~藤原竜也と鈴木杏の“ロミジュリ”~(TVstation劇評)

2005-01-27 15:39:07 | tatsuya
テレビに出ているあの人のこの舞台
~藤原竜也と鈴木杏の“ロミジュリ”~
(取材・文/徳永京子)
 
藤原竜也の舞台を観て感じる強い磁力は何なのだろう?
感性、脚本の読解力、天性のオーラ・・・。
どれもが当てはまるのだが、蜷川幸雄が演出する作品で
とりわけ強く感じるのが圧倒的な集中力だ。
昨年、難役である『ハムレット』を21歳の若さで演じて絶賛された藤原だが、
観客が何よりも感動したのは、劇場中の空気を震わせるほどの彼の集中力だったと思う。
その曇りのない気迫が、ハムレットをどこか遠い国の理屈っぽい王子ではなく、
自分で決めた正義に押し潰されそうになって苦しむ若者として、舞台上に出現させた。
 
そして最新作『ロミオとジュリエット』では、藤原の集中力の新しい形を観ることができた。
それは“解放”。普通、集中力と言えば自分の内側に向かっていく姿をイメージするし、
実際、孤独でストイックな作業なのだが、“ロミジュリ”の藤原は、
極点まで内側に凝縮された感情を、外側に惜しみなく放出して見せた。
藤原と、ジュリエット役の鈴木杏は、出会った途端、恋する喜びで全身がキラキラと輝き、
生命力に満ちていく。一目で恋に落ちた相手が、同じように自分を好きになってくれた喜び。
彼らの全身からあふれる明るいエネルギーは、あっという間に劇場を満たし、
ついこちらもワクワクしてしまう。あまりにも救いのない残酷な結末を知ってるのに。
それはいつの間にか、ロミオとジュリエットが通過している時間の中に一緒に生きていたから。
もちろんその理由は、藤原、鈴木の解き放たれた集中力である。
そして、だからこそ後半の悲しさが一層、浮き彫りになるのだ。
 
役者として極めて高いハードルであるハムレットを若くしてクリアしてしまった藤原が、
役の難易度では手前に位置するとされるロミオに挑む意味は、まさにここにある。
世界一有名なラブストーリーに、ラストの悲しみと同じくらい大きな喜びを植えつける役目。
この“ロミジュリ”が4度目の演出となる蜷川は、藤原の集中力を深めることから、
深めて色を変えるところまで引き上げたのだと思う。
単純に、近ごろ続いた悩み顔ばかりでなく、年齢に相応の明るい表情が見られたのもうれしい。

そのまんま載せるのもどうかと思いましたが、ほんとにうまく言い当ててる!
”恋する喜びに全身がキラキラ輝いてる二人”恋するロミオをみるだけでも価値があったよ!
残すところあと一ヶ月、この記事読んで、広島・北九州・新潟・富山・仙台の公演に
行きたくなる人が増えたらロミジュリに貢献できるだろうか?!とも思ったもので・・・
貢献しなくても大丈夫か(笑)・・・しかしチケットもう無いよな・・・

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3 コメント

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Unknown (りりあん)
2005-01-27 19:14:18
すばらしい劇評やね。

最後の6行、なるほど~と

深く頷きました。

徳永京子さん、なにげに

見覚えのあるお名前だけど、

どこで見たのかな?
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徳永京子さん (ちゃむ)
2005-01-28 01:17:17
りりあんさん、素晴らしい記憶力。

彼女未だお若いんですが、

演劇中心でエンタメ関係の執筆が

非常に多いフリーのライターさんです。



役者として極めて高いハードルであるハムレットを若くしてクリアしてしまった藤原が、

役の難易度では手前に位置するとされるロミオに挑む意味は、まさにここにある。>



この評は実に的確だと思います。
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文才にあこがれる ()
2005-01-31 10:28:47
ほんとに劇評を書く人はすごいと思う。

なんかとにかく感動したーなんて気持ちでいて、

劇評読むと、そうかだから感動したのか、と納得したりする。

  (これひどすぎ?)

そういえばハムレットでは小田島さんの文章そのものにに感動して、

母とかに見せてたなぁ。
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