本朝徒然噺

着物・古典芸能・京都・東京下町・タイガース好きの雑話 ※当ブログに掲載の記事や写真の無断転載はご遠慮ください。

おにぎり菓子

2005年10月23日 | 京都
祇園・一力茶屋の近くに「與市兵衛(よいちべえ)」というお店があります。
一見、お土産物屋さんのように見えるのですが、このお店はもともとお菓子屋さんだったのです。
どんなお菓子を売っているのかというと……「おにぎり菓子」です。
箱の中におにぎりと玉子焼をかたどったお菓子が並んでいて、見た目はまるで本物のお弁当のようなのですが、れっきとしたお菓子なのです。

與市兵衛のおにぎり菓子(外箱)

與市兵衛のおにぎり菓子(中身)

おにぎりは「おはぎ」のような感じのお菓子です。中のあんこももちろん自家製なので、甘さを抑えた軽い仕上がりです。
玉子焼は、卵黄と卵白をそれぞれふんわりと泡立てて、表面を軽く焼いているのです。まるで本物の「甘い玉子焼」みたいです。

この「おにぎり菓子」の由来は、店名からもわかるとおり「忠臣蔵」です。
芝居「仮名手本忠臣蔵」のなかでもとりわけ有名な七段目「一力茶屋の場」で登場する遊女・おかる。彼女は、夫・早野勘平の忠義心を支えるために祇園へ身を売ってきたのです。

五段目に登場するおかるの父親・与市兵衛は、身売りする直前の娘が心を込めて作ってくれた弁当を持って出かけます。しかしその道中で与市兵衛は殺されてしまうのです。
娘の心尽くしの弁当を食べないうちに命果ててしまった与市兵衛への手向けに、一力茶屋の近くでおにぎり形の菓子を売ったのが始まりで、それ以来祇園の名物となったそうです。

しかし、観光客向けの和菓子がたくさん登場してしまったからなのか、作るのに大変手間がかかるからなのか、今では限られた時期にわずかな数しか作られていません。
保存料なども使われていないので、あたたかい季節や夏場は作られません。9月に京都へ行った時にもお店でおにぎり菓子のことを聞いてみましたが、残暑が厳しかったためまだ作られてはいませんでした。

今回、さすがに10月も下旬なので作っているだろうと思い、行ってみました。日持ちがしないので、もちろん旅行の最終日にです。
売り切れてないかなあ……とドキドキしながら行ってみると、幸い、まだありました。
1つは、その後のプチ・オフ会でお会いする木下さんへのご挨拶がわりに、もう1つは自分のお土産用に買いました。
すると、何とちょうどその2つを包んでいただいたところで、玉子焼のお菓子がおしまいになったとのこと。ギリギリセーフでした。本当にラッキーです。
まだお昼をちょっと過ぎたくらいの時間だったのに、もう売り切れてしまうとは……まさに「幻のお菓子」です。

このお菓子は京都の方の間でも今はほとんど知られていないそうで、めずらしいと喜んでいただけたのでうれしかったです。

祇園の「與市兵衛」さんには、この丹誠込められた素晴らしいお菓子を、これからもぜひがんばって作り続けていただきたいなあ……と思います。



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ごちそうさまがいいたくて! (underwood@kyoto)
2005-11-23 20:23:34
その節は楽しいオフでした。それにこの和菓子は初めて頂き、そんなん知らなかった~と。これからここを通った時にはよってみます。



ところで、今日と今週末が紅葉狩りin京都のピークでしょうね.凄い人出です。ひとに酔いそうなほどですよ。来て頂けるのはありがたいのですが、お宿がない。でも、オフシーズンもあるので、これぐらいのキャパにしておかないとしかたがないんでしょうね。



私は仕事で行った青森で、一足早く弘前公園で紅葉狩りをしてきました。



暮れのお越しをお待ちしています、またお会いしましょ.ご遠慮なくお声を掛けてください。

返信する
こちらこそありがとうございます! (maikoplasma)
2005-11-24 00:57:38
underwood@kyotoさま



こちらこそ、その節は、楽しいお話とおいしいお茶を本当にありがとうございました!



京都はちょうど紅葉の見ごろを迎える時期ですね~。これまでに数回この時期の京都へ行ったことがあるのですが、すごい人出ですよね……。それでもやっぱり、美しい紅葉が目に焼き付いて「また行きたいなあ」と懲りずに思ってしまいます(笑)。



弘前公園、素敵ですね~! 東北の紅葉も、きっと美しいのでしょうね。紅葉はほんとに、東京の都心ではなかなか美しく色づかないので悲しいです(涙)。



年末が近づき仕事でバタバタとしている日々ですが、次回上洛の日を心の支えにして(笑)頑張っております。



今後ともどうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m
返信する