モラルハラスメント・ブログ

モラルハラスメントな夫と壮絶なバトルの末離婚した二児の母のブログ☆モラハラブログリンク集もあります☆

第二回調停11~夫の横顔~

2006年11月06日 02時24分50秒 | 離婚調停
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「先生、いろいろと、申し訳ありませんでした。」

私は車に乗り込むなり、そう言った。
エンジンをかけ、ゆっくりと車を走らせる。

「いやいや、仕事やからね。いいのいいの。」

先生が鼻で笑う。

「先生いよいよ二回目、ですね。
今日は、もし夫が相変わらずだったら、不調になるんですよね。」

私が先生に最初に声をかけたのは、その言葉だった。

「うん、不調になるというか、不調にするのよ。」

「そっか・・・調停で離婚したかったけどなぁ・・・」

先生は黙って外を一瞬見て、言った。
その日の空は、灰色で、今にも泣き出しそうな色をしていた。

「そうね、思ったより手強い相手だったわね。」

駅から家裁までは歩くと10分だから車だと5分もかからなかった。
前回の調停のあと、先生とランチを食べた店の前を通り過ぎた。

「今日はじゃ、どっちかというと手続き、みたいな感じになりますか?」

「ふふっ、そうねぇ。だって、何も相手が歩み寄ってないし、
ここ2~3日で怖気づいて、何か譲ってくるようにも思わないしね。
どっちかというと、気が変わってくれたらって思っているのは、
あっちの方なんじゃないの。
どこまでいっても、まっち~さんが甘えさせてくれるって勘違いしてる節があるからね。
どんな手を使えばまっち~さんにもう一度甘えさせてくれるんだって感じあるからね。
それに・・・」

この頃に家裁の駐車場に突入した。
先生は続けた。

「それに、なんですか。」

私はエンジンを切り、尋ねた。

「それに、まだ彼としては、ゴネ足りないんじゃないの。」

「ゴネ足りないとは?」

「だから、このネタでもっとチャンチャンバラバラしたいって、
そう思っている気がするなぁと思って。」

「・・・・・。」

黙って二人で車を降り、黙ったままエレベーターのボタンを押した。
私は、一度目の調停のときの高揚した気持ちは全くなく、
どんよりとのしかかる諦めとやるせない気持ちに押し潰されそうな気分だった。

ピンポーンと高い音を立ててエレベーターが階に到着した。
前回は夫が先に来ていると思うと、
廊下でばったりと会ったらどうしようという思いで
頭が一杯になり、ピリピリと緊張が走ったものだったが、
もう慣れたもので、ちらりと「そりゃ来てるわな。」と思うのみだった。

待合で待っていると、10時半より少し早くに、
事務官が私達を見つけて呼びに来た。

「はい、行きます」

と先生が返事をして立ち上がったとき、
待合の入り口の向こうを夫が通り過ぎた。
咄嗟に先生が、私を隠すような素振りをして、
私は隠れるどころかその場で息を止め、カチンコチンに固まった。

「・・・・・。」

夫は、こちらに気付かぬまま通り過ぎ、だから
何も起きなかったわけだが、
その、ほんの一瞬チラリと夫を見た瞬間は、
私を驚くほどに動揺させた。
私はへなへなと、その場に座り込んでしまった。

