↓一人でも多くの方にモラハラを知っていただきたくて、リンクを貼りました。
暖かい、春の陽射しの中、
あの大きな家の大きな庭に出て、
芝生の上でけい太を遊ばせて、お腹の中のなつみに話しかける私。
白い壁と白いタイルに、天板が全部白の、
アメリカンなキッチンに無垢の床。
赤いホウロウのヤカンから立ち上る湯気。
オーブンから洩れるバターの焼けた香ばしい匂いと混ざる、
大好きな紅茶の匂い。子供たちとママ友たちの笑い声。
夏、笑顔で、大声で子供たちと子供プールではしゃぐ夫。
ぬれた体をろくに拭かずに、
犬三匹のようにリビングでじゃれあって三人で笑っている。
それを見て、心の底から幸せで、微笑む私。
冬は外壁にクリスマスの装飾をして、寒空の下子供たちと三人で見上げた。
クリスマスツリーには手作りのリースをたくさん飾って、
クリスマスは大きな大きなケーキを焼いて、皆でデコレーションして祝った。
生クリームの優しい匂いと、洋酒のさわやかな匂い。
正月の実家の和室。豪華な食材を並べて鍋をした。
暖かなカニや牛肉の匂いの湯気があちらこちらから立ち上り、
親戚達の笑い声が響いた。
初詣の甘酒の湯気・・・
空手の道場での初稽古での炊き出しの湯気・・・
夫との結婚生活の、暖かい側面、暖かい思い出。
それらはリアルに瞬時に、浮かび来る思い出ばかりだった。
きっと辛いとき、一生懸命いいことばかり思い出そうと、いいこと探しをして、
そういう訓練を積んでいたからだろう。
いいことはすぐにたくさん、いつでも、リストアップできた。
こうして匂い付き、ビジュアル付きで、思い出すことができた。
それらへの、息苦しいほどに焦がれる想いに、
何度、気持ちを惑わされただろう。
夫と生活していたときも、別居してからも。
少ないけれど、あんなにいいことも、楽しいことも、
嬉しくて泣いたことも何度もあったのに、
本当に終りにしてしまっていいのかという思い。
「美しい思い出」への執着。
その執着に、何度苦しめられたことだろう。
その暖かい多くの思い出たちをすべて未練なく、
ばっさり切り捨てて、
両手に抱えて、火中に投じようとしている。
今真冬の、この冷たい調停室の中で、
私は結婚生活のすべてを全力で終わらせようとしている。
執着した、「美しい思い出」の暖かさと、今のこの凍りつくような冷たさと、
その温度差を思い、
その時私は背中から、すうっと醒めた気がした。
辛かったことも、楽しかったことも、もう、今となっては、
すべてが夢のようで、なかったことのようだと思った。
涙は、失せていた。
もう一度、どうしても、言わなきゃいけない。
伝えて欲しいことがある。
「裁判で決着する、でいいね?」
と先生に言われ、
「はい」と言ったその後、まるでセリフを言うように、
私はすらすらと吐き出した。
「夫に、・・・伝えて下さい。」
「婚姻費用については、そちら側の義務ですから、どんな方法を使っても、請求し続けます。と。」
男性の調停委員が、調査官を促し、調査官がメモを取る。
「面接交渉については、離婚する前については、親権が確定していないため、
略取の危険性から、検討できません。と。」
「それから、夫とのやり直しについては、絶対に何があってもありませんと、強く伝えて下さい。
私は、戦いたいのではなく、終わらせたいのだと、強く、伝えて下さい・・・」
私はそこで立ち上がり、深々と調停委員達に向かって、お辞儀をした。
そう、戦いたいのではない・・・
静かに静かに、終わらせたいのだ・・・
もう、争いごとなんて、ごめんだ・・・
「申立人の意向としてはこういうことですから、
弁護士としても次のステップを考えていると、
裁判を考えていると、伝えて下さい。」
山口先生が、冷淡に言い放った。
熱い先生が、冷たく切りつけるような、ナイフのような声で短く言った。
男性の調停委員は、重苦しい表情だったが、納得をしているように見えた。
女性の調停委員は、諦めにも似た、けれど私に対して同情的な表情だった。
調査官は相変わらず、無表情で一点を見つめたままだった。
男性の調停委員が言った。
「わかりました。必ず伝えて、また戻ってきます。少しお待ち下さい。」
少しなんだ、と思った。
夫の意見は一度聞いたから、私の意向を聞いた上での説得はしないんだなと思った。
