、
児童文学を書き続けるための「お守り」になると考えております。
みちのく童話賞が、子どもや大人、そして社会全体のやさしい希望につながると良いなと、
心から願っております。
私も、これまで出会った方々への恩返しの気持ちも込めて、
誰かが持っている暗くて硬い体験や感情を、
温かく柔らかいものに少しでも変えることができる作品を書くため、
静かに心を燃やし続けます。
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丸山さん、熱い思いを、ありがとうございました!!
楠章子先生は、現在も東北芸術工科大学で講師をされています(通年ではないので、HPなどでお調べください)。
この文章に刺激されて、作家を目指す方が出るかもしれません。
*写真は、丸山さんのお友達からの提供です。「奥の細道」って、感じですね。ありがとうございます。(お)