八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

転校生つくしちゃん8

2022-09-25 08:00:00 | 転校生つくしちゃん

 

 

「アカンって!そんなん水着なんてよう見せへん。はずいし無理。道明寺にだけは絶対無理。」

牧野は必死になって言ってきた。

 

はずいのも、無理っつーのもマダわかる。

俺にだけは絶対無理っつーのは、どういうことだっ!

 

『なんで俺だけは無理なんだんよ?』

俺が聞こうとした瞬間─────。

大きく息を吸い込んだ牧野が、プールの中へ潜りこんだ。

 

俺も直ぐに潜りこむ。

潜りこんだ俺の姿を見た牧野は、焦ったように水中を泳ぎだした。

 

俺が牧野の細腰を捕え、水面に上がるまで時間は掛からなかった。

水面に上がると、このプールで1番深い所─────。

 

当然、背の低いこいつは足が足りねー。

牧野の浮き輪も、遠くで水面をユラユラと浮かんでいる。

 

俺から必死に逃げた牧野は、俺の胸に体を預け大きく酸素を求めた。

ラッシュガード越しに伝わってくる、こいつの肌の柔らかさ。

完全に力が抜けている牧野の体を支えるように、こいつの細い腰に回している腕に力を入れる。

 

俺は海パンだけで上半身が裸。

牧野はラッシュガードを着てるっつーても、水着なんてスゲー薄い素材だ。

やべぇ。

下半身に血液が集中するじゃねーかっ!

 

1分だったか、2分だったか…。

俺にとっては、それよりもスゲー短い時間だったと思う。

「ぎゃっ!!」

っつー色気のねー声をあげたこいつが、俺から離れようと腕を突っ張った。

 

 

と、同時に、俺はこいつの腰に回していた腕に力を入れた。

 

腕を突っ張りながら

「離してー。」

なんて言ってるが、無視。

 

っつーか、無理だ。

好きな女を、初めて抱きしめているんだぞ。

そんなに簡単に離せるわけねーだろ。

 

ジタバタと暴れているこいつが、突然止まって、素っ頓狂な声を上げた。

「あれ?えっ?道明寺やんなぁ?」

 

「あぁ。俺だ。」

俺の返事に、こいつは俺の髪に手を伸ばしてきた。

 

不思議そうに、俺の髪を触りだす。

 

そして、不思議そうに呟いた。

「髪の毛、クルクルちゃう。」

 

「天パだからな。水にぬれると真っ直ぐになるんだよ。」

俺の返事に、

 

「ふーん。そうなんや。そっちの方がイケメンやで。」

とてつもなく可愛くねーことを言ってきた。

 

俺がジト目で睨んでいると、

「へへっ。堪忍。」

笑いながら謝ってきた。

 

「あんな…。うち、泳げるしな。腕、外して?」

困ったような顔をした牧野はこう言って、キョロキョロと浮き輪を探しだした。

 

いつの間にか、浮き輪は静かに俺たちの近くに戻っていた。

牧野が、その浮き輪に手を伸ばす─────。

その直前に、俺は浮き輪を取り上げ放り投げた。

 

「ちょっ!なんでっ!ほるん?」

投げた浮き輪を目で追いながら、こいつは言ってきた。

 

「あんたいい加減にしーやっ。うちの浮き輪、勝手にほるなっ!そんで、腕、離して!」

俺の腕から逃れようと、体ひねりながらこいつは言い出した。

 

その薄い素材の水着で、俺の腕の中で動くなっ!

俺の脚にこいつの柔らけー脚が、俺の体にこいつの柔らけー体が触れてくる。

下半身が大変なことになっているのが、バレるじゃねーかっ。

 

それでも、この腕の中にいる牧野を手放したくねー俺は

牧野の腰に回している腕を引き寄せ、ますます牧野を強く抱き締めた。

 

「なぁ…、なんで俺に水着を見せられねーんだよ?」

俺がこいつの耳元で囁くと─────。

 

首をすくめたこいつは、小さく震えた。

耳、弱いのか?

もう一度、確かめようとした時─────。

 

困ったような顔で、こいつは言ってきたんだ。

「よぅわからん。でも、何か…。道明寺とおったら、楽しんやけどドキドキするし。変やねん。だから、水着なんか絶対にアカン。見せられへん。」

 

・・・・・。

俺といると、楽しいけどドキドキするって言わなかったか?

それって─────。

 

「だからっ!!もう限界。道明寺、離して!」

こう言った牧野は、離れようと両手で俺の胸を押してきた。

 

好きな女の願いでも、却下だろ?

俺の腕の中で、ほぼ告白みてーな事を言ってくれたんだ。

 

スゲー嬉しくなって、

「司って呼んだらな。」

なんて言ってみると─────。

 

「つ…かさ…。…離して。」

こいつは恥ずかしそうに、初めて俺を名前で呼んできた。

 

好きな女からの名前呼びってグッとくる。

離しては要らねーけどな。

 

「つくし、好きだ。」

俺もこいつを初めて名前で呼んで、俺の気持ちを言ってみた。

 

俺の告白に、こいつのデケー目がますますデカくなった時─────。

プールで冷えてしまったつくしの唇に、俺の唇を重ねた。

 

つくしはキスが終わるまで、デケー目を閉じることをしなかった。

身動き1つしねーで固まっている辺り、こいつのファーストキスに違いねぇ。

 

キスが終わった後、嬉しすぎた俺はこいつの口調を真似て言ってみた。

「『おおきに。』っつーんだろ?こんな時。」

 

そんな俺に、ソッコーで突っ込んでくるつくし。

「ちゃうちゃうちゃうちゃう!そんな所で『おおきに。』なんておかしいやんっ!うちのファーストキスやったのにぃ。」

 

やっぱ、牧野のファーストキスだっただろ。

嬉しさのあまり、俺は自分の頬が緩んだのがわかった。

 

 

 

 

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