八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

転校生つくしちゃん4

2022-09-17 08:00:00 | 転校生つくしちゃん

 

 

「デケーのがあるんだよな、これが。」

こんな総二郎の声が、急に俺たちの後ろから聞こえた。

 

「司とつくしが見えたから、車から降りてきたんだ。」

あきらが説明してっけど…。

 

俺と牧野が見えたっつーんなら!!

気を利かせて、そのまま学校まで車で行けっつーんだ。

邸のプールに誘う、タイミングを逃したじゃねーかっ!

 

そんな俺の気持ちなんて全く気付いてねー牧野が、ニコって笑いながら挨拶をする。

「総ちゃん、あきらくん、おはよー。」

 

「つくしが司にお願いしたら、邸の庭に流れるプールでもデケー滑り台付のプールでも直ぐに作ってくれるんじゃね?」

こんなムチャクチャなことを言ってるあきら。

 

つくしは

「そんなアホな。」

なんて軽く交わしながら─────。

 

「冗談で聞いたのに、道明寺ん家ってホンマにプールあるんやなぁ。やっぱお邸なんやー。」

なんて言いながら驚いている。

 

あきらに言われたかららじゃねーが…。

俺、牧野からお願いされたら速攻で注文する自信アリ。

もちろん、そのプールは俺と牧野専用だけどな。

 

そんな俺の妄想より─────。

二学期に入って、俺には気になっていることがある。

夏休みに入った頃は、名字呼びだった牧野が、あきらを『あきらくん』、総二郎を『総ちゃん』と呼びだした。

 

類に至っては、花沢類からいつの間にか『類』呼びだ。

なんで類だけ名前呼びなんだよっ!!

俺なんて、ずっと名字呼びだっつーのに…。

 

きっかけは、俺が思うに総二郎の関西弁だ。

ガキの頃から、常に京都に出入りしている総二郎は、俺達とは違い京都弁をかなり使うことが出来る。

 

これに、牧野が喜んだ。

牧野的には『ま、ちょっと微妙やけどな。』らしいけど。

そんな微妙な総二郎と牧野は、関西弁トークで二学期に入り急に仲良くなっていた。

 

俺は、関西弁は全部同じとばかり思っていたが、地域によって発音に違いがあったり、言い方まで違うらしい。

関西の奴等はこの微妙な差だけで、どこ府県の人っつーのがわかることが多いようだ。

そして、その府県でも地域によって言葉や発音の違いがあるっていうから驚きだ。

牧野が言うには大阪でも、大きく分けて4つ方言があるらしい。

 

そして、俺がもう一つ気になっていることが─────。

あきら、総二郎、類による『つくし』呼びだ。

俺はいつまで経っても名前で呼べねーのに、なんでこいつらはいとも簡単に出来るんだ?

 

「じゃ、今から司の邸のプールに行くか?」

軽いノリの総二郎。

 

に、クソ真面目な牧野の返事。

「えっ?総ちゃん、今から学校やで。」

 

そうだよな。

俺たちが学校をサボることはあっても、

牧野がサボることはねぇ。

 

なんでも、牧野の家の母親は

『成績表の成績欄は自分の評価、出席日数欄は親の成績。』

っつーのを母親から教わったらしい。

 

牧野の母親の『出席日数は親の成績。』っつーのに、俺たち4人は妙に納得した。

俺たちの親の成績は、マイナスだからな。

 

そして、牧野の母親は、牧野と弟がガキの頃から呪文のように

『学校行きや。行きさえすれば、どないかなんねん。』

だとか、

『行かなべべ(最下位)になるで。』

と、唱えていたらしい。

 

「つくしー。お前は固すぎだ。」

牧野の頭をポンポンしながら、総二郎が言った。

 

牧野の頭を触るんじゃねー!

こんなことを思いながら、総二郎を睨んでいると─────。

総二郎が、目の奥で笑ったような気がした。

 

あ?

なんだ?

総二郎、何をする気だ?

 

咄嗟に牧野をガードしようと、俺が一歩前に踏み出した時─────。

後ろからあきらに羽交い絞めにされた。

 

!!!

おい、なにすんだっつー言葉は、あきらの手に遮られ言えなかった。

 

「つくしは、マジメ過ぎるんだよ。だから、いつまで経っても鉄パンなんだ。脱いだら楽だぞ。」

っつーことを、総二郎が牧野に言った。

 

そして、総二郎は牧野の肩に腕を回した。

 

!!!

おいっ!

牧野に触れるんじゃねー!

俺は総二郎を睨みつけた。

 

そんな俺を、総二郎は挑発するかのように見ながら、牧野の耳元に顔を近づけた。

 

!!!

クソっ!

牧野に近づきすぎだっ!!

 

総二郎が、牧野の耳元で口を開いた。

「俺の2日間の童貞、使ってみる?テクには自信アリ。」

 

総二郎!

お前はたった2日の童貞かもしれねーが、俺は正真正銘の歴史ある童貞なんだぞ。

 

あきらの羽交い絞めを突破し、総二郎と牧野を引き離そうと腕を伸ばした時─────。

牧野は自分から、総二郎の腕から離れた。

 

「そんなんいらんわ。総ちゃん、その内、刺されるで。病気に気つけやー。」

こんなことを、牧野はからかうように言った。

 

牧野の言葉に、嫌そうな顔をした総二郎。

そんな総二郎を見ながら、

 

牧野は嬉しそうに笑った後―――――。

「うちは、そんなんは無理や。出来ん。女の人の方がリスク高いからさ、そんなハイリスクなことは、むっちゃ好きな人とでないと無理や。」

って、きっぱりと言ったんだ。

 

牧野の言葉に、俺の動きが完全に止まった。

いや、全ての動きが止まった。

今さっきまで聞こえてた、セミの鳴き声すら聞こえなくなった。

 

お前の『むっちゃ好きな人』って誰なんだよ?

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。