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夢と覚醒の隙間のギャラリー

夢と覚醒の隙間の絵本「MUTATIONS」突然変異達/偶然に依る唯虚空論  N&Y STUDIO

2011-06-10 21:57:57 | 絵本

絵本「MUTATIONS」ミューティションズ
文 吉岡 秧(Yoshioka Nae) 発行者 中江嘉男(Nakae Yoshio)
 7人7様(秋元茂 上野紀子 奥谷敏彦 中江嘉男 砂畑千恵 松崎亜子 吉岡秧)の個性を結集した実験的で奇妙な絵本である。絵本と言っても絵本の部類には収まることがない完全なるシュールレアリストアート本である。そもそも私には絵本と美術書の境界線が解らないし、誰がどの様にして判別するかも分からない。分類は出版社や書店がすれば良いことだと思っている。

 まず、初めにに表紙カバーに面食らう。歪で平面的な六角形の中の絵を追っていると、突然立方体に変容する。その立方体は一瞬正方形かと思うが、本を逆さまにして観るとこれまた歪な立方体なのである。脳が撹乱を起こす。MC・エッシャーやメビウス如く脳が騙されてしまうわけだ。「脳や視覚の電気信号に頼るな。感覚だけでみろ」と表紙が示唆しているような気がしてならない。
 書物は誰しもが1ページから読むものだと思いがちだが「MUTATIONS」はどのページから観ても良いように構成されている。ペラペラと捲ってたまたま開いたページ、表紙カバーの矢印が示すように中江嘉男から秋元茂へ上野紀子から・・・とそれぞれの絵画から絵画、文脈から文脈へと扉が開かれている。何故か昔観たルイス・ブニュエルの傑作映画「自由の幻想」をどことなく彷彿とさせる。
 今現在進んでいる視点は一定方向ではない。ありとあらゆる角度の視点と思考の集積から構成されている。現実と夢をみている世界、日常生活においてふとした瞬間に入り込んでしまう頭の中の世界、覚醒夢、明晰夢、そんな世界観を具現化した著作物が「MUTATIONS」なのではないかと勝手ながら思う。それこそ夢と覚醒の隙間の書物たる由縁である。
 この装丁にこの厚みと大きさ、私家版限定600部3500円、採算を度外視した本書の発行者 中江嘉男に賛辞を贈りたい。「MUTATIONS」が13年余りの刻を得て私の手元に出現したことこそ必然なのか?偶然なのか?エニシとは未知なるものだと実感する。未知だからこそ生きる限り生きてゆこうと思う。                                   Metro Gallery




         ↑秋元茂 Akimoto Shigeru↓

                  ↑上野紀子 Ueno Noriko↓

               ↑奥谷敏彦 Okuya Toshihiko↓

                 ↑中江嘉男 Nakae Yoshio↓

      ↑砂畑千恵 Sunahata Chie↓

                ↑ 松崎亜子 Matsuzaki Ako↓

この本はシュルレアリスムな絵本です。6人の画家がばらばらに絵を描きまったくことなる哲学を組み合わせた実験的な絵本です。オブジェとしての絵本でもあります。作品はオブジェであるべきという考えを作品にしたもので、普通の絵本の世界からは遠くはなれたものです。出版社が出したがらない売れない本そのものです。MUTATIONは突然変異の意ですが本の内容は突然変異論という新しい理論です。                                                                                   中江嘉男

絵本作家・アーティスト 中江嘉男・上野紀子 1940年生まれ

1975年「ぞうのぼたん」にてデビュ―。その後、数々の賞と「ねずみくん絵本シリーズ」「チコシリーズ」と発刊している大変著名な絵本作家である。また、故 瀧口修造と親交が厚く、2006年には「扉の国のチコ」 巖谷 國士と共著を出版している。
中江嘉男・上野紀子ホームページ
http://www.nezumikun.com/webehon/


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