八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

転校生つくしちゃん3

2022-09-15 08:00:00 | 転校生つくしちゃん

 

 

夏休みに入って数日─────。

俺は、どうしたら牧野と会えるのかってことばかり考えていた。

 

やっぱデート…だよな。

なんて言って誘ったらいいんだよっ!

 

そもそも、なんで夏休みがあるんだよっ!

それ自体が間違いだっ!!

 

俺は、らしくねーのもわかっていながら─────。

スマホをタップしては戻すっつーことばかり繰り返していた。

 

そのタイミングで俺のスマホからコールが響き渡った。

うぉっ!

クソ忙しい時だっつーのに、誰だよ?

 

こんなことを思いながら、スマホの画面を見てみると─────。

うぉっ!!

俺の心臓が跳ねあがる。

 

スマホの画面には間違いなく【牧野つくし】の文字。

 

どうしたらいいんだ?

バクバクしながらも、直ぐに出ると待っていたみたいか?

なんて思いながらも、俺はスマホをタップした。

 

牧野との通話が始まったっつーのに、なんて言ったらいいんだ?

「もしもし。」だとか、「はい。」なんておかしいだろ?

あいつらでもねーんだから、「なんだよ?」っつーのも変だ。

なんか気の利いた日本語はねーのかっ?

 

「・・・・・。」

せっかくの牧野のコールに応じたものの、まさかの無言状態。

 

『あれ、道明寺?繋がってんかな?もしもーし。』

ずっと聞きたかった牧野の声に、思わず顔がニヤける。

 

「おう。どうした?」

『どうしたんって、こっちが言いたいわ。』

 

「何かあったのかよ?」

『あったから電話してんや。』

 

『道明寺って、今、何してん?』

「あ?俺…は、俺か?」

 

まさか、お前をデートにどう誘うかを考えてたなんて言えねーし。

いや、いっそのこと今、言ってしまう方がいいのか?

 

『あんた、今、どこにいてん?』

「あ?俺か?邸にいる。」

 

『邸ってなに?』

「邸って邸だろ。」

 

『お家のこと?』

「あぁ、そうだな。家だな。」

 

『へー。あんたん家ってすごいんやな。お邸なんや。』

この牧野の返事で、邸に誘うか?なんて思ったのも束の間。

 

牧野は信じられねーことを言いだした。

『家にいてんやったら、学校おいでよ。』

 

あ?

家にいるなら学校に来い?

だと??

学校は夏休みじゃねーのか?

 

そんな俺の疑問は、牧野の言葉で一瞬にして消える。

『先生言うてたやろ。忘れたん?コロナでいつ学級閉鎖とか学年閉鎖になるかわからんから、7月中とは8月の最後は学校あるでって。進むだけ進みましょう言うてたやろ。』

 

・・・・・。

そういえば、あの薄幸そうな顔の担任が、そんなことを言っていたような気がしねーでもねー。

 

『思い出した?』

「あぁ。」

 

『じゃ、早よおいでよ。電話してもなー、花沢類は昼寝せなアカン言うし。西門くんは、夏やから一期一会に忙しい言うし。美作くんは、マダムと会うのは白昼が基本とか、訳分からんわ。昼寝はマダわかるけど、一期一会とかマダムと会うのは白昼っておかしいやろ?』

 

おいっ!

電話してもなーって、あいつらにも電話したのかよっ!!

なんで俺に掛けてくるのが、一番最後なんだ?なんて思いながらも…。

俺は直ぐに登校する約束をした。

 

あきらはマダム。

総二郎は一期一会。

類は昼寝。

っつーので、あいつらは、夏休み中に一度も登校することは無かった。

ま、俺たちは衛星(英才)教育を受けているから問題ねーけどな。

 

それが良かったのか、俺と牧野の距離が夏休みの間にスゲー近くなった。

盆の間は牧野も大阪に帰ったが、毎日のように電話やメールした。

登下校は常に一緒。

そして、クラスでも殆ど一緒に過ごしている。

周りからは、俺たちは付き合っていると思われているのかもしれねー。

 

正直、ちゃんと牧野と付き合いたい。

他の男に俺の女だと牽制したい。

でも、まだ告白もしてねー俺。

付き合う前に、あの言葉を聞いてみてー。

 

 

二学期に入ったからといって、急に涼しくなんかならねー。

片手にハンディファンを持ちながら、牧野が突然、暑さに文句を言いだした。

「むっちゃ暑いー。もうこんな暑いの嫌やー。」

 

確かに今年の夏はスゲー暑い。

毎日、普通に35度以上の気温が続く。

まるで、外国みてーな気温。

ただ、日本は湿度が高く蒸し暑いのがキツイ。

 

こんな暑い中、俺と牧野が徒歩で登校しているがスゴイだろ?

何度か『邸から車を出す。』っつーのに

 

『えー。そんなん悪いわ。そんな遠ないし、うち歩くで。道明寺、歩くのしんどかったら、あんたは車で来たらいいねん。』

なんて返されてからは、車の話はしてねー。

 

それどころか、朝はこいつのマンションの前まで迎えに行き、帰りはマンション前まで送っている。

それでなくてもこんなに細いこいつが、この暑さの中、歩いてウロウロしたりなんかしたら熱中症になるのが心配だろ。

 

牧野が、制服のブラウスの胸元をパタパタさせている。

その横で、俺は─────。

そのブラウスの胸元を見てーけど、見れねーのに悶々としながら…。

他の男の前でそれはするなって、念力を送った。

 

「ホンマ暑い。プール行きたいなぁ。」

牧野が呟いた独り言。

 

あ?プール?

邸に誘うか?

 

そんな時─────。

隣に歩いているこいつが、俺を見上げながら聞いてきたんだ。

「道明寺んちってお邸なんやったら、プールあるん?」

 

 

 

 

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