もうずいぶん前の話、帰りの会が始まろうとした時、後ろから子どもたちを見ていたら、ある子がずっとうつむいたままなので、どうしたのかなっと思って、のぞきこんで声をかけた。あら、本を読んでた。ページに文字少ない、詩集。「あたしとおんなじ名前なんだよ。」「あっ、そっか、そうね。」そして「大きくなったら詩を書く看護師さんになりたいの。」と続けて言った。この子はお父さんの顔を知らない。記憶に残る間もなく幼くして父を亡くしている。「すずちゃん(愛称)ならなれるよ。」ミッチは言った。ほんとうにそう思った。彼女は障害を持ってる子にもいつもいつも変わらずに優しかった。友達だよって、いろいろ手伝ったり助けてあげてた。意地悪何ひとつ言わなかった。お留守番できるからって、もう学童さんはやめたんですけど、こちらの心に残る子どもだった。