「大丈夫ですか!!」

事務官が叫び私の腕を掴んだ。
先生が気を使って、男性の事務官の手をそっと払いのけ、
右手を私の背中に手をやって、左手を脇に入れて私を起こした。

心臓が高鳴り、目がチカチカとした。
カーッと血の気が頭に上ったり、逆にさあっと下がったりした。
全く予期していなかったから、呼吸さえも苦しくなった。

「大丈夫ですが、なぜ相手方がこちらを通るのですか!!」

「あ、いや、反対側には行かないように言ってあったんですけど・・・」

「相手方はDV加害者ですから、もっとちゃんと、配慮して欲しいものですね!
彼女の顔色を見てくださいよ。」

「はい、すみません・・・トイレか何かを探していたのでは・・・」

「いやいや、どういう理由であれ、ですよ。
鉢合わせて家裁内で事件にでもなったら大変でしょう!」

待合に居た他の人の視線がこちらに集中していた。
私は落ち着きを取り戻し、途端に早くそこから離れたい気持ちで一杯になった。

「・・・あっ、先生大丈夫です。ごめんなさい。」

先生が心配そうに私を見た。

「すみません、こちらです。」

事務官がもう一度私達を促した。

久しぶりに見る夫は、さらに少し痩せて、
顔色は茶褐色というより土気色をしていた。
三白眼の瞳は、鋭い眼光がさらに鋭さを増していた。
髪はいつもそうだったように、
短く刈りそろえられていた。
三週間に一度は必ず散髪に行き、
髪を短く刈りそろえるのが彼流の美学だった。
「軍隊はなんで丸坊主にするか知っているか。」
彼はよく私に尋ねた。
何度も聞かれているから答えは知っているに決まっている。
「うんうん。」
答えは知っているのに夫は決まって続けて言った。
「彼らはなぁ、闘争心を高いところにキープするために、
髪を短く揃えて置くんや。男性ホルモンの関係や。」
「うんうん。」

あの家のリビングで同じ会話を何十回しただろうか。
何十回話しても、同じネタを振って来る、
それのなんと多い間柄だっただろうか。
あの鍛え抜かれた首筋を思い出す。
何を話しかけても、
怒りがいっぱいで、
無言に震えていたあの首筋を、
いつも私は夫の肩越しに見つめていた。
背筋がぞくっとして、硬直した。

そんな状況で私は、先生に引きずられるようにして、調停室に入った。
当然に私は呆然としたままだった。

「おはようございます。よろしくお願い致します。」

先生がよく通る高い声で挨拶して、先に奥の席に座った。
私は横で、ぼそぼそと

「よろしくお願いします・・・」

と続けた。

「今そこで相手方に鉢合わせましてね、
事務官の方にクレームつけたところだったんですよ。」

「そうでしたか。」

左側に座っている、男性の調停委員が言った。
右側の女性調停委員は、私の顔をじっと見ていた。
第一回の調停と、全く同じ面子が同じ順番で正面に座っていて、
また同じ位置に、眼鏡の調査官が座っていた。
調査官は私が彼を見ると、わざと目を逸らし何もない窓の方向である、
真正面を見た。そのまま視線を固定している。

「今ご主人と話しましたがね。
ご想像の通りといいますか、
離婚には応じないって、一点張りですね。」

男性の調停委員が絞り出すように言った。
部屋に一瞬、冷たい空気が通り過ぎた。
誰もがしんと黙ってしまうそんな瞬間だった。

「コンピについては、一度も支払いなしですよね。」

女性の調停委員が確認する。
先生が刺し込むような口調で言う。

「はい、前回の宿題としてコンピは支払うということでしたが、
この二ヶ月間先方はあれこれあれこれ理由を付けて支払い拒否ですわ。
一度たりとも一銭も支払いなしですわ。」

「ここでは、相手方から、奥さん側から、
金額の提示がなかったから支払えなかったって言ってましたけどね。」

と男性の調停委員。

「はい、二ヶ月間一度もね。」

と先生。
先生は続けた。

「相手方は離婚については何と言ってましたか、それからメンコウの件と。」

「離婚は、自分は子供と妻を愛しているし今でも家族と思っているから
絶対に何があっても応じられない、と言っていました・・・。」

(絶対に、何があっても応じられない・・・
これはどこかで聞いたフレーズだな・・・)
私はぼうっと調停委員の話を聞きながら思い、少しして気付いた。
(そうだ、私が、「絶対に、何があっても私は復縁しない」って
先生を通して夫に言ったんだ・・・
そのフレーズをそのまま返すって、そういうことなんだ・・・。)

夫がほくそ笑んでいる。
私にを見下ろして勝ち誇ったかのように。
「オマエのセリフ、オマエにそのままノシつけて返したるわ!!」

男性の調停委員が続けた。

「それからメンコウの件は、彼女は子供たちに自分のことも
義父母のことも会わせてくれないと、
だからコンピは支払えないと、言ってました。
それから父親の権利として、
当然面接交渉の調停を申し立てるつもりだと、言ってました。」

