八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

転校生つくしちゃん10

2022-09-29 08:00:00 | 転校生つくしちゃん

 

 

帰り際。

つくしを送る時も、俺も一緒に車に乗り込んだ。

運転手だろうが、男なんだ。

つくしと二人きりになんてさせられねー。

 

車に乗っても、ニコニコと話しているこいつ。

「大きい車やなぁ。」

「ピカピカやん。」

 

それなのに、数分もしねーのに急に静かになった。

俺の部屋で2時間も寝たっつーのに、つくしは気持ちよさそうな顔をして寝ていた。

 

どれだけ寝るんだ?

車から伝わる小さな揺れに合わすかのように、つくしは体を揺らす。

俺は、そんなつくしの頭を、自分の肩にもたれさせた。

 

しばらくすると、完全に寝入っているつくしは─────。

俺の肩から胸に、そして、そのまま俺の大腿までズレてきた。

つくしの真っ白い肩が、俺の目を刺激する。

 

目に毒だ。

なんて思いながらも、俺はこいつの肩から目が離せなかった。

 

 

 

翌朝、

またいつものように、つくしのマンション前で待つ健気な俺。

 

「おはようさん。」

「はよ。」

 

いつもの朝の挨拶の後、つくしは話し出した。

「昨日はおおきに。むっちゃ楽しかった。そんで、家まで送ってもらってホンマにありがとう。お邸の人たちにも、ようお礼言うててな。それに、プール楽しかっ、あっ…。」

 

話し終わる前に、つくしは顔中どころか耳や首まで真っ赤にした。

俺が告ったことやキスしたことを、やっと思い出したようだ。

 

お互い一言も話さない状態で歩く。

少しは俺を意識しろっつーんだ。

 

「あ、あんな。」

この微妙な雰囲気に堪えられなくなった、つくしが口を開いた。

 

「昨日、類ん家で虫に噛まれたやん。昨日、帰ったらまた反対側、噛まれててん。」

自分の肩を指差ししながら話すつくし。

 

気付いたんだな。

笑い出しそうになるのを何とか堪え、俺は無表情のままつくしの話を聞いた。

 

「類の家より大きくて赤なってたけど、痒くないねん。」

不思議そうに話しているこいつ。

 

「そうだな。虫じゃねーからな。」

「えっ?虫じゃないん?だから、薬塗っても治らんかったんや。」

 

あ"?

薬を塗っただと…?

俺の所有の印をなんだと思ってんだっ!

 

「虫じゃないんやったら、なにに噛まれたんやろ?痒ないし変なの。」

不思議そうな顔をしているつくし。

 

なんで気付かねーんだ?

俺がつけたから痒くねーんだ。

 

昨日の夜。

夜の車の中だっつーのに、お前の細い肩は─────。

まるで俺を誘うかのように、皓々としてたんだ。

 

キスマークを付けても、虫に噛まれたってなんだよ。

俺の付けた印が、まさかの虫と同レベルとかねーだろ。

 

キスマークに薬を塗るようなこいつでもわかるように、俺は一語一句丁寧に話した。

「好きな女の水着は見れねー。抱きしめて告っても、その男の部屋でグーグー昼寝して、返事もくれねー。やっと帰りの車で二人きりになれたと思っても、誰かさんは俺の膝枕でグーグー寝てしまったんだ。だから、俺の所有の印をつけたんだよ。わかったか?」

 

俺が話し終ると─────。

顔を真っ赤にしたつくしが、自分の肩に手をやり叫んできたんだ。

「えっ!えっーーー!これって、これって。」

 

やっと気付いたか?

この鈍感女。

 

「『ごちそうさん。』っつーんだろ?」

俺の関西弁に

 

「よろしゅうおあがり。ってちゃうわ!」

やっぱ関西弁で返してくるこいつ。

 

よろしゅーおあがりって何だ?

 

「使い方もちゃうしー。使う場所も発音もまちごーてる!」

これ以上ねーってくらい顔を真っ赤にしたつくしが言ってきた。

 

 

学校に入る直前、類と合流する。

類はつくしの真隣で歩きだす。

 

小さな声で類がつくし話しかけた。

「昨日の服、どうだった?」

 

「シーっ!もう!そんなんここで言(ゆ)うたらアカン。」

つくしは口の前で人差し指を立てながら、小さく話した。

 

二人とも小声のつもりなのか?

丸聞こえだぞ。

 

「なにが『言うたらアカン。』なんだよ?」

俺の声に、明らかにつくしがヤバって顔をした。

 

「昨日のつくしのワンピース、可愛かっただろ?」

類が俺に聞いてきた。

 

そうだった。

昨日、つくしは邸に来る前に類の家に行った。

こいつら、二人で何してたんだ?

キスマークが蚊ってことに安心してしまったが…。

なんでつくしが、類のベッドに入ったんだ?

 

「俺、昨日はゆっくり寝るって決めてたのに。つくしに無理に起こされてさ。」

類が俺に話し出した。

 

「『この服でおかしないか?』とか『道明寺はこんなワンピー…』」

つくしの口調を真似した類の言葉に─────。

 

「イヤー!もう、類!いらん事、言わんといてっ。なんでそんな余計なこと言うん?」

つくしの叫び声が重なった。

 

でも、俺の耳には類の声が間違いなく届いた。

「『道明寺はこんなワンピース好きやろか?』って言いながら、俺のベッドの端に急に跳びのるからベッドから落ちたんだよ。」

 

昨日、類の部屋に行ったのは─────。

類に、俺の服の好みを聞きに行ってたのか?

 

スゲー嬉しくなった俺は、隣にいるつくしの顔を覗き込んだ。

恥ずかしそうなつくしを見ながら、俺は確信した。

つくしからの『むっちゃ好きやねん。』を聞ける日は、かなり近い。

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。


いつもたくさんの応援を本当にありがとうございます。

転校生つくしちゃんの(私の中の)第二章はここまでです。

関西弁が楽しすぎて、毎日更新することができました。

第三章は冬頃になる予定です。