三人が重い足取りで出て行った。
「・・・お疲れさん。辛かったんじゃない・・・今日は。」
二人きりになった瞬間、山口先生が私の左肩をトン、と叩いた。
「あっ、すみません、泣いたりしてしまって・・・」
「いや、調停ではね、よくあることよ。
よく冷静に頑張っているほうだと思う。」
「・・・・そうですかね・・・恥ずかしいですわ・・・」
「さっきの・・・あの・・・まっち~の心の叫びというか・・・
私も泣きそうになったわ。
やばかったわ。弁護士が調停で泣いてる場合じゃないっつーの。
いや、よく思っていること、言えたよ。」
「興奮してたから、何言ったんだか・・・
でも、みんなに、「別居延長したら?」って説き伏せられているようで、
なんだかすごいすごい悔しくて・・・」
「うんうん、わかるよ。
でもね、あの時、私が決めちゃいけないって、
先生が決めたからって言うんじゃなくて、自分で決断して欲しかったんだわ。」
「はい、お陰で、腹が決まりました。
裁判でいいねって、もっと早い段階で言われていたら、
裁判でよかったのかな、と思うこともあったかも知れない。」
「なんか、すっきりした顔、してるよ。」
「はい、なんだか、すっきりしました。
離婚できた気分ですわ!っていうか、気持ちの上で、やっと、
私は離婚できたのかも知れない。」
そんな話をしていると、
「コン・コン」
ノックの音がして、三人が再度入室した。
男性の調停委員が、さばさばとした表情で、
「相手方に、ご意向を伝え、やむなしということになりました。
ついては、不成立ということで、不成立調書を作ります。
それでよろしいですね?」
私が先生の方を見ると、
先生が、
「はい、お願いします。」
と言った。
「それでは、裁判官と、協議の上、不成立調書を取ってきます。
しばらくお待ち下さい。」
三人がもう一度出て行った。
極めて事務的に、まるで先ほどまで何もなかったかのように、
淡々としたものだった。
「不成立調書、って何ですか?」
「うん、裁判するためにね、調停する必要があるって言ったよね。」
「はい。」
「調停が不調になったら、裁判する可能性があれば、手続き上、
不成立調書を取っておくんよ。
調停したけど、調停で協議したけど、ダメでしたってことね。
埒アカンかった、ってことね。
それを裁判官が認めたものを「不成立調書」ってことで、取っておく。
その書類が、裁判を申し立てるときに、必要になってくるのよ。」
「へえ、「不成立調書」のない調停の終り方って、逆にあるんですか?」
「だから、コンピとかメンコウだけ決めて、調書を作って、
そこで終わらせたら、不成立調書はできないわね。」
「へえ!」
「それとお互い話にならないけど、裁判までは・・・と思っていて、
取り下げた場合は、不成立調書は取れないわね。
もう一度、時間を置いて、調停したい人なんかはこっちね。」
「なるほど。」
気持ちがさばさばしていたので、そんな事務的な話を先生としていた。
そこにまた例の三人がノックして入室した。
いよいよ、涙の調停が、終わる。
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それを見て、心の底から幸せで、微笑む私。
冬は外壁にクリスマスの装飾をして、寒空の下子供たちと三人で見上げた。
クリスマスツリーには手作りのリースをたくさん飾って、
クリスマスは大きな大きなケーキを焼いて、皆でデコレーションして祝った。
生クリームの優しい匂いと、洋酒のさわやかな匂い。
正月の実家の和室。豪華な食材を並べて鍋をした。
暖かなカニや牛肉の匂いの湯気があちらこちらから立ち上り、
親戚達の笑い声が響いた。
初詣の甘酒の湯気・・・
空手の道場での初稽古での炊き出しの湯気・・・
夫との結婚生活の、暖かい側面、暖かい思い出。
それらはリアルに瞬時に、浮かび来る思い出ばかりだった。
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こうして匂い付き、ビジュアル付きで、思い出すことができた。
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何度、気持ちを惑わされただろう。
夫と生活していたときも、別居してからも。
