八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

まやかし婚182

2022-09-22 08:00:00 | まやかし婚(完)

 

 

道明寺からプレゼントしてもらった星座の腕時計は…。

まるで道明寺の腕時計のミニチュア。

そして、文字盤のキラキラしているのはダイヤモンド。

いつだったか「カッコいい時計だね。」って言った記憶がある。

 

だから、道明寺はいつもこの時計をしていたの?

ププっ。

道明寺って可愛らしすぎでしょ。

自分の頬が緩んでくるのがわかる。

 

大切に使う。

この時計は一生モノなはず。

 

「一生モノだね。ありがと。大切に使うね。でも、こんなに高いの…。気、使わせちゃったね。」

私の言葉に、道明寺は首を傾げた。

 

そうだった。

道明寺は私の腕時計が壊れたことを、知らなかったんだ。

 

「あんたってバカ力だよね。私の腕時計、握力だけで壊してしまうんだもん。時計屋のおじさんも驚いていたよ。」

この私の話に、一瞬だけ道明寺の動きが止まった。

 

もしかして、自分じゃないと思っているのかな?

握力だけで腕時計を壊すなんて思わないよね。

 

だから、私は続けて言ったの。

「修理が無理だったから、新しいのを買うつもりでいたの。ありがと。大切にするね。」

 

私がこう言った途端─────。

道明寺の顔が一気に険しくなった。

なんで道明寺が怒るの?

腕時計を壊されたのは私だよ。

 

ジト目になった道明寺は言ってきたの…。

「男が好きな女に、腕時計を贈る理由なんて一つだ。同じ時を過ごしたいに決まってんだろ!」

 

えっ!?

そうだったの?

そんなの知らなかったんだもん!

 

 

 

「ごめん。そんなこと知らなかったから。でも、この時計ずっと大切にするね。昨日の土星のネックレスも…。どっちも一生モノだよ。」

申し訳なさそうに話すつくし。

 

そのつくしの言葉に再び出た『一生モノ』っつー言葉。

「なぁ、その一生モノってなんだ?」

俺の素直な疑問。

 

その返事っつーのが、

「とても大切なモノで、一生使っていくモノだよ。何年、何十年って大切に使うんだよ。いつか、お婆ちゃんになっても…ね。ずっと大切にしていくんだよ。」

だった。

 

何年も何十年も大切に使うモノ。

俺がプレゼントした土星のネックレスと腕時計が、つくしの一生モノになる。

つくしが婆さんになる日なんて想像できねーけど、そんな日が来ても大切にされるモノ。

 

「俺も、か?」

俺も、つくしの一生モノになるんだよな?

 

「えっ?道明寺が一生モノなのかって聞いているの?」

つくしの返事に、俺は頷いて聞いた。

「あぁ。俺もつくしの一生モノなんだよな?」

 

俺の言葉に、つくしは笑いながら答えてきた。

「プッ。やっぱ、あんた、日本語が変。あのね、人には一生モノって言葉は使わないんだよ。」

 

なんだよ。

人には使わねーのか。

 

そんなことを思っている時に、つくしが落としてきた爆弾。

「でも…。そうなれたら素敵だね。これからも、どうぞよろしくね。」

 

ここまで言われて、もう我慢なんてする必要ねーよな。

俺も我慢の限界だ。

 

つくしを抱き締めようと、俺が腕を伸ばすと─────。

 

!!

つくしがいねぇ。

どこ行った?

 

こう思った時、リビングの端から聞こえたつくしの声。

「私もあんたに渡したいものがあるの。ちょっと、待ってて!」

 

マジか?

これ以上、待てねーっつーんだっ!

 

パタパタっつー足音と共に、リビングに戻ってきたつくし。

俺のスーツを、いつもオーダーしてる店の紙袋を手にしている。

 

「これ、私から…。えっと、プレゼント…。あんたがいつも使っているのより、ランクが下がってしまうんだけど…。よかったらスーツの中にでも着て。」

こう言いながら、おずおずと渡してきた。

 

スゲー嬉しい。

プレゼントを受け取った俺は、一気にラッピングをはがした。

こんな気持ちでラッピングをはがすのは、いつ以来だ?

 

つくしからのプレゼントは、ジャケットの中でも着られるようにV字のライトグレーの薄手のニット。

 

ランクが下がるなんて言っていたが、そんなことねー。

俺が普段に使っているのと同レベル。

光沢も勿論、手触りもスゲー良い。

 

「サンキュ。スゲー嬉しい。」

俺の礼に、つくしはスゲー優しい顔でふわって微笑んだ。

このつくしの微笑みで、俺の我慢が完全に停止した。

 

 

 

プレゼントを渡すと、道明寺は嬉しそうに笑ってきてくれた。

私も嬉しくなって、同じように笑った。

好きな人にプレゼントを喜んでもらえるって、すごく嬉しいことなんだね。

 

さぁ、今から片付けをしよう。

いつものように道明寺もシャワーに行くはず。

その後、私がお風呂に入ったら…。

 

きっと、その時は────。

道明寺と私の初めての夜が始まる。

 

あのサイズが怖かった。

それに、他の女の人と比べられるのがなんとなく嫌だった。

でも、私の為に先生になってくれる道明寺だもん。

痛くても、比べられても大丈夫。

 

こう思った時─────。

道明寺の腕が伸びてきて、私の体はすっぽり道明寺の体に包まれた。

 

えっ!もう?

シャワーは?

キッチンの後片付けは?

 

こう思った時には、私はお姫様抱っこをされていて…。

道明寺は、寝室に向かって歩き出していた。

 

道明寺を見上げて見ると、いつもと違う。

私が初めて見る表情。

男の人の顔をした道明寺の色気にクラクラしてしまう。

 

ベッドに大切に下ろされた途端、道明寺からの優しいキスが始まった。

いよいよなんだ。

私の初めてが始まるんだ。

 

道明寺のキスが深くなった時、リビングから機械音が鳴り響いた。

『ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン…。』

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。