経済(学)あれこれ

経済現象および政策に関する意見・断想・批判。

民主党政権の政策への批判

2009-11-21 00:30:31 | Weblog
 民主党政権批判

 民主党の鳩山政権が誕生して現在2ヶ月半になります。新聞では同政権の政策がざわざわと紙面をにぎわしているようです。幾多の疑問があります。以下次のような項目ごとに、箇条書きにいたします。
公約違反
経済政策の貧困
議院内閣制の否定と全体主義
首相の発言のブレと無内容さ
沖縄基地移設問題 

1 来年度の総予算要求が95兆円、過去最大になりました。世界的不況で税収は激減し40兆円を超えます。このギャップを政府はどう埋めるのでしょうか?民主党は増税も国債増発もしないと、選挙前に明言しました。現在までに民主党は、消費税アップ、たばこ税アップ、扶養控除廃止、環境税導入など増税の可能性を検討しています。これは公約違反にはならないのでしょうか?政権をとって、公約の舌の根も乾かないうちに増税路線への転換を試みるのでしょうか?税収入の減少など始めからわかっていたはずです。それを承知で子供手当や高校授業料無料化などを含む、ばらまき福祉の大盤振る舞いを約束して政権を取ったのです。増税も国債発行もなく財源をどうするのか、お聞きしたい。

2 増税は絶対だめ!数値を超えて不況感を昂進させます。1995年(?)橋本政権が行った消費税5%がいい例です。これで薄日がさしかけていた景気を一気に後退させました。それから立ち直るのに10年はかかりました。では国債発行でしょうか?赤字国債の発行は民間資金を圧迫します。すでに政府は郵政民営化を逆転させています。この行為だけで民間資金への圧迫は必死です。ここでさらに国際を乱発すれば火に油を注ぐ事になります。しかし国債発行は避けられないでしょう。民間資金を圧迫させないためには、流通貨幣量を増加させねばなりません。例えばCP(コマ-シャルペーパ-)の日銀買い取りなどがあります。しかし政府は近日中にそれを中止するそうです。対策がおかしい。
郵政逆民営化への批判は以前のブログでしたので繰り返しはさけます。批判の要点は民間資金を圧迫するなという事です。
返済猶予法案も民間資金の還流を阻害します。

3 現在予算の洗い直しなる行為を盛んにしていますが、意味があるのでしょうか?素人目にはいかにもまじめに無駄削除に取り組んでいるように見えます。事実している人は真剣なのでしょう。しかし誰がどういう資格でこんな行為を行えるのか?民主党の議員に加えて民間人多数が参加していますが、わいわいがやがや成果が出るのでしょうか?拙速もいいところです。本来予算は官僚が策定し、それを当該の与党議員が検討するとういう、かなり長い経過と、結果としての専門性をもって、決定されてきました。従来のこの手法の方が安定しているでしょう。何かやり方を見ていると衆議商議ではなくて、一方的な上意下達の人民裁判のようにも見えます。あるいはこの大げさな仕分け騒ぎは、民衆の目に頑張っているという像を与えるための、お芝居かトリックでしょうか?
 予算の洗い直しなど、貧乏臭いかぎりです。大の大人が眼を血走らせて、どこかに隠れた財源があると必死になる。この光景を連日メディアが報道する。不景気風を吹きまくっているようなものです。どうせ民主党の政策はばらまき福祉の大盤振る舞いなのだから、予算の2兆や3兆に拘泥せず、大量の国債を発行した方が、好況感を高めます。

4 政策はすべて政務三役中心といいます。そして行政刷新委員会(?)とかで洗い直しをする。議員や民間代表だけで全体が解るのでしょうか?私にはとてもそうは思えません。従来のように各省の課長級あたりから積み上げてゆく方が、安全です。一部例を挙げると、スパコンの研究費が大幅に削られました。削った理由は世界一でなくてもいい、ということでした。この決定をした人は世界における日本の位置がわかっていないのでしょう。日本の製造業技術は世界一です。同時にその地位を維持しないと日本は脱落します。技術立国日本の立場とスパコンの意味が解らないからこんな決定になるのです。政治主導政治主導といいまずが、民主党の議員の何人が政策を理解しているのでしょうか?疑問です。もしそうなら現在のやり方は一部の党や政府の幹部による寡頭政治になりかねません。いやすでにそうなっています。

5 民主党では議員立法を制限する方針です。また与党の代表質問は不要とされました。さらに各閣僚を超えて行政刷新会議とか、国家戦略省とかに、議員の一部を引き込み、決定はその組織に委ねるようです。閣僚の存在意義は?議員内閣制の否定です。その良い例が現在進行中の予算の洗い直しです。さらに小沢氏は一切の陳情は幹事長に集約すると明言しています。これでは少なくとも民主党の議員は単なる投票機械に過ぎなくなります。また党の存在意義そのものも無くなります。ヒットラ-のナチスドイツやスタ-リン治下のロシアの議会議員はこんなものでした。小沢氏は新人議員は国会に長居してはいけない、さっさと選挙区に帰って運動に専念しなさい、というような事を言っていますが、この事も同様、議会の意義の否定です。

6 民主党の新人議員は小沢学校なるところで、一人前の議員になるべく教育を受けています。行儀作法から始まって政界の慣習etcetcです。議会や議員をなめきった行為です。一人前でない見習い修行中なら議員にならなければ宜しい。未熟な青い果物を、美味と言って売るに等しい行為です。選挙に勝てれば議員の内容なんてどうでもいいのでしょうか?詐欺、羊頭狗肉もいいところです。そもそも議員は当選した瞬間から一人前でないと、少なくともそういう自覚のもとに行動しないといけません。当選した、議員として自信がない、だから集団で教育してもらう。こんな事で政治を任せられる議員ができるはずがありません。小沢氏の行為は議会民主制の完全な否定です。発想は極めて全体主義的です。 