少ないけれど、あんなにいいことも、楽しいことも、
嬉しくて泣いたことも何度もあったのに、
本当に終りにしてしまっていいのかという思い。
「美しい思い出」への執着。
その執着に、何度苦しめられたことだろう。
その暖かい多くの思い出たちをすべて未練なく、
ばっさり切り捨てて、
両手に抱えて、火中に投じようとしている。
今真冬の、この冷たい調停室の中で、
私は結婚生活のすべてを全力で終わらせようとしている。
執着した、「美しい思い出」の暖かさと、今のこの凍りつくような冷たさと、
その温度差を思い、
その時私は背中から、すうっと醒めた気がした。
辛かったことも、楽しかったことも、もう、今となっては、
すべてが夢のようで、なかったことのようだと思った。
涙は、失せていた。
もう一度、どうしても、言わなきゃいけない。
伝えて欲しいことがある。
「裁判で決着する、でいいね?」
と先生に言われ、
「はい」と言ったその後、まるでセリフを言うように、
私はすらすらと吐き出した。
「夫に、・・・伝えて下さい。」
「婚姻費用については、そちら側の義務ですから、どんな方法を使っても、請求し続けます。と。」
男性の調停委員が、調査官を促し、調査官がメモを取る。
「面接交渉については、離婚する前については、親権が確定していないため、
略取の危険性から、検討できません。と。」
「それから、夫とのやり直しについては、絶対に何があってもありませんと、強く伝えて下さい。
私は、戦いたいのではなく、終わらせたいのだと、強く、伝えて下さい・・・」
私はそこで立ち上がり、深々と調停委員達に向かって、お辞儀をした。
そう、戦いたいのではない・・・
静かに静かに、終わらせたいのだ・・・
もう、争いごとなんて、ごめんだ・・・
「申立人の意向としてはこういうことですから、
弁護士としても次のステップを考えていると、
裁判を考えていると、伝えて下さい。」
山口先生が、冷淡に言い放った。
熱い先生が、冷たく切りつけるような、ナイフのような声で短く言った。
男性の調停委員は、重苦しい表情だったが、納得をしているように見えた。
女性の調停委員は、諦めにも似た、けれど私に対して同情的な表情だった。
調査官は相変わらず、無表情で一点を見つめたままだった。
男性の調停委員が言った。
「わかりました。必ず伝えて、また戻ってきます。少しお待ち下さい。」
少しなんだ、と思った。
夫の意見は一度聞いたから、私の意向を聞いた上での説得はしないんだなと思った。
三人が重い足取りで出て行った。
「・・・お疲れさん。辛かったんじゃない・・・今日は。」
二人きりになった瞬間、山口先生が私の左肩をトン、と叩いた。
「あっ、すみません、泣いたりしてしまって・・・」
「いや、調停ではね、よくあることよ。
よく冷静に頑張っているほうだと思う。」
「・・・・そうですかね・・・恥ずかしいですわ・・・」
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私も泣きそうになったわ。
やばかったわ。弁護士が調停で泣いてる場合じゃないっつーの。
いや、よく思っていること、言えたよ。」
「興奮してたから、何言ったんだか・・・
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「うんうん、わかるよ。
でもね、あの時、私が決めちゃいけないって、
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裁判でいいねって、もっと早い段階で言われていたら、
裁判でよかったのかな、と思うこともあったかも知れない。」
「なんか、すっきりした顔、してるよ。」
「はい、なんだか、すっきりしました。
離婚できた気分ですわ!っていうか、気持ちの上で、やっと、
私は離婚できたのかも知れない。」
そんな話をしていると、
「コン・コン」
ノックの音がして、三人が再度入室した。
男性の調停委員が、さばさばとした表情で、
「相手方に、ご意向を伝え、やむなしということになりました。
ついては、不成立ということで、不成立調書を作ります。
それでよろしいですね?」
私が先生の方を見ると、
先生が、
「はい、お願いします。」
と言った。
