おーちゃんぶろぐ。-まっすぐ歩いてる?-

人生は『ロード・ムービー』

喜び悲しみ
ひとコマひとコマ紡ぎ合わせて…
いつしか、ハッピーなエンドロールを。

『荒川で恋をして。』 第8話

2008-04-01 08:43:14 | Weblog
あくる朝 

邦男は左衛門の衣を借り 荒川で漁を手伝うことにした


『邦男ぉーーーっ! もっと腰落とせぇーーーっ!!』


左衛門は、川の中で右往左往している邦男に激を飛ばした
しかし その顔は心なしか‥いつもより嬉しそうだった



夕暮れ 漁を終えて丸太小屋に戻った二人を
思いもよらぬものが待ち受けていた



『お帰りなさいまし。』 誰も居るはずのない小屋の中から女の声がした


その声の持ち主が 二人を出迎えた

とても 美しい女性だ



『あ‥。』 左衛門は女性を見て固まっている

『え‥?』 邦男も同じく その見覚えのある女性を見るやいなや、驚きを隠せずにいた




『まぁ‥今日は大漁ですね ご飯の仕度、出来てますょ。』



二人は顔を見合わせ 中へと入った




箸を止め、左衛門は女性に尋ねた 『あなたは‥』 


『周と申します、どうぞ 私を左衛門様のお嫁にしてください。』

女性は頭を下げ 意外な言葉を口にした



邦男は 場を取り持つかの様におどけてみせた

『‥良かったじゃないか!左衛門!! ホント良かった‥。』



それから  邦男と左衛門、そして周との共同生活が始まった




数日後

留守を守る周は草鞋を編み 

左衛門と邦男の二人は 裏山へと山菜採りに出掛けた


『いいか邦男 これ、この形よく覚えとけ』山菜を摘み邦男に渡す左衛門


『‥あのさ、左衛門‥。』邦男は気になっていたことを話し始めた


『解かっているさ‥ お前が見た〝静姫様〟にそっくりだろ。』左衛門は遮る様に言った


『静姫じゃないのか‥? 左衛門、きっとそうだよ!!』邦男は思いのままを言葉にした



『まさか‥ まさかな‥』左衛門は少しだけ笑みを浮かべた




山から戻ると 噂を聞き、駆けつけた村人達が丸太小屋に集まっていた


たくさんの酒や魚、山菜や果実を持ち寄り
ささやかではあるが 左衛門と周の婚礼の宴が始まろうとしていた

近くに暮らす おゆりが周の為にと、紅を周の唇に色付ける




お祝いの歌や踊りと‥ この夜は村人達にとっても
ひさしぶりに楽しく、温かな時間が流れていた




村人達が帰り 夜も更けた頃

邦男は 川原を一人歩きながら 酔いを醒ましていた




川原に寝そべり 星空を見上げながら、この数日間の事を思い出していた




それまで 

一晩中明かりの耐える事のない、都会育ちの邦男が

クラブもテレビも、パソコンも‥ 携帯も無い

山と川しかない この大自然の中で〝今〟を一生懸命に生きようとしているという事実





『あ‥  流れ星‥。』






見上げた満天の星空に 丸く大きな月と、幾つもの流れ星が光りの矢を放っていた












                          つづく




〝町の情報ジャンクション・大橋理容室〟

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
なにやら (ごっくん)
2008-04-01 12:32:44
嵐の前の静けさ・・・
という感じがしますねぇ

歴史的な要素まで入ってくるとは
次週さらに何かが起こると
ごっくんは予想しますよ。これは!!
ついに。 (おーちゃん)
2008-04-01 15:39:35
次回はさらなる展開が待っております。

邦男は‥ 左衛門と周の関係は‥
そしてそして、〝静姫〟は何処へ‥。

ご期待ください

コメントを投稿