「しかも、発音ぜんぜんちゃうしな。」
キスの後だっつーのに、関西弁には厳しいこいつ。
そして、文句を言いながら、俺の胸を押してくる。
「名前で呼んだら、離してくれる言うたのに…。もう、離して。」
そんな力じゃ、ビクともしねーよ。
「離さねぇ。」
俺の言葉に、
つくしは困った顔をしながら─────。
上目使いで俺を見上げてきたんだ。
!!!
うぉっ。
お前、今、俺の胸の中にいるんだぞ!
そんな可愛い顔で見上げてきたら、ムチャクチャにしたくなるじゃねーかっ!
そして、言ってきたんだ。
「うち、ほんま恥ずかしいねん。離してよぉ。道明寺は、いけずや。」
こいつの上目使いに『離してよぉ』に『いけずや』だぞ!!
牧野のあまりの可愛らしさに、俺の腕は一瞬緩んでしまった。
あの後、直ぐにプールから出た俺たち。
こいつの可愛らしさに、俺の腕が緩んでしまったのが原因だ。
そして、その可愛いつくしは、
「人様のお家で、お昼寝なんてよーせんわ。」
なんて言っていたのに…。
つくしは、俺のベッドで2時間も爆睡した。
その間、俺もこいつの可愛い寝顔を堪能した。
流石に、一緒のベッドで寝るっつーことだけは…。
なんとなく止めた。
でねーと、目が覚めたこいつがデケー声で叫びそうだろ?
目が覚めたこいつは、開口一番。
「なんであんたが、ここにおるん?」
こんな可愛くねーことを、言ってきた。
「ここは俺の部屋だ。」
っつー俺の返事に、
「えー!!そうなん。ごめん。ベッド占領してもうたなぁ。あんた、何人も寝れそうなベッドに寝てんやなぁ。」
一瞬で驚いて謝って、感想まで話すこいつ。
「何人もは無理だろ。」
「そうかなぁ?ごっつい大きいからいけるで。」
この会話の後、
「俺は、お前と2人で使いてーんだけど…。 」
こう言った俺が、ベッドに片膝を乗せると─────。
つくしは、一瞬にしてベッドから飛び下りた。
なんでそんなに素早いんだよ。
そして、廊下へ続くドアに駆け寄りながら─────。
噛みまくりながら、言ってきたんだ。
「あ、あ、あっ。う、うちお腹空いたわ。せ、せ、せや、持ってきた回転焼き、みんなでた、食べよう。ぷ、ぷ、プールの後って、むっちゃお腹空くでな、なっ。」
つくしは持ってきた回転焼を、邸の連中と食べだした。
なんでも、黒あん・白あん・カスタード・抹茶にチョコ味があるらしい。
すっかり邸の連中と、仲良く楽しそうに過ごしている。
俺が視線を送っても全く気付かねー。
そのくせ、心配そうに言ってくるのが、まさかのこんなこと。
「なぁ、道明寺。あきらくんと総ちゃんに声、掛けんでえーかな?回転焼き、無くなってしまうんやけど…。」
・・・・・。
男と女が、それぞれの部屋に消えていったんだぞ!
回転焼きの為に、声を掛ける必要があるか?
あきらや総二郎のヤッてる所なんて、俺は見たくねー。
それよりも!!
つくしのこの辺りの感覚は、どうなってんだ?
俺が告ったっつーのに、こいつは嬉しそうに回転焼きを食ってる。
まさか、昼寝して忘れたわけじゃねーよな?
なんとなく不安に思いながら、俺たちは夕食の為にダイニングに移動した。
回転焼きを食った後でも、こいつの胃袋は一瞬にして圧縮されるみてーでバクバク飯を食い出した。
食べ終わった後、つくしは両手を合わせて
「美味しかったです。ごちそうさまでした。」
俺と邸の奴らに、礼を言ってきた。
学校で弁当を食った後は、『ごちそうさん』っつーて手を合わしているこいつが、『ごちそうさま』っつーのに、俺が笑うと─────。
「私もきちんとした所では、少しくらいきちんとするの。」
こんなことを笑いながら言ってきた。
まさかの『私』発言に、俺が笑うと─────。
「もう!何で笑うんよー。」
なんて言ったつくしが笑い出す。
そんな俺たちを見て、邸の奴らも口元を綻ばせている。
タマは皺だらけの顔が、ますます皺だらけだ。
このダイニング、こんなに明るい雰囲気だったか?
いつも俺が一人で食っている時なんて、殺風景で音もねー。
つくしがいるってだけで、こんなに明るくなるのか?
ダイニングを明るくしたつくしは、自分の使った食器を厨房へ運ぼうとした。
そんなつくしを見て、邸の奴らが慌てて止めに入る。
邸の奴らは、客に皿を運ばせることなんてっつーので止めているのに─────。
「大丈夫ですよー。高そうなお皿なんで、気を付けて運びますね。」
なんて言ってるこいつ。
俺も思わず、コーヒーをふき出しそうになった。
皿の値段なんて、誰も気にしてなんかいねーよ。
あきらや総二郎が連れ歩いてる女たちと、違いすぎだろ?
邸の奴らがいくら止めても、つくしは食器を厨房へ運び、シェフたちにお礼を言いだした。
いつもは職人面しているシェフ達が、スゲー嬉しそうに笑いだす。
そんな邸の奴らやシェフたちを眺めながら─────。
つくしと結婚すると、邸はとこんな感じになるのか?
っつーことを、俺は想像してしまった。
お読みいただきありがとうございます。