~西田side~
でもですね…。
私が、いくら司様の不幸を願っていたとしても─────。
若い男女が一緒に住んでいるのです。
司様にとっては、至福の時というのが何度かは訪れるのかと思っていました。
ですがっ!!
一発もっ!
失礼いたしました。
これは、私のイメージではありませんね。
全く何も無いことに、私は呆れてしまいました。
規則正しく、共同生活。
これは、違いますね。
清く正しく、共同生活。
どこかの学生寮の理念かと思うような生活を、お二人はしていたのです。
信じられますか?
お二人とも健全な20代ですよ。
それなのに、まるで老夫婦のような生活。
司様は日々の欲求不満でイライラしだし─────。
なんでも、自身の寝室のゴミ箱にすらゴミを入れられない生活を強いられていたようです。
西田に八つ当たりする日が増えました。
でも、大丈夫です。
私も皆様と同じです!
ムカつく上司が私生活でイライラしているのは、実に楽しい!
そして、笑えますね。
本当に笑っては賞与の査定に影響しますので、心の中で存分に笑ってください。
本当に、これこそ『ざまあ』状態です。
そして、あの契約書です。
あの契約書には、本来あるべきものが明記されていなかったことに気付かれた方はいらっしゃいましたでしょうか?
普通、契約書には、あらゆるリスクについて、対処法やリスクの分配について決定し記載しているものです。
ましてや、司様は、最初から牧野さんに興味を抱いていらっしゃいました。
しかし、私は、あの契約書には、《お互いの気持ち》に関しては、全く明記しませんでした。
そうです。
あの契約書は西田が、わざとそのように用意していました。
理由ですか?
それは、勿論!
司様の人生初めての恋に、この紙切れ一枚がどのような影響を与えるのを見る為です。
そして、司様がそれにいつ気付くのか?
気付いた時にどんな行動をとるのか?等も興味がありました。
しかし、西田が予想していたよりも、早く司様は気付きました。
これも、司様が少しは仕事をするようになった効果だったのでしょうか?
因みに司様は、あの当時─────。
契約書に印を押しサインするだけが、唯一のお仕事でした。
なので、契約書の内容を理解することも無理でした。
いえ、それよりも…。
司様は『甲乙丙』の十干を使うと、道明寺ホールディングスが甲なのか?乙なのか?それすら、わかってないようでした。
あの当時の、司様の主張としましては、
『なんで甲なんだ?甲なんて使わねーで、社名で書いた契約書にしてくれ。』
でした。
今は、十干も大丈夫となりました。
司様の仕事面や私生活に対して、私は、あらゆる思いを抱きながら、この一年、見守ってきました。
急な作戦変更もありましたが、どちらにしろ、私の最終目標は司様が不幸になること!!
ここだけはブレてはいけません。
なので、これからも皆様と一緒にお二人を見守っていきたいと思います。
さて、見守るなど言ったばかりではございますが…。
ボンクラは私の目を掠め、社内をフラフラとしてきたようです。
司様の考えていることは、ただ一つっ!!
昨夜のことでも考えて、ニヤニヤとしていたのでしょう。
会長と社長からの連絡によりますと…。
司様と牧野さんのお二人は、昨夜はお邸の司様の私室で過ごされたようです。
ま、あの気持ち悪いマヌケ面を見たら一目瞭然。
やっと、牧野さんと気持ちも体も通じたようです。
(=司様が粗略に扱われるようになる日も近いっ!どうか、一日も早くその日が来ますように!)
さて、ここからが私の腕の見せ所です!
とりあえずは、司様の楽しみを、徹底的に邪魔しようと思っております。
ボンクラのスケジュール管理をしているのは、この西田だという事を思い知らさなくてはいけません。
積年の恨みを、このような形で晴らすことが出来る日が来るとはっ!!
人生は、なんと素晴らしいのでしょうか。
踊りながら、歌を歌いたくなってきます。
そんなことより、さっさと仕事をしてもらわないと帰宅時間が遅くなります。
私の愛妻は二次にどっぷり嵌まりながらも、私の帰宅が遅すぎる、もしくは、連日遅くなると機嫌が悪くなります。
女性の心理というものは、本当に難しい。
ですが!!
あのボンクラの為に、私たち夫婦が険悪になってはいけないのです。
妻は二次を楽しみ、私は司様への復讐を楽しむ。
夫婦で別々のことを楽しむというのも、家庭円満の秘訣の一つなのでしょう。
それでは、この辺りで失礼し、私たち夫婦の為に、ボンクラには本日の業務に集中してもらうことに致します。
お読みいただきありがとうございます。