八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

転校生つくしちゃん5

2022-09-19 08:00:00 | 転校生つくしちゃん

 

 

『むっちゃ好きな人』

物音一つしねー世界で、牧野の声だけ俺の中で何度も繰り返す。

お前のむっちゃ好きな奴って誰なんだよ。

 

「おっ!つくしの好きな奴?誰だよ?お兄さん達に言ってみなさい。」

このあきらの声に─────。

俺の中で止まっていた世界が動き出す。

 

牧野の好きな奴。

一体どんな奴なんだ?

 

俺じゃねーのかよ?

俺って言えよ。

俺だって言ってくれ。

 

こんなことを願っていると、一瞬だけ。

いや、一瞬以下だったかもしれねー。

俺の願望かも知れねーけど、ほんの一瞬牧野と目線が合ったような気がした。

 

そんな俺の淡い期待も虚しく…。

少し照れたような顔をした牧野は、その顔を隠すように俯き加減に言ってきたんだ。

「いつかの話や!いつか、むっちゃ好きになった人とな。高校生とかじゃなくって、大人になってからの話や。」

 

そんな牧野の返事に

「「やっぱ、つくしは鉄パンだな。」」

なんて言ってるあきらと総二郎。

 

そんなあきらと総二郎に、

「あんたら、変な所でいっつもハモるな。」

なんて変な所で感心しているこいつ。

 

そんな牧野を横目で見ながら─────。

大人になるまでなんて待ってられるかっ!!

今直ぐ俺のこと好きになれっ!!

っつー、俺の念力をこいつに送った。

 

そんな間も、あきら・総二郎・牧野の3人は

 「あんたら、夏休み1回も学校来ーへん(来ないで)で何してたん?」

「「ナンパ!」」

 

「学校来(こ)うへんでナンパ?」

「「高1の夏は今だけだ!」」

っつー、会話をした後、牧野が突然立ち止まった。

 

どうしたんだ?

なんで急に、こいつは立ち止まったんだ?

 

しかも、「そうやでな。高1の夏は今だけやもんな。」こんなことをブツブツ言っている。

俺はもちろん、あきらと総二郎も不思議そうな顔をしながら、顔を見合わせる。

 

そんな俺に、牧野は言ってきたんだ。

「なぁ、急なんやけどな…。今から道明寺ん家(ち)のプールに行ってもかまへん?」

 

一瞬、何を言われたのか戸惑った俺は、返事が遅れた。

『かまへん』は『いいか?』っつー意味だったはずだ。

 

「…あぁ。いいけどよ。急にどうした?」

俺が聞いてみると─────。

 

「うちな…。東京来たのが夏休み前やったやろ。どこのプールに行ったらえーんか、わからんかってん。」

この牧野の言葉に、俺は衝撃を受けた。

 

俺ならいつでも連れて行くっつーんだっ!

クソっ。

なんで、俺は誘わなかったんだっ。

 

「お盆は、大阪に帰ったけど、ママが『お盆にプールとか海行ったら、霊に足引っ張られるからアカン。』って言ってきて行かれへんかってん。」

牧野の言葉に、俺たち3人は首を捻った。

盆にプールや海に行くと、霊に足を引っ張られるってなんだ?

 

そんな俺たち3人のことなんて気にしてねー牧野は─────。

俺に手を合わすようにして、頼んできたんだ

「だからな、今年は1回もプールに行ってないねん。悪いんやけど、道明寺のお家のプールで泳がせてもうてもえーかな?」

 

俺の返事を待っている間─────。

牧野は手を合わせたまま上目使いで俺を見ていて、思わず頬が赤くなるのがわかった。

 

俺が頷いたのを見るなり、牧野は「やった~。」なんて言いながら、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。

 

やべぇ…。

こんなに可愛い牧野が邸に来るのか?

邸で二人きりになって、俺、大丈夫か?

 

こんなある意味、幸せを噛みしめいると─────。

「おっ!つくしの初サボりだな。」

「俺たちも、一緒にプールに行ってやるよ。」

あきらと総二郎の声により、俺の至福の時は一瞬にして終わってしまった。

 

あきらの『つくしの初サボり』はまだわかる。

総二郎の『俺たちも一緒にプールに行ってやるよ。』は、要らねーだろっ!!!

 

『お前たちは来るな。』

っつー俺の言葉は、

 

楽しそうな牧野の声に消されてしまった。

「あきらくんと総ちゃんも一緒に来る?うわー、楽しそう!そんなに大勢でお邪魔していけるん?」

 

「司の邸は広いからな。プールも広いぞ。」

あきらは牧野に話した後、スマホを手にした。

同じように隣の総二郎も、スマホを触りだす。

 

俺の腕をポンポンと軽く叩いてきた牧野は、

「道明寺。うち、水着取りに帰ってくるわ。」

なんてことを言ってきた。

 

「送る。」

って言いながら、俺が牧野の腕を掴もうとした時には─────。

既に、牧野は走り出している。

 

「かまへん。ちょっと寄りたいとこあんねん!ほな、後でなー。」

牧野がこう言って、また走り出した。

 

寄りたいとこってどこだよ?

そんなことすら、聞けねー今の俺。

送ることすら拒否られて、凹んでいる俺に─────。

 

「仕方ねーわ。」

「司は、つくしの彼氏じゃないからな。」

 

「彼氏になれるのか?」

「さぁ…。どうだろうな?」

 

「俺、くっつかないに1万。」

「じゃ、俺は無理な方に1万。」

こんなムカつく会話をしてるこいつらに、

 

俺は、怒鳴り声を響かせた

「くっつかねーも、無理もどっちも同じじゃねーかっ!!」

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。