八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

まやかし婚183

2022-09-24 08:00:00 | まやかし婚(完)

 

 

俺が初めて目にする─────。

女の顔をしたつくしに、俺は何度もキスをした。

 

ぎこちないながらも応えてくれるつくしが、スゲー可愛い。

キスを深めようって時に、リビングのインターホンが鳴り響いた。

 

俺たちの初めて(俺の脱童貞)が、いよいよ始まるって時に誰だよ!?

無視だ。

一切無視だ。

 

これからって時に、誰だよっ!

邪魔すんじゃねー!!

しらけるじゃねーかっ!!!

 

つくしも気になるようで、視線は完全にリビングだ。

この時、再び、インターホンが鳴り響いた。

『ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン』

 

誰だよっ!!

イライラしながら俺がモニターを確認すると─────。

そこには、今までにも数回、インターホンを鳴らしたことがある唯一の男の姿が映っていた。

 

「なんだよ?」

最大級の不機嫌な声を出してみる。

 

【お迎えに参りました。】

こんな訳のわからねー西田の返事。

 

「迎えになんて来るんじゃねー!帰れ。俺は忙しいんだっ!」

すぐさま怒鳴ったが、西田からの返事は無かった。

 

この次の瞬間─────。

瞬間移動したかのような西田は、俺たちのリビングに入り込んでいた。

 

あ"?

なんでお前が俺たちのリビングにいるんだよっ!!

どうやって入ったんだ?

 

こんなことを思っている俺に、能面西田が言ってきたことが…。

「バカ面をされて突っ立っておられたら邪魔ですよ?奥様は玄関を開けて下さり、お茶の用意までしてくださっているというのに、本当に…。いつになったら即行動に移すことが出来るのですか?一分一秒を大切にしてください。一分一秒をバカにしていると、気付いた時にはオジですよ。」

だった。

 

なんで、俺がお前にバカ面まで言われねーといけねーんだっ!

しかも、一分一秒を大切にしねーとオジってなんなんだっ!!

能面の分際で、JK用語を使ってんじゃねー。

気持ちわりぃ。

 

つくしから受けとり、ちゃっかり茶を飲んだ西田は─────。

「会長と社長から、今日からなら大丈夫だと了解を頂きました。今から28日の夕方まで、司様はシンガポールへ久しぶりの出張です。」

こんなふざけたことを抜かした。

 

俺はそんなこと知らねーし、了解なんてしてねー!

なんで、親父とババアが許可してんだよっ。

っつーか、出張が決まっているなら、今日の仕事中に言っとけっつーんだ!

 

俺が頭を働かせている時に、横からうるさく言っている能面メガネ。

「早くパスポートを用意してください。邸のジェットはいつでも離陸可能です。出発が遅れると帰国予定の28に帰って来られませんよ?」

 

28日?

なんで西田は、28日を強調したんだ?

・・・・・。

やべっ。

つくしの誕生日じゃねーかっ!

 

出張になんて行きたくねーけど、つくしの誕生日に間に合わねーのは嫌だ。

西田を睨みながら、俺は寝室へ向かった。

数分前まで甘い雰囲気だった寝室は、ただの部屋へ戻っていた。

 

クソっ!!

親父とババア、西田への殺意を抱きながら、スーツに着替え、パスポートを持ってリビングへ戻った。

 

そこには、茶を飲みながら楽しそうに話しているニヤケ面の西田と────。

頬を染め、恥ずかしそうに俯いているつくし。

 

最強にイライラしながら、俺はつくしの隣に座ろう―――――。

としたが、西田がムカつく笑顔を浮かべながら言ってきたんだ。

「さ、出発しましょう。」

俺にも座らせろっつーんだっ!!

 

 

 

いよいよって時に、まさかのインターホン。

来客は西田さんだった…。

 

道明寺は、来客である自分の秘書の西田さんをずっと睨みつけている。

そこまで睨まなくっても…って思ってしまうほど。

西田さんは、全く気にして無いようなんだけどね。

 

不貞腐れた道明寺が、今から西田さんと一緒に出張へ向かう。

私の初めては、延期になってしまったみたい。

少しだけホッとした。

でも、それ以上に勿体ないような、残念な気持ちになってしまった。

 

「では、牧野さん。失礼します。」

西田さんが、私に挨拶してくれた。

 

西田さんが、『牧野さん』って呼んでくれたことにホッとした。

『奥様』とか『つくし様』って呼んでくるんだよ。

 

いつかそう呼ばれる日が来るのかもしれないけど…。

それは、きちんと発表してからでお願いしますって言ったの。

 

そして、私は、もう一つ西田さんにお願いしていた。

見送る時に、少しだけ道明寺と二人きりにさせてくださいって…。

私から見る限り、西田さんの姿は完全にない。

西田さんは、私のお願いを聞き入れてくれたみたい。

 

道明寺は、完全に不貞腐れながら私に言ってきた。

「行ってくる。」。

 

だから、私は─────。

「行ってらっしゃい。気を付けてね。」

こう言った後、道明寺のネクタイを思いっきり引っ張った。

 

「おわっ。」

なんて言いながら、道明寺が前かがみになった瞬間─────。

私は道明寺の唇に自分の唇を重ねた。

 

触れるか、触れないかってくらいのキスになってしまったんだけど…。

私からする初めてのキス。

 

「待ってるね…。」

スゴク小さくなってしまった私の言葉に、道明寺が破顔した。

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。