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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

マリインスキー・バレエ2012 ロパートキナの「アンナ・カレーニナ」

2012-11-27 08:56:07 | BALLET
ヤプログの不具合で、UPが遅れましたが、
2012年11月25日(日)
東京文化会館にて、

マリインスキー・バレエ団 2012年日本公演の、「アンナ・カレーニナ」を観て参りました。

以下、JapanArtsさんのHPよりの作品紹介です:



<舞台の紹介>
《アンナ・カレーニナ》はトルストイの同名の長編小説に基づき、ロディオン・シチェドリン(作曲)、マイヤ・プリセツカヤ(演出・主演)夫妻が創作したバレエで、1972年にボリショイ劇場で初演された。
原作では高級官僚カレーニンの美貌の妻アンナが、青年将校ヴロンスキーと恋に落ち、ついには鉄道に飛込み自殺するまでのドラマが、当時のロシアの世相や作者自身の社会思想をまじえて綿々と描かれる。トルストイは都会や社交界におけるアンナとヴロンスキーの禁断の愛と農村におけるリョーヴィンとキティ夫妻の家族愛の世界を対置させ、むしろ後者に自らの倫理観を見出したが、プリセツカヤはアンナの自由な愛と世間との孤独な戦いを強調した。シチェドリンは弦と金管を中心にした鋭角的で不協和な響きの中にチャイコフスキーの憂いに満ちたメロディを引用して、トルストイの文学世界を巧みに表現した。
今回マリインスキー・バレエが上演するのは、近年、ショスタコーヴィチの《明るい小川》(2003)やシチェドリンの《イワンと仔馬》(2010)、デシャトコフの《幻滅》(2011)など現代音楽によるバレエに積極的に取り組んでいるアレクセイ・ラトマンスキーが演出したヴァージョンで、2004年、デンマーク・ロイヤル・バレエによって初演された(マリインスキー初演は2010年)。
ラトマンスキーはバレエを全2幕構成とし、前半はアンナがヴロンスキーと恋に落ちるまで、後半は夫により愛する息子と引き裂かれ、社交界からも拒絶されたアンナがヴロンスキーとの些細な諍いによって行き場を失い自殺するまでを、現代的な振付と自然なマイムによって綴った。背景に舞踏会場や書斎、競馬場、劇場などの情景をスライドで映し交替させることによりスピーディな場面転換を図っている。そして幕切れのアンナの死の情景では白煙を立てて迫りくる機関車を動画で映写し、破滅に向かって加速度的に突き進むアンナの姿をはかなくも美しく表現している。
文:赤尾雄人

<あらすじ>
舞台は19世紀末のロシア。
青年将校ヴロンスキーは母を出迎えに訪れた鉄道駅でサンクトペテルブルグから来た美貌の貴婦人アンナ・カレーニナに出会う。
ヴロンスキーはアンナに一目で惹かれ、アンナにとってもこの出会いは忘れ難いものとなった。
厳格で保守的な夫カレーニンとの日々の倦怠から逃れるように、アンナもヴロンスキーに心奪われ、舞踏会で再会した2人は激しい恋に落ちる。
世間体を重んじ、アンナの不貞を責める夫。
アンナは欺瞞(ぎまん)に満ちた社交界と家庭を捨て、ヴロンスキーとの“破滅的な愛”に溺れていく…

シチェドリン≪アンナ・カレーニナ≫全2幕
レフ・トルストイの小説に基づく
2012年11月23日(金・祝) 2:00p.m.~3:55p.m.

音楽: ロジオン・シチェドリン
振付: アレクセイ・ラトマンスキー
音楽監督: ワレリー・ゲルギエフ
装置・衣装デザイン: ミカエル・メレビー
ビデオ映写: ウェンドール・ハリントン
照明デザイン: ヨルン・メリン
台本構想: マルティン・トゥリニウス
振付アシスタント: タチヤーナ・ラトマンスカヤ
台本構想: リュドミーラ・スヴェシニコワ
指揮: アレクセイ・レプニコフ
管弦楽: マリインスキー劇場管弦楽団

<出演>
アンナ・カレーニナ: ウリヤーナ・ロパートキナ
アレクセイ・カレーニン(アンナの夫、ペテルブルグの高級官僚): ヴィクトル・バラーノフ
セリョージャ(アンナの息子): ルスラン・シデルニコフ
アレクセイ・ヴロンスキー伯爵(ペテルブルグの近衛騎兵大尉): アンドレイ・エルマコフ
ヴロンスカヤ伯爵夫人(アレクセイの母): エレーナ・バジェーノワ
エカテリーナ・シチェルバツカヤ公女(キティ、シチェルバツキー公爵の娘): スヴェトラーナ・イワーノワ
シチェルバツキー公爵(モスクワの貴族、キティの父): アンドレイ・ヤコヴレフ
シチェルバツカヤ公爵夫人(キティの母): オリガ・バリンスカヤ
ステパン・オブロンスキー(スティーヴァ、アンナの兄): アレクサンドル・セルゲーエフ
ダリヤ・オブロンスカヤ(ドリー、ステパンの妻でキティの姉): ダリア・ヴァスネツォーワ
コンスタンチン・リョーヴィン(オブロンスキーの友人): アレクセイ・ティモフェーエフ
ベッツィ・トヴェルスカヤ公爵夫人(アンナの友人でヴロンスキーの従妹): アレクサンドラ・イオシフィディ
エゴールシュカ・コルスンスキー: ミハイル・ベルディチェフスキー
皇帝: ピョートル・スタシュナース
皇帝の副官: ソスラン・クラーエフ
トゥシュケーヴィチ: カレン・イオアンニシアン
大臣夫人: ヴィクトリア・クラスノクツカヤ

