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観た映画の感想とそれから連想したアレコレ(ネタバレ有)。

クローズ ZERO

2007年12月13日 | Weblog
監督:三池崇史
原作:高橋ヒロシ(秋田書店 少年チャンピオンコミックス刊)
プロデューサー:山本又一朗
共同プロデューサー:佐谷秀美
企画:濱名一哉
脚本:武藤将吾
撮影:古谷巧
美術:林 田裕至
音楽:大坪直樹
音楽プロデューサー:古川ヒロシ
CGIプロデューサー:坂美佐子
出演:
滝谷源治:小栗旬
片桐拳:やべきょうすけ
逢沢ルカ:黒木メイサ
辰川時生:桐谷健太
牧瀬隆史:高橋努
田村忠太:鈴之助
戸梶勇次:遠藤要
筒本将治:上地雄輔
桐島ヒロミ:大東俊介
本城俊明:橋爪遼
杉原誠:小柳友
阪東秀人:渡辺大
林田恵:深水元基
三上学:伊崎右典
三上豪:伊崎央登
牛山:松重豊
黒岩義信:塩見三省
矢崎丈治:遠藤憲一
滝谷英雄:岸谷五朗
伊崎瞬:高岡蒼甫
芹沢多摩雄:山田孝之
2007/日本/130min.   ☆☆☆☆

