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よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

がん検診は、 線虫の仕事!? 話題のN-NOSEとは?

2020-02-14 17:08:56 | 健康・病気
 日本人の死因の第一位で、日本人の二人に一人が罹患するといわれる“がん”。早期発見・早期治療が大事と言われ、五大がん(胃がん・肺がん・大腸がん・乳がん・子宮がん)に対してがん検診が行われていますが、受診率が低く、早期がん発見の精度も今一つで課題が多い現状があります。

 この現状を劇的に変えることが期待されるがん検査が、今年から始まりました。それが、N-NOSEです。
N-NOSEとは、線虫の鼻という意味で、線虫の嫌いな匂い(健常者の尿)から遠ざかり、好きな匂い(がん患者の尿)に近づくという化学走性を利用した生物検査になります。わずか1滴の尿で15種類のがん(胃、大腸、肺、乳、膵臓、肝臓、前立腺、子宮、食道、胆嚢、胆管、腎、膀胱、卵巣、口腔、咽頭)の有無を調べることができます。
 画期的なのは、N-NOSEは、「簡便・高精度・安価・早期発見が可能・苦痛がない・全身網羅的」というがんの一次スクリーニング検査の条件をすべて備えていることです。早期がんの検出率も85%と言われ、価格も1万円程度です。

 線虫は一説には地球上に1億種以上と言われ、誰も正確な数を知らないとのことです。検査に使う線虫(シー・エレガンス)は、体調1mmで目や耳はなく、匂いをたよりに土壌中に生息しています。犬の1.5倍の嗅覚受容体遺伝子(約1200種、ちなみに人間は400種)をもち、機械で検出できない匂いをかぎ分けることができます。しばしば生物研究の材料として用いられており、今回のがん検査への応用を発見し開発したのは日本人研究者です。

 この検査を利用すれば、がんのスクリーニングだけでなく、治療効果判定、治療後の再発有無にも使えます。また2022年以降には、がんの臓器別診断まで可能になりより精度があがる予定です。さらにこの検査が普及すると、すべてのがんのデータベースの効率的な集積が可能となり、がんになりやすい人の生活習慣などの解析も期待されています。
 当クリニックでも、検査体制の準備ができ次第皆様にご案内します。

参考文献:「がん検診は、線虫の仕事」 光文社新書 広津崇亮
       HIROTSUバイオサイエンスホームページ:N-NOSE

「視覚」の成り立ち

2020-01-04 15:13:30 | 健康・病気
あけましておめでとうございます。東京オリンピックイヤーで、令和初のお正月ということもあり、いつもより高揚した気分で迎えられた方も多いのではないでしょうか。今年も皆様にとってよい一年でありますことをお祈りいたします。

 突然ですが、皆様が目を通して認識しているものは、本当にありのままの世界なのでしょうか? 今回は、「視覚」について考えてみます。

目の構造が、カメラの構造と類似していることはご存知のことと思います。

物体が反射した光は、角膜、水晶体、硝子体などを通過して網膜に到達します。網膜上に投射されたイメージは、経時的、空間的に強度や波長が変化する光のパターンとして明暗を認識する悍体細胞と色(赤・緑・青)を識別する錐体細胞にとらえられます。この情報を電気信号に変換し視神経を通して脳へ送ります。この情報は二次元情報ですが、脳の視覚中枢にて三次元に構築されて私たちの世界が認識されます。
別の言い方をすると、視覚とは、「何が」と「何処に」を脳が見出すプロセスとも言えます。このプロセスには、人類が進化の過程で得たイメージをパターン化する識別力(特にヒトの表情の識別は特別に発達しています)と三次元に構築し解釈する経験が必要です。前者は細胞レベルから脳へ伝達するボトムアップ情報処理(先天的要素が強い)であり、後者は、脳の学習や記憶機能によるトップダウン情報処理(後天的要素が強い)によります。したがって、視細胞の違いや脳機能の違いにより、同じものを見ても個人により認識する世界が微妙に違ってくるのです。例えば、抽象画を観ても感じ方は人それぞれです。

五感(味覚・嗅覚・聴覚・視覚・触覚)の中でも視覚情報の占める割合は8割を超えると考えられおり、視覚を磨くことで人生が違ったものなる可能性があります。私も、医学の知識向上および人生経験を通じて、皆様をより深く診ることができるように精進したいと思っております。


