八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

転校生つくしちゃん7

2022-09-23 08:00:00 | 転校生つくしちゃん

 

 

怒りで体が震えだす。

そんな俺の耳に届いたのは、牧野の呑気な声。

「やっぱし痒いわー。熱持ってるし。私、ちっこい頃から虫に弱くて、噛まれたら直ぐ、こんな風に腫れてくんねんよなー。」

 

あ"?

こいつ、今なんつった?

ちっこい頃から虫に弱い?

 

俺は、一番重要なことを聞いてみた。

「お前、類に噛まれたっつーたよな?」

 

「なんでやねんっ!類が噛むわけないやろ。類の部屋で、虫に噛まれれたんや。」

こんなことを、俺をバカにしたかのように言ってくる牧野。

 

「虫は刺されるとか、食われるだろ?」

「蜂は刺すやけど、蚊は噛むやん。」

 

牧野は、当然のように言ってきたが─────。

紛らわしい事を言うんじゃねー!

だから、俺が勘違いしたんだっ!!

 

そうだよな。

類が俺を裏切るわけねーよな。

一瞬にして体の力が抜けていく。

 

俺は壁に寄りかかり、息を吐き出した。

自分がどれだけ緊張していたかっつーのが、よくわかる。

 

そんな俺を不思議そうに見ながら、

「なにしてん?怒鳴って疲れたんか?」

なんて言ってくるこいつ。

 

あぁ。

マジで気持ちが疲れた。

 

俺が黙っていると─────。

「しんどいん?」

心配そうに首を傾げながら聞いてくるこいつが、可愛くて仕方ねー。

 

俺が無言で首を振ると────。

「良かった。早よプール行こ。」

って言いながら、牧野は俺の腕に手を伸ばし引っ張ってきたんだ。

 

細いこいつが引っ張った所で、なんて思った。

が、その細腕に、どれだけ力があるんだよって思うような力で引っ張られた。

 

この瞬間─────。

牧野の力によって、俺の体が前のめりになる。

 

驚いた牧野のデケー目が、ますますデカくなる。

 

牧野にぶつかるっ!!

俺は全身の筋力を使って、体を制止した。

 

が、体は急に止まれねー。

牧野のデケー目が、これ以上ねーくらいデカくなった。

 

その牧野の瞳の中に、俺が自分自身の姿を捉えた時─────。

あと数センチでキスできそうな距離で、俺の体はピタリと止まった。

 

そうだよな。

好きな女との偶然のキスが、そんなに上手くいくわけねーよな。

 

惜しいような、悔しいような思いをしながら牧野を見てみると…。

「もう!早よ行くで。」

なんて可愛くねー口調で言ってるが…。

 

こいつの顔や耳は真っ赤で─────。

赤くなった顔を隠そうと俯いているからか、うなじが綺麗なピンク色になっていた。

 

俺の部屋で水着に着替えをさせ、プールへと向かう。

俺たちがプールサイドを歩きだした瞬間、

「つくし!ラッシュガードにハーフパンツとかありえねーだろ。色気が無い。ラッシュガードとハーフパンツは、脱いでこいっ!」

総二郎の怒鳴り声が、響き渡った。

 

確かにあきらや総二郎が連れてきた女たちとは、水着の面積が違うよな。

だからといって、面積の狭い水着なんて俺以外の男に見せたくねーし…。

 

「せやかて、恥ずかしいやん。」

困った顔をした牧野が、俺に助けを求めるような目線を送ってくる。

 

そして、あきらまでがダメ出しをしようと口を開けかけた時─────。

あきらと総二郎の視線を遮るように、こいつは俺の後ろに隠れた。

 

お前はなんでそんなに可愛いことをするんだよ。

庇護欲っつーの?

スゲー守りたくなる。

 

あきらと総二郎には、目線でそれ以上の追及を止めさせた。

こいつらの目的は、牧野の水着でもプールでもない。

そのうち、邸のどこかの部屋にしけこむはずだ。

 

その下準備中のあきらと総二郎は、女たちと際どいくらいイチャイチャしだした。

牧野は、恥ずかしそうに視界に入らねーようにしながら軽く準備体操をした後、浮き輪でプールを泳ぎだした。

 

しばらくすると、あきらと総二郎は、それぞれの女を連れて部屋へ向いだす。

そんなあいつらを、牧野はスゲー不思議そうに眺めていた

 

あいつらが邸に女を連れ込むなんて珍しくねーけど、こいつにとっては信じられねーことなんだろう。

 

プールには俺と牧野の二人きり。

なんとなく微妙な雰囲気だ。

 

この微妙な雰囲気を突破しねーといけねーよな。

俺が牧野の浮き輪を差しながら、

「泳げねーのか?ここは深いから、お前だと背が足りねーけど。」

言ってみると…。

 

「足、着かんでも泳げんで~。でも、プールで遊んだら眠くなるやろ。」

なんてガキみたいなことを言い出す牧野。

 

「眠たくなったら、さっきの部屋で寝るといい。帰りは車で送っていく。」

っつー、俺の言葉に、嬉しそうに子供のようにパーっと笑うこいつ。

 

さっきの部屋は、俺の部屋なんだぞ。

牧野の寝るタイミングで、俺も眠たくなるか?なんてことを秘かに思う。

 

牧野の浮き輪をひっぱたりしながら、二人で泳いだ後…。

俺は牧野に聞いてみた。

「なぁ。その下ってどんな水着なんだ?」

 

あいつらじゃねーが、やっぱ好きな女の水着は見たい。

俺だけが見てみたい。

 

それにこの浮き輪、さっきから邪魔なんだよ!

 

「普通の水着やで。」

「フツーってどんなんなんだよ。」

 

「教えへーん。」

「見せろ。」

「見せへんもーん。」

 

こんな可愛くねーことを言って、浮き輪を自由自在に使い俺から離れようとした。

 

そうはさせるかっ!

俺は浮き輪の動きを封じ込め、こいつのラッシュガードに手を伸ばした─────。

 

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。