八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

まやかし婚 181

2022-09-20 08:00:00 | まやかし婚(完)

 

 

英徳の客員教授の任命書。

これを嬉しそうに見ているつくし。

 

こいつに振り向いてもらう為に…。

俺は赤札を貼った方への謝罪と、教師になることを始めた。

今から思うと、謝罪はして当然だ。

教師になるのは、少しでもつくしに男として見てもらいたかったからだ。

 

が、これは西田によって却下される。

「牧野さんの為に教師になりたいのですか?そんな不純な動機で、教師になってもらっては困ります。そもそも、その性格の司様が先生ですか?ご自分の学生時代を思い出して下さい。あれだけのことをしていて、先生になるのは無理かと…。反面教師になら、既になっておられます。」

っつーのが西田の意見だった。

 

確かに、学生時代のことを考えると無理だ。

あれだけのことをしていた中学や高校の教師になんてなれねー。

学生時代の俺、なんてことしてたんだよっ!

自分で自分を呪いたくなる。

 

こんなことを思っていた時に、西田がスゲーことを言いだした。

「小中高の教師は難しいですが、大学であれば可能性はあります。」

 

そして、西田は話を続けた。

「司様は、少年少女を育てていくタイプでは無いので、高校までの教師は無理です。ですが、大学生ならある程度大人です。人間にはの過ちがあることにも理解してもらえます。英徳の経営学の客員教授の枠があります。どうです?興味ありますか?」

だった。

 

『多少』の多がデカくて、少が小さいんだ?っつー疑問は、口にしなかった。

確かに、俺は学生を育てていくタイプじゃねー。

大学生なら、まだ話しやすいか?

しかも、経営学。

英徳なら俺と同じように、親の用意したレールで身動きできねー奴が多いはずだ。

 

それよりも、今、直ぐに言いたいことがある。

「英徳の客員教授、スゲー興味ある。でも、道明寺の肩書きでなりたくねー。博士号は無理としてもせめて修士号が欲しい。」

 

そんな俺に、呆れた顔をした西田が言ってきたことが…。

「何を言っているのですか?ご自分が修士号をお持ちなのをお忘れですか?司様はアメリカで、修士号を取得しております。」

だったんだ。

 

そうだ!

俺がアメリカの大学に通っている頃に、西田が言ってきたんだ。

「いつの日か、司様が道明寺ホールディングスに勤めるとしても不安です。少しでも、まともな人間にするべきです!!」

 

この西田の意見に、ソッコーで親父とババアは賛成した。

お蔭で俺は、大学を卒業した後も働きながら、更に大学に通いながら、レポートや論文をひたすら提出した。

その時、俺は知らねー間に修士号を取っていたらしい。

 

西田に言われるまま行動したお蔭っつーのが、なんとなく癪に障るが…。

つくしが、嬉しそうに任命書を見てるのは悪い気がしねー。

 

そして、つくしは俺を見上げ、小首を傾げながら言ってきたんだ。

「ねぇ…。でも、英徳だよ。一流の先生が揃っているよね。あんた、だいぶマシになってきたけど…。日本語、大丈夫?」

 

!!!

なんなんだっ!

そんな可愛い仕草で、言うことはそれかっ!

俺は、お前からの最上の『ありがと。』だとか、まだ言われてねー『好き』だとか『大好き』っつーのを期待していたんだぞ!

日本語、大丈夫?って、そこかよっ!!

 

「あぁ…。問題ねー。俺の授業は全て英語だって西田が言っていたからな。」

ジト目で睨みながら、俺は返事をした。

 

「そっか。じゃ、安心だね。」

っつー、つくしの言葉。

 

なにが安心なんだ?

ムカついている俺に…。

 

「ありがと。あんた、ずっと仕事で忙しかったのに…。私の為に、先生にまでなってくれたんだね。すごく嬉しい。最高のクリスマスプレゼントだよ。」

俺の欲しかった言葉を、はにかみながらつくしは言ってきた。

 

そんなつくしに、俺はクリスマスプレゼントを渡すと…。

「昨日もらったよ。」

っつー、可愛くねー返事。

 

「あれはホワイトデーのだ。これはクリスマスプレゼント。開けて見ろよ。」

俺の言葉に、

 

「あんたからもらってばかりだね。ありがと。」

なんて言いながら、つくしはラッピングを解きだした。

プレゼントは、俺がいつも使っている星座の腕時計のペアを用意した。

 

「うわー、綺麗。あんたのと似てるね。」

なんて言いながら、つくしは文字盤をライトに当てキラキラさせてた。

 

「俺のとペアだからな。」

この俺の言葉に、「やっぱり。」なんて言いながら納得しているつくし。

 

そして、腕に嵌めた途端、

「あれ?なんで?ピッタリ。」

なんて言いだした。

お前の腕のサイズくらいわかってるっつーんだよ。

 

「意味、わかってるよな?」

俺の言葉に、嬉しそうにコクンと頷いた。

 

男が女に腕時計を贈る理由なんて一つだ。

お前と同じ時を歩みたい。

俺とつくしは、ずっと同じ時を刻んでいく。

 

「一生モノだね。ありがと。大切に使うね。でも、こんなに高いの…。気、使わせちゃったね。」

申し訳なさそうに言ってくるこいつ。

 

一生モノってなんだ?

気を使わせたってなんだ?

腕時計の意味、わかってたんじゃねーの?

 

「あんたってバカ力だよね。私の腕時計、握力だけで壊してしまうんだもん。時計屋のおじさんも驚いていたよ。」

俺、こいつの腕時計を壊したのか?

あのパーティーの時か?

 

「修理が無理だったから、新しいのを買うつもりでいたの。ありがと。大切にするね。」

っつー、こいつの声。

 

おい…。

マジでわかってねーとか、ありえねーだろっ!!

男が女に腕時計を渡す意味くらい、知っとけっつーんだ!!

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。