3ヶ月ほど前、市立図書館に行くと大江健三郎のハードカバーの全集が並べられ紹介されていた。ノーベル賞の時期もあったためか文学賞をもらった彼の全集を出版したものだろうけれど、ハードカバーの本作りも珍しいというかどうだろう、売れるのは難しいだろうなと正直の感想である。数年目のmarcoの日記から再度、ブログに残しておきたいと思う。以下・・・◆大江健三郎の「いかに木を殺すか」の中には、公にできないような言葉がしっかり描かれている物語がある。メヒコの大抜け穴 という物語には女性性器の言葉が出てくるし、男性の性器もしっかり、海外での学生便所の落書きまで出てくる。彼が何を書こうとしているのか全体を読まなければ解らないが、そもそもわかるような物語ではないのだろう。読後に何かを感じて欲しいというような物語なのだろう。こればかりではなく、他の物語の一つ一つに。彼の小説は、思いつく言葉を思いのまま貼り付けて、何らかの読者の持っている深層のイメージと結びついてくれればよく、また、自分の物語から読者なりの世界に結びついてくれることを願っているようなのである。確かに、一つ一つの言葉の結びつきからなる物語そのものから何かを得ようとすれば、面白い、そもそも面白いとは個々人により違うからこれも話題にはならない話ではあるが・・・。◆いずれ評論家、亡くなったが江藤 淳は、大江のの小説をよくは言わなかったらしいし、評論家のあの小林秀雄からは2~3ページで読むのをやめたよと彼自身言われたらしいから、それは解らないでもない。しかし、その一般共通項としての了解に対してどうであろうと、読むと何らかのイメージがわいてくるのは、それなりの僕にとっては効果があると言えるのだろう。さて、彼の小説には、ウイリアム・ブレークが出てくるし、「新しき人目覚めよ」などという言葉も見当たる。どちらもキリスト教に関する言葉である。この時代、小説家は宗教など行ってしまえば、本業も絶たれたも同然になるのだが、彼はひと時、世界のベストセラーである聖書に耽溺していたことは容易に想像できる。「洪水は魂に及び」などは、そのまま聖書の言葉ではある。その道の人はすぐ了解する。この文庫本の他の物語には、そのまま聖書の箇所が引用されている。本文は文語体をそのまま引用しているが新共同訳で聖書のことばを置き換えてみた。・・・続く
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