俺が初めて目にする─────。
女の顔をしたつくしに、俺は何度もキスをした。
ぎこちないながらも応えてくれるつくしが、スゲー可愛い。
キスを深めようって時に、リビングのインターホンが鳴り響いた。
俺たちの初めて(俺の脱童貞)が、いよいよ始まるって時に誰だよ!?
無視だ。
一切無視だ。
これからって時に、誰だよっ!
邪魔すんじゃねー!!
しらけるじゃねーかっ!!!
つくしも気になるようで、視線は完全にリビングだ。
この時、再び、インターホンが鳴り響いた。
『ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン』
誰だよっ!!
イライラしながら俺がモニターを確認すると─────。
そこには、今までにも数回、インターホンを鳴らしたことがある唯一の男の姿が映っていた。
「なんだよ?」
最大級の不機嫌な声を出してみる。
【お迎えに参りました。】
こんな訳のわからねー西田の返事。
「迎えになんて来るんじゃねー!帰れ。俺は忙しいんだっ!」
すぐさま怒鳴ったが、西田からの返事は無かった。
この次の瞬間─────。
瞬間移動したかのような西田は、俺たちのリビングに入り込んでいた。
あ"?
なんでお前が俺たちのリビングにいるんだよっ!!
どうやって入ったんだ?
こんなことを思っている俺に、能面西田が言ってきたことが…。
「バカ面をされて突っ立っておられたら邪魔ですよ?奥様は玄関を開けて下さり、お茶の用意までしてくださっているというのに、本当に…。いつになったら即行動に移すことが出来るのですか?一分一秒を大切にしてください。一分一秒をバカにしていると、気付いた時にはオジですよ。」
だった。
なんで、俺がお前にバカ面まで言われねーといけねーんだっ!
しかも、一分一秒を大切にしねーとオジってなんなんだっ!!
能面の分際で、JK用語を使ってんじゃねー。
気持ちわりぃ。
つくしから受けとり、ちゃっかり茶を飲んだ西田は─────。
「会長と社長から、今日からなら大丈夫だと了解を頂きました。今から28日の夕方まで、司様はシンガポールへ久しぶりの出張です。」
こんなふざけたことを抜かした。
俺はそんなこと知らねーし、了解なんてしてねー!
なんで、親父とババアが許可してんだよっ。
っつーか、出張が決まっているなら、今日の仕事中に言っとけっつーんだ!
俺が頭を働かせている時に、横からうるさく言っている能面メガネ。
「早くパスポートを用意してください。邸のジェットはいつでも離陸可能です。出発が遅れると帰国予定の28日に帰って来られませんよ?」
28日?
なんで西田は、28日を強調したんだ?
・・・・・。
やべっ。
つくしの誕生日じゃねーかっ!
出張になんて行きたくねーけど、つくしの誕生日に間に合わねーのは嫌だ。
西田を睨みながら、俺は寝室へ向かった。
数分前まで甘い雰囲気だった寝室は、ただの部屋へ戻っていた。
クソっ!!
親父とババア、西田への殺意を抱きながら、スーツに着替え、パスポートを持ってリビングへ戻った。
そこには、茶を飲みながら楽しそうに話しているニヤケ面の西田と────。
頬を染め、恥ずかしそうに俯いているつくし。
最強にイライラしながら、俺はつくしの隣に座ろう―――――。
としたが、西田がムカつく笑顔を浮かべながら言ってきたんだ。
「さ、出発しましょう。」
俺にも座らせろっつーんだっ!!
いよいよって時に、まさかのインターホン。
来客は西田さんだった…。
道明寺は、来客である自分の秘書の西田さんをずっと睨みつけている。
そこまで睨まなくっても…って思ってしまうほど。
西田さんは、全く気にして無いようなんだけどね。
不貞腐れた道明寺が、今から西田さんと一緒に出張へ向かう。
私の初めては、延期になってしまったみたい。
少しだけホッとした。
でも、それ以上に勿体ないような、残念な気持ちになってしまった。
「では、牧野さん。失礼します。」
西田さんが、私に挨拶してくれた。
西田さんが、『牧野さん』って呼んでくれたことにホッとした。
『奥様』とか『つくし様』って呼んでくるんだよ。
いつかそう呼ばれる日が来るのかもしれないけど…。
それは、きちんと発表してからでお願いしますって言ったの。
そして、私は、もう一つ西田さんにお願いしていた。
見送る時に、少しだけ道明寺と二人きりにさせてくださいって…。
私から見る限り、西田さんの姿は完全にない。
西田さんは、私のお願いを聞き入れてくれたみたい。
道明寺は、完全に不貞腐れながら私に言ってきた。
「行ってくる。」。
だから、私は─────。
「行ってらっしゃい。気を付けてね。」
こう言った後、道明寺のネクタイを思いっきり引っ張った。
「おわっ。」
なんて言いながら、道明寺が前かがみになった瞬間─────。
私は道明寺の唇に自分の唇を重ねた。
触れるか、触れないかってくらいのキスになってしまったんだけど…。
私からする初めてのキス。
「待ってるね…。」
スゴク小さくなってしまった私の言葉に、道明寺が破顔した。
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