7 鳩山首相の言葉のぶれようも非常に気になります。彼には宇宙人というあだ名があります。大物なのか、失礼ながら鈍感なのかと、疑問に思うことがあります。二酸化炭素排出25%減、核廃絶、友愛の船、東亜共同体(いっそのこと大東亜共栄圏といったらどうですか)とか云々、これらの意見は大層結構な事ですが、実態がありません。インド洋での給油をやめて、アフガンに総額5000億ドルをあたえるとか。地上での安全もままならない状況でこの金に意味があるのでしょうか?25%削減など日本の産業界の意見を無視し、押し切って国連で発言されました。この不況時に日本が率先して大きな荷物を負う。友愛の精神の発露かも知れませんが、空想的幻想に近い発想です。空想的と言いましたが、鳩山首相の言葉にはレトリックが多い。彼は哲学者ではないはず、一国の運命を背負う総理大臣です。例えば「時間のファクタ-と共に政策も変わる(公約違反は当然という意味ですか?)」とか、「同盟の深化」とか「日米関係の包括的レヴュ-」とか、美辞麗句が並び、本当の具体的意図は見えず、意見は微妙にまた飛躍して変化します。麻生前首相の発言のぶれは一部のマスコミにより揶揄の対象になりました。しかし麻生前首相のぶれはむしろご愛嬌ともいえる類のものです。日本の国家を危険に晒すようなものではなかった。鳩山首相のぶれは次元が違います。危険です。危険の最たるものが、沖縄の米軍基地移転問題です。

8 沖縄基地移転の問題は、ある新聞が書いていたように、米国も現地(名護市)も賛成している問題をなぜ、政府がこじらし反対するのか、という一語につきます。日本が自前の防衛力を持たず、しかも近隣には物騒な連中がいる現在、防衛力を米軍に頼るしかありますまい。地球儀を見れば一目瞭然、解ります。沖縄の人には気の毒ですが、対大陸防衛という観点からは沖縄は絶好の位置にあります。
 なによりも鳩山首相の方針がはっきりしない。11月15日(日曜日)の日経朝刊の記事から抜粋します。以下は基地移転問題に対する首相発言の変遷です。

普天間問題 日米の距離、一夜で露呈 決着さらにみえにくく
普天間問題を巡る鳩山首相の発言
8月17日(首相就任前)
「海外への移転が望ましいが、最低でも県外移転が期待される」
10月7日
「日米で合意した前提の下で沖縄県民にも理解しうるような形がつくれるかが一番大きな問題だ」
10月16日
「来年(1月)名護市長選があり、(来秋の)沖縄知事選まで見通すと時間がかかるから、その中間くらいの中で結論が必要」
11月13日(日米首脳会談)
「移設問題は作業部会の協議で迅速に解決したい」
11月14日
「オバマ大統領の気持ちとすれば、日米合意が前提になったと思いたいだろうが、合意が前提なら作業部会も作る必要はない」

鳩山首相の発言は曖昧で、レトリックが多く、従って具体的な意味に乏しく、そして不安定です。特に14日の発言は13日のそれと矛盾するだけでなく、失礼で傲慢です。曖昧で変化しやすいレトリック(言い回し)を多用する人には自己愛的人格、つまりナルシストが多いのは事実です。

 鳩山首相には日米同盟の重みが解らないようです。この事は日米の側からだけ見ていては判然としないでしょう。14日(土)の日経か産経の朝刊に、中国が日米同盟を評価するという記事がのっていました。中国は中国に対する盾である日米安全保障条約を不快とすると同時に、この同盟が中国自身にとっても安全な防壁である旨を明言していました。この事には私も予感がありました。もし日米同盟が弛緩ないし断裂した場合、日米中の三国の関係はばらばらになります。我々としては中国の軍事的プレゼンスの増加を恐れますが、中国としては米国の傘から離脱した日本が、経済力や技術力に相当する軍備をそなえ、憲法を改正し核武装する事を非常に恐れています。記事の文言を抜粋すると「---そのような事態は我々が決して見たくない状況だ」となります。中国にとって日米同盟は日本につけられた鎖として評価しているのです。私は改憲論者ですから、中国のこの見解をそのまま受け入れる気にはなりません。しかし日本はそれほど恐れられているのです。換言すればそれほど実力を評価されているのです。中国が言うように、仮に日米同盟が崩壊すれば、東アジアの情勢は一気に不安定になり、緊張を増すでしょう。日米が固く結ばれて、中国と対峙している方がアジアの情勢は安定します。

 日米同盟は日本を押さえる鎖であるだけではありません。アメリカを押さえる鎖にもなります。これは外交のやり方次第です。

 ちなみに私は日米が対等でないとは思っていません。表面に現れた軍事力だけを見ると、格差はありますが、高度な武器の製作には日本の技術は不可欠です。また思いやり予算他経済的な面でも援助協力できます。小切手外交も必要なのです。極端に言えば米軍という傭兵を雇っていると思ってもいいのです。
基地を提供している沖縄県に対しては、基地を県外に移せない以上、それ相当の政府の対応、つまり保障が必要です。沖縄には水と太陽がいっぱいあります。新しい型の農業を育成してもいいし、太陽光発電のパイロット事業を起こし、後援し、投資してもいい。経済特区化してもいい。いずれにせよ大規模な経済的保障が必要です。世界平和のための礎石になっているのですから。例えば沖縄を除く全都道府県の予算のうち、各自治体がその0.5%を沖縄に提供する、あるいは投資するのも一考です。政府はそういう方向で政策を考えるべきです。

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