春たけなわである。
そういえば、あの東大のお嬢さんはどうしているだろう?
今日は彼女に会いにいってみよう。
私は本郷に向かった。
数年前、東大の校内を歩いていて、私は一本の椿に出会った。
その風情、楚々としたその姿に、三四郎の時代の深窓の令嬢が現れたような気がしたのである。
東大のお嬢さんは乙女椿だった。
当時、椿の種類にあまり関心がなく、枝ぶりの美しさばかりに気をとられていたのだが・・・・。
気がつくと、すぐそばにもう一本器量良しの妹がいた。
ちょっとやんちゃな感じがするが、こちらもなかなか。
乙女椿はあまり好きではなかったが、改めてその良さを知らされたような気がした。