参考文献:「なぜ脳はアートがわかるのか」 青土社 エリック・R・カンデル

「少食」と「断食」のすすめ

2019-11-11 17:07:04 | 健康・病気
 飽食の日本では、「○○によい△△食材」と健康ブームにあやかった内容の報道が連日マスコミを賑わせています。確かに、積極的に摂取したほうがよい食品もありますが、他の食材とのバランスを考慮しないとカロリーオーバーや栄養の偏りの原因になる危険性があります。
今回は、食事に加えるのではなく減らす方向の、少食と断食に関して考えてみます。

 昔から「腹八分に病なし、腹十二分に医者足らず」という言葉がありますが、食べ過ぎは健康によくないことは認識されていました(無論、昔は腹一杯食べられる機会は少なかったと思いますが・・・)。
 空腹であることのメリットとして現在考えられているのは、① 血糖値が安定する、② 消化器官の負担を軽減する、③ 消化吸収能力が向上する、④ 良質な睡眠が確保できる、⑤ 食事からの有害物質の取り込みが減る、⑥ 長寿遺伝子のスイッチが入る(空腹状態を皮切りに長寿遺伝子が活性化し、老化を防いで心身が若返る)、⑦ 脳の新たなエネルギー源をつくり出す(食事量が減ることで体脂肪をケトン体に変換し、脳のエネルギー源として利用する)、⑧ 集中力が高まり、頭がよくなる(インスリン分泌が低下し、記憶にかかわる脳内のタンパク質が多くつくられる)、などがあります。
 同様に少食にすることで、がんの予防や転移防止に役立つ、若返り効果があるなどの最新研究もあります。
皆様も、昼食を抜いた時に、急激な空腹感が過ぎ去ったあと集中力が増し仕事のパフォーマンスが上がったことを経験されたことがあるかもしれません。

 断食とは、「母なる自然の中の手術台」とも言われ、ケガをした動物は、食を断ちじっと安静にして回復を待ちます。また、生物は、冬眠、生殖(発情期)や変態などの生命活動に断食をフル活用しています。
 我々人間も、毎日、空腹である睡眠中にからだの組織の合成・修復が行われているのはよく知られています。さらに断食をすると、体内のエネルギー源が「糖」からが「ケトン体」に切り替わります。このケトン体は、健康長寿をもたらす、疲れ知らずのスタミナがつく、集中力を生み出す、脳を落ち着かせ「心のデドックス」になるなどの効果が考えられています。
 最近の地球環境の悪化という点から考えても断食は有効です。残念ながら、現在我々の口に入る食材は、ほとんどがいろんな有害物質に汚染されています。断食は、有害物質が体内に入るのを防ぐだけでなく、体内から排出する効果も指摘されています。現代人に必要なのは、「足し算の栄養学」よりも、「引き算の栄養学」かもしれません。
 さらに、断食は、現代医療との共存も可能です。そもそも一日三食になったのは明治時代以降であり、それまでは一日二食が当たり前でした。休日に一食抜く手軽な方法から、医師の指導のもと三~七日間断食する本格的なものまであります。

 断食の基本的な手順をご説明します。断食とは、体に溜まった老廃物・毒素を排出し、本来の解毒力・免疫力を復活させる体の大掃除のプログラムです。
【準備期間(3~5日前)】玄米・野菜を中心とした穀菜食にします。
【当日】良質の水と断食用ジュースを朝昼晩に分けて摂ります。断食用ジュースは、最低限のカロリーを確保しつつ、細胞のリセットに不可欠なビタミンやミネラルを豊富に含んだものになります(例〔一人一回分〕、:イチゴ100g+レモン半分+豆乳80ccをジューサーで混ぜる)。水分といっても、コーヒー、紅茶、カフェイン入りのお茶、清涼飲料水、アルコールはダメです。
【復食期(1~3日間)】消化のよいお粥などで胃腸を慣らしていきます。