 『クローズZERO』は、累計発行部数が3,200万部を超える、高橋ヒロシによるカリスマ的な大人気コミック「クローズ」をオリジナルストーリーで実写映画化したものです。PG-12指定。“ZERO”の名の通り、原作の主人公・坊屋春道が転校する1年前の鈴蘭高校が舞台です。最悪のワルガキが集まる鈴蘭男子高校の覇権を巡る拳と意地とプライドをぶつけ合う男たちの史上最大の抗争という、原作では語られなかった完全オリジナルドラマが“エピソードZERO”として展開します。監督は『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』の鬼才・三池崇史。コミック原作の作品らしく極端な演出をしながらも、随所で三池流を発揮し緩急自在のエンターテイメントを作り上げました。小栗旬、山田孝之、高岡蒼甫、黒木メイサら若手俳優と、やべきょうすけ、岸谷吾朗ら個性派俳優ら人気と実力を兼ね備えたキャスト陣と、800人のオーディションを勝ち抜いた若き“クローズたち”の融合が見もので130分という長丁場を全く感じさせません。熱き不良男たちが己のこぶし一つで学校の頂点を目指すという、なんとも馬鹿馬鹿しく単純な話ですが、冒頭からグウグイと引き込まれ、笑いあり、涙あり、友情や人情まで感じられる演出でした。それは脚本の上手さもさることながら、若き役者たちの一切手抜きのない演技や迫力が伝わってきたからです。この熱さが嘘偽りのない一級のアクションエンタテ―メントにしてくれたのでしょう。小栗旬はただのアイドルというイメージでドラマ等全く見たことなかったのですが、この映画ではあんなに短ランかっこよく着こなして、目付きも鋭くてめちゃめちゃカッコイイ!笑顔になるとソフト感が出てしまうけど…。
 音楽は、原作の高橋ヒロシが『クローズ』を描くために多大な影響を受けたという横道坊主、THE STREET BEATSを中心に、逢沢ルカ役として映画にも出演する黒木メイサ、浅井健一、The Birthday、ガガガSPなど豪華アーティストが参加。劇中歌がどれもカッコ良く世界観がぴったりで、ますます興奮度を盛りあげてくれます。特にインストの「激突」は聴いてるだけで気分が高揚してきます。ただ黒木メイサの歌はこの物語に必要だったのかと疑問点も残ります。『ストリート・オブ・ファイヤー』(84)のダイアン・レインみたいに位置付けたかったのかな?とにかく原作を全く知らずとも楽しめる(私も)、熱く痛快な一篇です。
 偏差値最低、品性最悪の不良学生が集まる、最強かつ最凶の高校として悪名を轟かせている鈴蘭高校(通称・カラスの学校。不吉な嫌われモノ=カラスのような不良学生たちが集まる)では、不良達が多過ぎてまとまりがなく、多数の派閥が覇権をめぐって勢力争いを繰り広げていた。その鈴蘭で県内最強と恐れられている“リンダマン”こと2年の林田恵(深水元基)は派閥争いには全く興味を示さない。現在の最大勢力は、“百獣の王”と呼ばれるほどケンカが強い、3年の芹沢多摩雄(山田 孝之)率いる“芹沢軍団”だった。しかし校内には芹沢に敵対する第2、3の勢力(3年の伊崎瞬、牧瀬隆史のグループ。同じく3年の凶暴な双子・三上兄弟。2年の阪東ヒデト率いる阪東一派。阪東はバイクチーム“武装戦線”の四天王と呼ばれる男の一人。次いで“海老塚(中出身)3人衆”桐島ヒロミ、本城俊明(通称ポン)、杉原誠(マコ)ら1年生トリオも頭角を現してきている)も存在しており、相棒の辰川時生をはじめ実力者が揃う芹沢軍団ですら、鈴蘭制覇は全く容易ではなかった。そんな群雄割拠の鈴蘭の3年に、不可能と言われている鈴蘭制覇を本気で狙う滝谷源治(小栗旬)が転入する。群れることを嫌い単独行動する源治だったが、ふとしたことで知り合った鈴蘭OBで早秋一家矢崎組のチンピラ片桐拳(やべきょうすけ)と友人になり、片桐の知恵を借りながら、鈴蘭制覇へと勢力を拡大する。いつしか拳は、自分が果たせなかった鈴蘭制覇の夢を源治に託すようになっていた。拳のとりなしもあって、源治と共に戦う、強力な仲間達が集まってきた。彼らは源治を筆頭に新勢力GPS(G源治PパーフェクトS制覇)を旗揚げする。そして鈴蘭の勢力図は大きく塗り替えられ、内部抗争はより一層激化していくのだった。殴り合いでしか、語れない強敵がいる。避けては通れない戦いがある。源治と芹沢。ついに二匹のカラスが、雌雄を決する時が来た…。
 これはスケールこそ学校内だけの話(『火山高』(01)もそうでした)ですが、「小鹿物語」のように(?)人間の成長を謳った物語です。喧嘩であれ、組織化された集団を率いるのであれば、当然そこに人の上に立つ器や資質を要求されます。主役の源治は典型的な成長型の主人公ですが、成長するのが腕力ではなく、人間関係だった点がこの作品のポイントです。彼は映画の中で何度も己の器の小ささにくじけそうになります。実際、それを乗り越えた者だからこそ強い者になれるのではないでしょうか。同時に彼を支える仲間が居ればこそ、彼は成長していきます。源治の強さの根幹には人間の成長時の上昇気流のようなものがあるように思えます。
 主人公に対峙する芹沢も実にいい味が出ていました。山田孝之といいますと『電車男』(05)で全くこの映画と正反対のイメージでしたし、更に『手紙』(06)の胸に迫る演技も印象深かったです。その彼が今まで見たこともない役柄に見事嵌って超格好良く驚かされました。183cmの小栗と168cm(初校は失礼致しました)の山田の身長差を感じさせない演出はアングルの効もあるでしょうが、山田の威風堂々とした演技の賜物でしょう。
 そして、もう一人忘れてはいけないのが片桐拳です。彼は大人の世界の敗者の代弁者でもあります。同時に源治にとっての良きアドバイザーの一面も持ちます。その過程で冴えないチンピラである彼が物語と並行してどんどん魅力的な存在に成長していく様子が上手く描かれています。
 ここまで褒めておいて残念なのは、クライマックスの雨の中の軍団対決シーンです。土砂降りの筈なのに背景の空に雲が無いのです。どー見てもフィルターかけた青空にしか見えない事もあれば、斜陽を浴びた雲が僅かに漂っている時もあります。更に言うと、戦っている生徒達の顔に髪などの影が出ている事があるのです。普通、雨が降っていれば、あんなにくっきり影は映りません。地面の水たまりにしても、生徒達の服や髪の濡れ方にしても、何であれだけ力入れて製作してたのに、最後のシーンで手を抜いたのか、解せません。勿体無いから減点!