シネブログ

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『戦場にかける橋』

2007年11月18日 02時26分52秒 | 映画レビュー
原題: THE BRIDGE ON THE RIVER KWAI
製作年度: 1957年
別題:-
製作国・地域: アメリカ 上映時間: 155分
監督:デヴィッド・リーン
製作:サム・スピーゲル
原作:ピエール・ブール
脚本:カール・フォアマン、マイケル・ウィルソン
撮影:ジャック・ヒルデヤード
音楽:マルコム・アーノルド
出演:アレック・ギネス、ウィリアム・ホールデン、早川雪洲、ジャック・ホーキンス、ジェフリー・ホーン、ジェームズ・ドナルド、アンドレ・モレル、アン・シアーズ、ピーター・ウィリアムズ、ヘンリー大川
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
タイとビルマの国境近くにある日本軍の捕虜収容所では、連合軍捕虜を使って、国境に流れるクワイ河に橋を架ける準備が進められていた。だが、英軍大佐(ギネス)はジュネーヴ協定に反するとして、所長(早川雪洲)と対立。一方、米軍捕虜の海軍少佐(ホールデン)は脱走を試み、辛くも収容所を後にした。英軍大佐の気骨に共感した所長は、捕虜の恩赦を条件に再度協力を要請。捕虜たちに生きがいを与えようと考えていた大佐はこれを承諾し、こうして建設工事が始まった。だが同時に、生き延びた米海軍少佐の手引きによって、連合軍による架橋爆破作戦も開始されようとしていた……。



コメント:
本作でアカデミー主演男優賞を受賞したアレック・ギネスと、同作において日本人男優として初めてアカデミー助演男優賞にノミネートされた早川雪洲の堂々たる演技が光る傑作である。また本編で捕虜の集団が口笛で吹く『クワイ河マーチ』(ボギー大佐)がとてつもなく心に響き、なんともいえない雰囲気を醸し出しているのがいい。戦争の悲劇を、橋の建設という少し違った角度から見せられ考えさせられる内容である。

ニコルソン大佐が死ぬ間際に発する「私は何のために…」という言葉がなんとも印象的だ。いや、でも本当に彼が言うように、この映画で描かれた戦場での橋の建設は一体何のためだったのか、果てしなく疑問に残る内容であったことは間違いない。そもそも同じ英国の軍人であるにも関わらず、捕虜にされている立場と作戦本部にいる立場とでは戦況の認識にここまで差が生まれてしまうのだということを改めて考えさせられた。

ニコルソン大佐は橋を自分たちの手で完成させることにより、全ては自分たちの自由に繋がるということだけを信じていた。橋が完成することで兵士らを新しい収容所に移すことができること、斉藤大佐の計らいで傷病兵は特別に汽車で移動できるようになったこと、また、陸の孤島のジャングルという僻地で苦難を乗り越え大事業を成し遂げたことで、捕虜となり誇りを失っていた兵士たちに名誉を取り戻し敗北を勝利に変えることができるということなど、軍人としてこの上ない達成感を味わうことのできる瞬間になるはずだったのだろう。

収容所に連れてこられた当初は、斉藤大佐に将校も兵士同様の労役を義務付けられていると説明され、それは「ジュネーブ協定に反する」と最後まで反対し続けた。捕虜という立場を理解しつつも、条約に反する命令には絶対的な意志を貫き、最後まで真っ直ぐ生きる彼の姿が他の捕虜の信頼へと繋がったのだろう。

しかし、そのストレートな生き方がこの戦場において最大の悲劇を生むということはこのとき知る由も無かった…。

一方、作戦本部に腰を据えているウォーデン少佐の考えはニコルソン大佐とは全く逆の考えだったのだ。橋の完成後に予想される日本軍のインドへの進軍を阻止するために、落下傘で降下させた兵士に橋の地上爆破をさせる作戦を進めていた。元々、ニコルソン大佐と共に捕虜として収容されていたシアーズも、現場の状況を知らずまま志願兵として爆破作戦に参加させられる。

橋の建設を命令する側、作らされる側、完成を阻止しようとする側、三者三様の立場が存在するが、彼らはただ自分の任務を遂行することだけしか考えていない。戦争というものは実際こういうものだったのだろう。自分たちの置かれている状況が何より大切であり、自らの立場を有利にしたいがために周囲の状況は次第と見えなくなってくる。もし周囲が見えているならば、最初から無駄な戦争などは起こっていなかったに違いない。

こんな状況で戦ったニコルソン大佐だからこそ「私は何のために…」という言葉にはいろんな意味が含まれていると思うのだ。

軍人として28年間何のために戦ってきたのか…
捕虜として橋を建設したのは何のためだったのか…
最終的になぜ自国の人間に殺されてしまったのか…

極限の中で生きてきた彼の最後の言葉には重くのしかかる何かが存在している。

そしてそもそもなぜ人間は殺しあうのか…
それが最大の疑問であるということは言うまでもない。