 さて、断食を成功に導くには、断食期ではない普段の食生活も重要です。
一つは、糖質依存からの脱却です。白米、パン、めん類には糖質が非常の多いため、主食は玄米やもち麦など食物繊維の多い穀類への変更や豆類などが望ましいです。野菜をしっかり摂ることも必要です。二つめは、カルシウムよりマグネシウムをしっかり摂ることの重要性です。理想的には、カルシウムとマグネシウムの摂取比は、2:1がよいとされますが、多くの人がカルシウム過剰になっています。マグネシウムは、未精製の穀物や青菜類、豆類や藻類、種実類に多く、不足するのは、精白した穀物、リンの多い動物性食品(消化管での吸収を妨げる)、飲酒(マグネシウム排泄を増やす)、ストレスなどです。三つ目は、魚油、亜麻仁油、えごま油などに含まれるω3脂肪酸を摂ることです。さらに、適度な運動(ヨガ・散歩など)に取り組むことも相乗効果を期待できます。

 断食は、減量目的ではなく、悪いものをとらず身体の解毒パワーを取り戻す手段の一つです。さらに空腹時間を増やすことにより、グレリンが分泌され、それにより成長ホルモンが出て新陳代謝が活発になり、若返り効果も期待できます。
 皆様も、時には是非、小食や断食にトライしてみてください。


参考文献:「死ぬまで元気に生きるための七つの習慣―自然的生活のすすめ―」 山田豊文 山と渓谷社
     「夫婦で楽しむ、ファスティング入門」 山田豊文、船瀬俊介 三五館
     「体が生まれ変わる「ケトン体」食事法」 白澤卓二 三笠書房


「隠れ低血糖」とは

2019-09-17 08:22:54 | 健康・病気
 昼食後2~3時間に、動悸、不安、倦怠感、眠気、手足がしびれ・冷感などの症状がでて急に体の調子が悪くなることを経験したことはありませんか。通常は20分程度で自然に回復し、あるいは何か食べると症状が改善して大きな問題になることはありませんが、それは「隠れ低血糖」かもしれません。

 本来血糖は、食事の内容にかかわらず80~140mg/dlの狭い範囲に緩やかにコントロールされています。 しかし、このコントロールが乱れると血糖調節異常とよばれ、高血糖側に傾くと糖尿病(あるいは耐糖能異常)と診断されます。
 一方、低血糖(血糖70mg/dl以下)は、糖尿病の方で血糖降下薬が不適切に効いた場合やインスリン分泌が異常亢進したインスリノーマなどの特殊な病態しか知られていませんでした。最近、24時間持続血糖測定が可能となり、今まで糖尿病などの糖代謝異常がないと診断された人にも低血糖や急激な血糖低下がみられることがわかってきました。それが「隠れ低血糖」です。これは、従来の健康診断で測定する空腹時血糖やHbA1cは正常であるため、ほとんどが見逃されています。

 「隠れ低血糖」には、①糖をとったあと急激に血糖が上昇して、その後急激に血糖が低下する反応性低血糖症(肥満あるいは甘党の痩せた方に多い)、②腸の機能低下のため、血糖があがらない無反応性低血糖症(10~20代の若者に多い)、③血糖値変動が激しい乱高下型低血糖症(ヒステリックな女性に多い)の3タイプがあり、この混合型もみられます。
 血糖の急激な低下により、交感神経の緊張が高まり、血糖上昇ホルモン(コルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリンなど)が副腎から分泌され、不安、イライラあるいはうつなどの精神症状、動悸、手足のしびれ、頭痛などの身体症状がでます。また低血糖によるエネルギー不足になると、集中力低下、眠気、倦怠感も出現します。
 これらの症状は、一過性であればパニック障害、適応障害、度重なるとうつ病、睡眠障害などと診断され、抗不安薬などの薬物治療を受けている場合もあります。

 さて、「隠れ低血糖」の共通点は、糖質依存になっていることです。したがって、治療は糖質依存からの脱却を目指します。血糖調節機能が正常な人は、いくら糖質をとっても急激な変動は見られませんが、日本人はインスリン分泌がスムーズでない人も多く、糖質をとると急激に血糖上昇をきたし、遅れて分泌されたインスリンにより急激に血糖が下がることがしばしばみられます。
 最近は、血糖コントロールには、エネルギー管理より糖質管理が重要で、たんぱく質・脂質はあまり関係ないことが認知されてきました。それに伴い、高血糖の人は糖質を制限し、野菜(食物繊維)を糖質より先に食べ糖質吸収を遅らせることが有効であることが知られています(野菜ファースト)。
 整合分子栄養医学の第一人者溝口先生は、「隠れ低血糖」の人は、さらにすすめて肉ファースト食を提唱しています。それは、野菜ファーストだと野菜で満腹になり、十分なたんぱく質が摂取できないことをあげています。私たちを構成している細胞、組織は主にたんぱく質からできており、十分なたんぱく質を摂取しないと体が維持できないのです。