カレーニン家の使用人-
セリョージャの乳母: エレーナ・セラピナ
カピトーヌイチ: ウラジーミル・ポノマリョフ
アヌーシュカ: ナターリヤ・ドゥゼヴリスカヤ
若い男性の召使: ヴィクトル・リトヴィネンコ
若い女性の召使: オリガ・ベリク

イタリア人カップル: オリガ・ミニーナ,ドミトリー・ヴァデネーエフ
新聞とレモネード売り: キリル・レオンティエフ
女性の乞食: アナスタシア・ペトゥシコーワ
駅の男性の乞食: アレクセイ・コピエフ=ニコラエフ
憲兵: マキシム・ブィストロフ

【上演時間】 約2時間    【終演予定】 15:55
第1幕 40分 - 休憩 25分 - 第2幕 45分



いや~素晴らしかった!
トルストイの大河小説をコンパクトにまとめ上げながら、運命の恋に翻弄される美しいアンナの破滅に向かうドラマを息をもつがせず、ただただひたすらに見守る・・・そんな舞台でした。

原作では、キティとリョ―ヴィンの牧歌的な愛と、アンナとヴロンスキーの破滅的な愛を対比させて紡いでいる物語ですが、ラトマンスキーはスピーディかつコンパクトに、アンナに比重を置いて2時間のドラマとして描き切った感じです。
バレエの全幕物としては2時間とはかなり短い感じもしますので、ちょっとここまでまとめなくても良かったのではないか・・と思うほどではありましたが・・・^^;

舞台全体の印象は、装置は、奥行きに向けてドーム状に半円形のスクリーンを設けて、そこにネオ・クラシックな感じの色を押さえた背景の映像を投影した省エネ?版でしたが、それなりに効果を上げていたかと^^;
印象的なのは1幕の客車のセット。リアルな2両の車両にアンナとヴロンスキーが乗り込むと、それが盆を使ってそのまま反転。丁度、片面が切り取られた風の客車の内部の様子が見える・・・という趣向はここに舞台装置予算のほとんどを投入したのではないかと思われるほど精緻^^;

あと衣装がとても趣味が良く、極々淡いグレー、アイボリー、ベージュ、ピーチ、ラベンダーなどの婦人たちのバッスルスタイルのドレス、紳士たちのライトグレーや黒のスーツや燕尾、士官服、その中にあって際立つ、アンナのチャコールグレーのつつましやかな既婚婦人の服装とヴェネチアのオペラハウスに現れたのち、心やぶれて飛び込み自殺・・・に至る真紅のドレスが舞台効果抜群で、重厚なドラマを惹きたてていました。

ダンサーたちの演技も素晴らしく・・・。

アンナ役のロパートキナ、こういう役はヴィシニョ―ワの方がハマるかしら?と思いつつ、敢えての彼女の日を選んだのですが、アンナの恋に落ち浮き立つ心、幼い息子への慈しみ、妻に無関心な夫とのすれ違い、とめることの出来
ないヴロンスキーとの情熱、そしてヴェネツィア社交界での孤独、息子とも引き裂かれ、孤立した彼女の絶望と死への誘惑・・・すべての心の流れが、顔の表情によってではなく、踊りそのものの中に表現されていて、その抽象化され、純粋化された思いが強く心を打つ・・・そんな演技でした。
それにしても、チュチュでのバレリーナとしてのスタイルの美しさには見慣れていましたが、こういう貴族の婦人としての一般のドレス姿で舞う彼女の際立つ美しさたるや・・・息をのむほどで、その冷たい美貌がヴロンスキーとの運命的な恋に説得力を与えていました。

そのヴロンスキーにはまだ若いエルマコフが抜擢されていたのですが、彼も素晴らしく、ロパートキナをして、存分に踊らせるパートナー力もしっかりとしていて、スラリとした長身の2人によるダイナミックなリフトの連続は、実にドラマチックで流れるような動きとともに、作品の神髄に観客の気持ちを集中されるに足るものだったと言えましょう。

夫カレーニンはベテラン、バラ―ノフ。
冷たく世間体を重視する夫、として、熟年紳士の風格もあり、踊りのサポートも万全でした。

あと、キティ役のスヴェトラ―ナ・イワ―ノワの可愛らしさと、落胆ぶりも役に入っていて良かったと思います。
ドレスが周囲の貴婦人たちより少しだけ濃い水色で、パステル調の花でデコルテを縁どった可愛らしいもので、金髪でやや小柄な彼女に良く似合っていましたし、艶やかなレッドブロンズの髪にチャコールグレーのドレスのアンナの成熟した魅力と良い対比になっていて・・衣装もまた、踊り手と作品に合っていたと思います。

マリインスキーの総合力をまたしてもしみじみと思い知った、「アンナ・カレーニナ」でした