全編、長回しの連続とモノクロームで映像美を追求するハンガリーの鬼才タル・べーラの新作「トリノの馬」が2012年イメージフォーラムにて公開される。長回しであることを忘れさせてしまうほどの長回し。「ヴェルクマイスターハーモニー」「倫敦から来た男」に引き続きとても楽しみにしている。パルフィ・ジョルジの「タクシデルミア・ある剥製師の遺言」などハンガリー映画が今現在、最もクールなのではないかと思う。やはり列強諸国に囲まれ翻弄された長い歴史と鬱積したエネルギーが創造に向かわせているから面白いのだ。
第61回ベルリン国際映画祭にて銀熊賞および国際批評家連盟賞を受賞した本作は、タル・ベーラ監督が自身最後の作品と公言している渾身の一本。。「トリノの馬」The Turin Horse Béla Tarrは辺境の荒野の一軒家に住む片腕が不自由な老人と、彼を介護する娘が、やがて食料も水も絶えて埋没していく様子を、ほとんど科白なしに描いている。最初に倒れるのは犀のようにがっちりした老農耕馬、かつては彼らを街まで運ぶ力があったが、衰えていく。ひたすら吹き捲くる強風の轟音と舞い立つ土煙がモノクロ画面を支配する。
粗末な農家で繰り返される非日常的な日常に奇妙な緊張感がみなぎる。ニーチェの晩年の小品がモチーフらしい。哲学者ニーチェはイタリアのトリノで発狂して、その後の著作はほとんどない。正気の沙汰とは思えないが、アナクロニズムも厭わぬ自然主義的描写がSFXや3Dを圧倒する。
第61回ベルリン国際映画祭レポート―松島利行―より抜粋
月刊シネマグランプリ―Film Critics 50 http://cinemagpx.jp/
ヴェルクマイスターハーモニー
「この映画は私にとって単なる物語以上の意味がある。永遠の衝突について―本能的な未開の文明化を巡る数百年の争い―全東欧のニ世紀を決定付けた歴史的経緯に関する作品である。・・・タル・ベーラ」
原作 ハンガリー人作家クラスホルカイ・ラースローの小説「抵抗の憂鬱」
主演 ヤーノシュ ラルス・ルドルフ
ドイツの未公開映画 トムティクヴァ監督の傑作「プリンセス アンド ウォリアー」にて精神病患者役を好演している。http://www.bitters.co.jp/werck/index.html
倫敦から来た男 原作:ジョルジュ・シムノン
長回しと言えばギリシャのテオ・アンゲロプロス。「第三の翼」はいつ公開するのだろうか?エレニ・カラインドルーの美しい音楽とアンゲロプロスの映像美!早く観たいです!! Metro Gallery
エレニ・カラインドルーの美しい音楽
http://www.mygreek.fm/el/video-clip/4053/I-skoni-tou-hronou
Ελένη Καραΐνδρου-The Dust of Time Music for the film by Theo Angelopoulos
この音楽と映像だけで鳥肌物です!