 肉ファースト食は、①高たんぱく質、高脂質、低糖質食、②たんぱく質、脂肪を最初に食べる、③糖質は最後に少量。白飯でよい、④間食をとる(2~3時間おきに、小魚、ゆで卵、ナッツ、ココナッツなど、必要なくなれば止める)⑤小麦、牛乳を避ける(アレルギーの原因、腸が荒れる)、を基本とします。 
 効率的にすすめるにはポイントがあります。 一つは、糖質の代わりのエネルギー源になる脂質です。青魚油・えごま油・亜麻仁油、オリーブ油など健康によいといわれる不飽和脂肪酸だけでなく、肉、バターなどに含まれる飽和脂肪酸も十分とることが重要です。また中鎖脂肪酸(MTC油、ココナッツオイルなど)は、脳のエネルギー源となるケトン体の供給源になり、また細胞のミトコンドリアを増やしエネルギー代謝を高める作用があり積極的にとるべき脂質です。 次に、たんぱく質代謝を上げるために、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、亜鉛、鉄、マグネシウムなどの栄養素も十分に摂取する必要があります。 さらに糖質を減らしても体調に問題がない場合は、穏やかな筋トレも始めましょう。筋力がアップすると糖新生(骨格筋に蓄えられたたんぱく質が分解してアラニンが生じ、これを材料にして肝臓からブドウ糖が作られる)がスムーズにおこり低血糖を防いでくれます。
 肉ファースト食は、「隠れ低血糖」の人だけでなくすべての人にすすめてもよい食事ですが、たんぱく質制限を指示されている腎機能低下のある方やすでに糖尿病で治療を受けておられる方は、主治医と相談してください。

 さて、「隠れ低血糖」のため繰り返し急激な血糖低下がおこると、副腎から分泌される血糖上昇ホルモンに対する反応が次第に低下して分泌されるホルモン量も減ってきます。これは低血糖による自律神経不全と言われ、体がだるくなりストレスにも弱くなるうつ状態になります。これが進行すると副腎疲労症候群となります。特に影響の強いのは、コルチゾールが不足することで、うつ状態やアレルギー症状を引き起こします。さらに、動悸、胸痛、手足のしびれ・冷え、肩こりの慢性化や性欲減退、生理不順、更年期症状の悪化につながります。副腎疲労の原因には、ストレスも大きく関与していますが、「隠れ低血糖」の影響も大きいのです。

 「隠れ低血糖」は、医者の間でも十分には知られておらず一般的な検査では異常がみられないため、誤った診断・治療を受けておられる人も多いと考えられます。気になる症状がある方は、一度血糖調節障害がないか疑ってみる必要があります。


参考文献:マキノ出版『疲労も肥満も「隠れ低血糖」が原因だった!』著者 溝口 徹

「疲労」の正体とその対策

2019-07-30 13:55:57 | 健康・病気
日夜のハードワーク、休日の家族サービスなどで日頃から「疲労」を感じている皆様は多いと思います。この「疲労」に対して、寝る、栄養ドリンクを飲むなど人それぞれの方法で、解消に努めておられることと思います。
今回は、「疲労」に関する最新の知見をご紹介します。

ひと昔前まで、「疲労」は、筋肉を使った後に代謝されて生じる乳酸が筋肉の溜まることが原因と考えられていました。しかし現在では、乳酸は悪者ではなく、むしろ筋肉のパフォーマンスを上げる作用もあり、「疲労」の原因ではないことが証明されています。
その代わりに、活性酸素が注目されています。活性酸素は、呼吸によって体内に吸収した酸素が細胞で使われる際に発生し、外敵を攻撃するのに役に立つ一方、過剰に発生すると自分の細胞や遺伝子などを傷つけます。これは「酸化ストレス」ともいわれ、細胞が酸化ストレスにさらされることにより本来の機能を維持できなくなることが、「疲労」の本体と考えられています。そして、酸化ストレスの影響をもっとも受けるのが「脳」です。

