道明寺からプレゼントしてもらった星座の腕時計は…。
まるで道明寺の腕時計のミニチュア。
そして、文字盤のキラキラしているのはダイヤモンド。
いつだったか「カッコいい時計だね。」って言った記憶がある。
だから、道明寺はいつもこの時計をしていたの?
ププっ。
道明寺って可愛らしすぎでしょ。
自分の頬が緩んでくるのがわかる。
大切に使う。
この時計は一生モノなはず。
「一生モノだね。ありがと。大切に使うね。でも、こんなに高いの…。気、使わせちゃったね。」
私の言葉に、道明寺は首を傾げた。
そうだった。
道明寺は私の腕時計が壊れたことを、知らなかったんだ。
「あんたってバカ力だよね。私の腕時計、握力だけで壊してしまうんだもん。時計屋のおじさんも驚いていたよ。」
この私の話に、一瞬だけ道明寺の動きが止まった。
もしかして、自分じゃないと思っているのかな?
握力だけで腕時計を壊すなんて思わないよね。
だから、私は続けて言ったの。
「修理が無理だったから、新しいのを買うつもりでいたの。ありがと。大切にするね。」
私がこう言った途端─────。
道明寺の顔が一気に険しくなった。
なんで道明寺が怒るの?
腕時計を壊されたのは私だよ。
ジト目になった道明寺は言ってきたの…。
「男が好きな女に、腕時計を贈る理由なんて一つだ。同じ時を過ごしたいに決まってんだろ!」
えっ!?
そうだったの?
そんなの知らなかったんだもん!
「ごめん。そんなこと知らなかったから。でも、この時計ずっと大切にするね。昨日の土星のネックレスも…。どっちも一生モノだよ。」
申し訳なさそうに話すつくし。
そのつくしの言葉に再び出た『一生モノ』っつー言葉。
「なぁ、その一生モノってなんだ?」
俺の素直な疑問。
その返事っつーのが、
「とても大切なモノで、一生使っていくモノだよ。何年、何十年って大切に使うんだよ。いつか、お婆ちゃんになっても…ね。ずっと大切にしていくんだよ。」
だった。
何年も何十年も大切に使うモノ。
俺がプレゼントした土星のネックレスと腕時計が、つくしの一生モノになる。
つくしが婆さんになる日なんて想像できねーけど、そんな日が来ても大切にされるモノ。
「俺も、か?」
俺も、つくしの一生モノになるんだよな?
「えっ?道明寺が一生モノなのかって聞いているの?」
つくしの返事に、俺は頷いて聞いた。
「あぁ。俺もつくしの一生モノなんだよな?」
俺の言葉に、つくしは笑いながら答えてきた。
「プッ。やっぱ、あんた、日本語が変。あのね、人には一生モノって言葉は使わないんだよ。」
なんだよ。
人には使わねーのか。
そんなことを思っている時に、つくしが落としてきた爆弾。
「でも…。そうなれたら素敵だね。これからも、どうぞよろしくね。」
ここまで言われて、もう我慢なんてする必要ねーよな。
俺も我慢の限界だ。
つくしを抱き締めようと、俺が腕を伸ばすと─────。
!!
つくしがいねぇ。
どこ行った?
こう思った時、リビングの端から聞こえたつくしの声。
「私もあんたに渡したいものがあるの。ちょっと、待ってて!」
マジか?
これ以上、待てねーっつーんだっ!
パタパタっつー足音と共に、リビングに戻ってきたつくし。
俺のスーツを、いつもオーダーしてる店の紙袋を手にしている。
「これ、私から…。えっと、プレゼント…。あんたがいつも使っているのより、ランクが下がってしまうんだけど…。よかったらスーツの中にでも着て。」
こう言いながら、おずおずと渡してきた。
スゲー嬉しい。
プレゼントを受け取った俺は、一気にラッピングをはがした。
こんな気持ちでラッピングをはがすのは、いつ以来だ?
つくしからのプレゼントは、ジャケットの中でも着られるようにV字のライトグレーの薄手のニット。
ランクが下がるなんて言っていたが、そんなことねー。
俺が普段に使っているのと同レベル。
光沢も勿論、手触りもスゲー良い。
「サンキュ。スゲー嬉しい。」
俺の礼に、つくしはスゲー優しい顔でふわって微笑んだ。
このつくしの微笑みで、俺の我慢が完全に停止した。
プレゼントを渡すと、道明寺は嬉しそうに笑ってきてくれた。
私も嬉しくなって、同じように笑った。
好きな人にプレゼントを喜んでもらえるって、すごく嬉しいことなんだね。
さぁ、今から片付けをしよう。
いつものように道明寺もシャワーに行くはず。
その後、私がお風呂に入ったら…。
きっと、その時は────。
道明寺と私の初めての夜が始まる。
あのサイズが怖かった。
それに、他の女の人と比べられるのがなんとなく嫌だった。
でも、私の為に先生になってくれる道明寺だもん。
痛くても、比べられても大丈夫。
こう思った時─────。
道明寺の腕が伸びてきて、私の体はすっぽり道明寺の体に包まれた。
えっ!もう?
シャワーは?
キッチンの後片付けは?
こう思った時には、私はお姫様抱っこをされていて…。
道明寺は、寝室に向かって歩き出していた。
道明寺を見上げて見ると、いつもと違う。
私が初めて見る表情。
男の人の顔をした道明寺の色気にクラクラしてしまう。
ベッドに大切に下ろされた途端、道明寺からの優しいキスが始まった。
いよいよなんだ。
私の初めてが始まるんだ。
道明寺のキスが深くなった時、リビングから機械音が鳴り響いた。
『ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン…。』
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