「それでは、裁判官と、協議の上、不成立調書を取ってきます。
しばらくお待ち下さい。」
三人がもう一度出て行った。
極めて事務的に、まるで先ほどまで何もなかったかのように、
淡々としたものだった。
「不成立調書、って何ですか?」
「うん、裁判するためにね、調停する必要があるって言ったよね。」
「はい。」
「調停が不調になったら、裁判する可能性があれば、手続き上、
不成立調書を取っておくんよ。
調停したけど、調停で協議したけど、ダメでしたってことね。
埒アカンかった、ってことね。
それを裁判官が認めたものを「不成立調書」ってことで、取っておく。
その書類が、裁判を申し立てるときに、必要になってくるのよ。」
「へえ、「不成立調書」のない調停の終り方って、逆にあるんですか?」
「だから、コンピとかメンコウだけ決めて、調書を作って、
そこで終わらせたら、不成立調書はできないわね。」
「へえ!」
「それとお互い話にならないけど、裁判までは・・・と思っていて、
取り下げた場合は、不成立調書は取れないわね。
もう一度、時間を置いて、調停したい人なんかはこっちね。」
「なるほど。」
気持ちがさばさばしていたので、そんな事務的な話を先生としていた。
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「やさしさ」と「冷たさ」の心理―自分の成長に“大切な人”を間違えるなPHP研究所このアイテムの詳細を見る |
↓次に買いたい本
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モラの厄介なとこは、優しく楽しかったり、良いところもあることですね。
まっち~さんのブログを読んで、私が夫から離れることが出来なかった理由が、わかった気がしました。
幸せな家庭。喧嘩ができる(言いたいことを言い合って認めあえる)、笑顔のある家族。
ただ普通の生活が欲しかっただけなのに。
これって欲張りなんかじゃないですよね。
まっち~さん、本当に辛かったですよね。
私は今まさに、思い出達に押し潰されそうです。
なんだか、残酷な話ですね。
モラハラの残酷さはこういうところにもあるんですね。
そしてそんな辛い迷いがあるきっとモラの奴らは気付かないのかもしれないですね。
自分の痛みにばかり熱中しているから。
でした。すみません!
離婚も、本当ならしたくない。
でも、どうしても仕方ないとき、取るべき方法は、
①話し合って離婚。
②調停で離婚。(モラの場合、話し合いが成り立たない。これでも「円満解決」のハズ)
③…裁判で離婚。(強制的に、離婚)
「離婚する」という事実に直面するだけでも、相当なエネルギーを感じます。
しかも相手がモラの場合、時には罪悪感、時には二次災害を受けながら、話が進んでるんだかよく分からない状況で、別れるために戦略を(冷静に)立てながら、常に前に進まなければならない。
すべての「モラハラ離婚」経験中の人、経験者、そしてこれから経験する人たちが存在する。
これから寒くなります。せめてご自分(とお子さん)を大事になさって過ごしましょう。
とっとと不成立調書を取っておく方がいいです。
別に不成立になったからって、
何か不利になることも無いし、
裁判に行かなくてはならないわけでもありません。
そして、有効期限があるわけでもないので、
気持ちが「裁判してでも離婚する!」と固まったら、
訴訟に向かえば良いし、
不成立調書が出ていても、
何度も離婚調停で話し合いをしている夫婦も多数いるものだと
弁護士から聞きました。
「不成立調書があれば、裁判に進める」
程度の気持ちでいいんだとおもう。
重たく考えないで、未来を閉じないよう、
早めに解決できるよう、
書類は貰っておくべきだと思いました。
別居継続なんて、
精神的な負担が大きくて辛かった。
離婚への決意が少ない、やり直せるかもという頑張りが効くならいいけれど、
そうではなくて、別居後の関係性が悪化したら、
早めにピリオド「。」をつけたほうが、
精神衛生上とっても健康的だと思う。
「きっと次も同じような人に引っかかるんだわ」という不安ではなく、
「今回の経験があるから、次は絶対にいい人と出会える!」
と、未来には希望が待っていると信じて、
一歩一歩歩いていきたいですよね^^