運動すると、呼吸・循環・体温などを瞬時に調節する必要がでてきます。これらを調節するのが自律神経であり、自律神経の中枢である脳の視床下部や前帯状回の神経細胞がフル回転します。その結果、脳細胞で活性酸素が発生し、酸化ストレスにより自律神経機能が十分働くことができなくなり、パフォーマンスが落ちます。これを「疲労」として自覚します。すなわち、脳疲労が「疲労」の正体と考えられるのです。さらに、神経細胞はほとんど新生せず、酸化ストレスの影響が蓄積しやすいことも原因です。

「疲労」は、医学的には「痛み」、「発熱」とならんで生体アラームの一つと考えられています。つまり、これ以上運動や仕事を続けると体に害を及ぼすという警報の役割です。疲労が蓄積し慢性化すると生命の危機(過労死)の原因になります。
脳疲労のサインとして、「飽きる」、「疲れる」、「眠くなる」があります。さらに進むと視野狭窄をきたし、脳への情報を制限するようになります。車の運転で、こまめに休息を入れる必要があるのもそのためです。

一方、「疲労とは、筋肉と神経の使い過ぎや不具合によって体の機能障害が発生している状態」と定義し、筋肉だけでなく神経のコンディションの悪さが疲れを引き起こすと考える研究者もいます。神経には、自律神経と手足の運動・知覚・感覚などを扱う末梢神経があります。末梢神経も脳という中枢神経により管理されているため、自律神経中枢と同様、「脳」が疲労の原因と捉えることができます。

ここで、「脳」からの指令が全身に正確に伝達されるためには、体に歪みがないことが重要です。つまり、体に歪みがあると神経伝達が上手くいかず、疲れやすい体ということができます。
体の歪みを減らすには、体幹と脊柱を鍛えることが重要です。そのために、有効な手段として、腹圧呼吸があります。以前、口呼吸(胸式呼吸)ではなく鼻呼吸(腹式呼吸)が重要であると話をしたことがあります。腹式呼吸は、呼気時にお腹をへこますのですが、腹圧呼吸は、呼気時にお腹に力を入れお腹周りを固くしてへこまないようにします。腹圧呼吸を身に着けることができると、体の圧力が高まり、その圧力に支えられる形で体の中心が安定し、疲れにくい体になると考えられるのです。この呼吸法は、スポーツ医学で研究され、現在一流アスリート達が実践しています。もちろん一般の人にも有効ですが、腹圧を上昇させるため、子宮脱や膀胱脱など骨盤底筋が弱っている方は厳禁です。

疲労の回復手段として、質の良い睡眠は重要です。睡眠不足だけでなく、睡眠時無呼吸はもちろんのこと「いびき」ですら、疲労回復の障害になると考えられています。昨今の猛暑では、一晩中エアコンを効かして快適な室温を保つことも必要でしょう。
次に、食事です。栄養不足の時代には、疲れた時には、ウナギ、スッポンなど精の付く食材が有名でした。最近注目されている疲労回復物質は、イミダペプチドです。これは、鳥の胸肉やまぐろ・かつおの尾付近に多く含まれており、抗酸化作用で脳疲労を軽減することが実証されています。梅干し、レモンなどに含まれているクエン酸も、エネルギー効率を改善し抗疲労効果を発揮します。その他、L-カルニチンを含む赤身肉、ビタミン類の豊富な野菜・果物もよいですが、十分な水分補給も忘れないでください。逆に、菓子、ジュース、酒、コーヒー、栄養ドリンクは、疲労回復の面からは薦められません。
さらに、温めのお湯での下半身浴、紫外線を避ける、自然環境にある「ゆらぎ」に身をまかせる、心地よい香り、幸せを感じる(癒し)など自分にあった疲労回復法を見つけて生活に取り入れることも有効です。
 脳疲労を軽減させるために、「脳全体をバランスよく使い、負担を分担する」ことが注目されています。この一つとして、「ワーキングメモリ」を鍛えることがあります。詳細は省きますが、感情を強く意識しながら記憶する、知覚・記憶・思考など自らの認知をより高い位置から俯瞰し、観察するメタ認知機能を高めるなどがあります。


参考文献:集英社新書『すべての疲労は脳が原因』、朝日新書『隠れ疲労』 ともに著者 梶本修身
サンマーク出版『スタンフォード式 疲れない体』著者 山田知生