シネブログ

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『ブラインドネス』

2008年11月24日 00時17分15秒 | 映画レビュー
原題: BLINDNESS
製作年度: 2008年
別題:-
製作国・地域: 日本/ブラジル/カナダ 上映時間: 121分
監督:フェルナンド・メイレレス
製作:
ニヴ・フィッチマン
アルドレア・バラタ・ヒベイロ
酒井園子
製作総指揮:
ゲイル・イーガン
サイモン・チャニング・ウィリアムズ
原作:
ジョゼ・サラマーゴ
『白の闇』(日本放送出版協会刊)
脚本:ドン・マッケラー
撮影:セザール・シャローン
プロダクションデザイン:トゥレ・ペヤク
衣装デザイン:レネー・エイプリル
編集:ダニエル・レゼンデ
音楽:マルコ・アントニオ・ギマランイス
出演:
ジュリアン・ムーア 医者の妻
マーク・ラファロ 医者
アリシー・ブラガ サングラスの娘
伊勢谷友介 最初に失明した男
木村佳乃 最初に失明した男の妻
ドン・マッケラー 泥棒
モーリー・チェイキン 会計士
ミッチェル・ナイ 少年
ダニー・グローヴァー 黒い眼帯の老人
ガエル・ガルシア・ベルナル バーテンダー/第三病棟の王
オススメ度:★★★★☆

ストーリー:
ある日、車を運転していた日本人の男が突然視力を失い、目の前が真っ白になる事態に見舞われる。しかし、彼を診た医者によれば、眼球に異常はなく原因は不明だった。その後、同様の患者が各地で続出、混乱が広がっていく。感染症の疑いが濃厚となり、政府は緊急隔離政策を発動し、発症者を片っ端からかつて精神病院だった隔離病棟へと強制収容していく。最初の患者を診た医者もやはり失明し、隔離病棟送りとなるが、その際、医者の妻は自分も失明したフリをして夫に付き添うのだった。彼女だけは、なぜか失明を免れていたのだ。こうしてただ一人、目が見えていながら隔離病棟内に入り込んだ医者の妻は、やがて想像を絶する惨状を目の当たりにするのだが…。

コメント:
思ったよりもなかなかストレートに描かれた作品だった。

もちろんこれはフィクションだし、突然目が見えなくなるという設定はあまりに唐突で感情移入は難しいかもしれない。だが、これは現実に起こってもそうおかしくない話であり、こんなとき人類はどうするのか!?という、ひとつのシミュレーション的な作品として見れば、なかなか重く圧し掛かる題材であると思うのだ。

この映画を観て一番心に残るシーンといえば、人間の欲望といった部分だろう。突然失明してしまうという現象が起こったとき、最初は何とかして見えるように頑張ろうと考えるが、見えるようになりたいという欲望が消えたとき、人間は食料を何とか確保したいという欲望が強くなる。そしてその食料さえもままならなくなったとき、人間(男)は性欲という欲望に走ってしまうのだ。

この事例は、本作で隔離病棟に監禁された数十人の生活の中で生まれたほんの一例に過ぎない。だが、これが本当に起こったとしたら今の人間であれば同じ過ちを犯してしまう動物であるのではなかろうか。人種、貧困、格差などの世界的な問題が現実的に起こっているが、人間は目が見えようが見えまいが、たとえどんな状況に陥ってもそれらの問題を抱え続け、常に争い続ける存在なのだということを掲示している。

だがその反面、人間は過ちをすぐに見直し争いを避け、お互いに力を合わせて問題に立ち向かえる存在であるということも示唆している。何が正しくて何が間違っているのか?それは冷静に考えれば必ずわかることなのだ。

だが本作では突然目が見えなくなるという”咄嗟(とっさ)”の出来事を描いている。人間は考える時間があれば解決に勤しめる動物であるが、”咄嗟(とっさ)”の出来事には正しい道を切り開けない動物であるということを本作では赤裸々に忠告しているのかもしれない。

この映画をリアルに受け止めることなんて到底不可能に近いことだろう。もし現実に同じことが起こったら、おそらく人間は同じ過ちを犯してしまう気がするのだ。それはあまりに恐怖で救いようがない事態だと思う。
自分ならどうするか?どうやって生き延びるか?

そんなことを考えても仕方がない問題で、増してや神様とか宗教とか考えるだけ無駄な気がする。こういう絶望的なときだからこそ、人間は希望をもって協力して生きていくべき存在なのだということを本作では伝えようとしているのではなかろうか。

それすら考えるだけ無駄かもしれないが、
少なくとも僕はそう信じていたい。