軽いため息を、ちゃんと全員に聞こえる音量で、先生が吐いた。
と、同時に、私と夫の、事件ファイルをパタリと閉じた。

「話にならないですね。」

「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」

静寂を破ったのは、例の調査官、だった。

「あの、よろしいでしょうか・・・。」



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5 コメント

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この時間に (T.K.)
2006-11-06 03:34:50
おはようございます。
いつも拝読させていただいております。

お話、佳境に入ってきましたね。
まさかこんな時間に更新は無い、と思いつつ
チェックさせていただいたら入っていましたので
驚きました。

内容が内容ですのでフラバなさっていませんか。
無理なさらないでくださいね。

何時に寝てもこの時間の前後には、必ず目が覚める
癖が付いてしまいました。
別居から1年以上経ちます。夜中に怒鳴り声で起こされ
挙句に殴られ警察を呼んだ事、思い返すことは少なく
なったのですが、その時間が刻み込まれてしまって
いるのでしょうか。

調停不調の話も、自身の事と重なります。
当方は、正に最悪のパターン、代理人をつけずに
調停に臨み、二次被害を散々浴び、よろよろになって
代理人を依頼し、今訴訟の最中です。期日が近づくに
つれ心が逆立ってくるのが自分でも良くわかります。
超ポーカーフェイスで第三者にはまったく判らない
らしいのですが、身内には・・・

早くこれから先の事を考えられる様になりたいです。
返信する
相変らずの (norisio)
2006-11-06 17:53:19
様子で、完璧な嫌がらせもしっかりやってくれたんですね。
しかも嘘まで・・・。支払い金額を提示されないからって、それ以前に面会させないなら払わないとハッキリ言ってるのに。ああ言えばこう言うですね、ホント。
調査官は何を言ったんでしょう。続きが物凄く気になります。
返信する
自分の時の事を思い出しました (ふうふう)
2006-11-06 20:09:33
おひさしぶりです。(でもずっと拝読しておりました・礼)
私も初回の家裁で、元夫とばったり会ってしまいましたよ(苦笑)
視線は合わせませんでしたが、平静を装って自分の控え室にたどり着くまで生きた心地がしなかった事を久しぶりに思い出しました。
まっち~さんのモラ(と呼ばせていただいてよろしいでしょうか?)と比べれば、ちゃちい小物(毒)でしたが、”追いかけて来られたらどうしよう!?”と、とても怖かったのですから、まっち~さんのショックはどれほどであったか・・・(涙)

モラさんが、いっそうお痩せになっていたのは、やはりまっち~さんという「寄生元」を失ったからでしょうね。
本当に離れられてよかった!

あ、あと調査員の言う事・・・・
この期に及んでまだ空気読めない戯言を垂れ流す予感バリバリなんですが!
返信する
モラと離婚しました ()
2006-11-06 22:56:02
昨年からモラとの別居に踏み切り、ようやく離婚致しました。このブログには本当に本当に深く感謝しています。

ずっと読み専門で覗かせて頂いていました。私自身14年間もの間、モラ&DV環境の中で暮らしていましたので、抜け出るのに大変時間がかかりました。

でも、抜け出て自分の人生を手に入れることが出来たのです。本当に本当に肩の荷が下りて、生きている実感がします。思っていたより抜け出た後の世界は怖くなかったのです。

お金もないし、安定した生活もない、約束された物は何もないんだけど、自分の人生は捨てたものじゃなくて、これから作っていけば良いんだと☆

昔は猛獣と怯えながら暮らしていたけれど、今はほえている猛獣をオリの外から眺めて、人ごととして見ていられます。

同じ様な思いをして苦しんでいるみなさん。
まずはモラから一歩離れてみて欲しい。きっと深く深く話をすれば理解してくれる人は必ず居ると思います。諦める前に、一歩踏み出してみよう!幸せになろう!

返信する
一番会いたくない時 (にゃりんた)
2006-11-07 13:21:51
だったでしょうに・・・。
ちらっとでも見てしまうと、動揺してしまうのって良くわかります。
私は協議ですから、色々と話し合うのは自分でしなければならなかったのですが、両親がいてくれて私の盾になってくれていたので、とても助かりました。
でなければ色々言われて離婚自体出来なかったかもと思います。
・・・調停員さんは何を言うのでしょうか・・・。
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