露の音 幽かな独り言

 
軌跡を見失わないよう
     追憶のよすがを
       記憶の欠片を遺したいのです

JOKER

2019-10-06 14:49:09 | 日記


ずっと楽しみにしていた映画『JOKER』を観てきました

陰惨な物語でしたが、不思議と痛快にも思えてしまえて

とても素晴らしい映画でした


ただ、痛そうな様子を見るのがとても苦手なので

鑑賞に年齢制限が設けられ

国際映画祭の審査員が顔を背けた程の場面があることに

少し不安があったのですが

作品最大の暴力には判りやすい前兆があって

直前で画面から視線を外すことができました


基本的にはピエロが大好きなので

愉快で悲しげで、明るく狂気じみた姿が

画面に躍っているのを観るだけでも楽しかったです


虚実の境が曖昧な中で

怒りと悲しみが積もりに積もって

暴力と狂気へ衝き動かす

彼の凶行を応援したくなってしまうのが

何だか空恐ろしかったです


「社会を問う」というような堅苦しい映画は観る気にもなりませんが

ジョーカーという何故か魅力的な人物をきっかけに

楽しみながら、美しさに酔いながら

自身の感情に慄きながら、自然と問いが浮かぶ

とても良い映画だと思います



これよりは内容に触れて観たことを整理したいと思います



暴力

最初は不良少年達にされるがまま

次は拳銃で対抗し、ウェイン社のエリート3人を射殺

病み衰えた養母を窒息死させ

美しいシングルマザーさんは無事だったのでしょうか

失職の端緒となった同僚を刺殺

憧れの司会者に晒し者にされて射殺

最後にソーシャルワーカーか医師かも無事ではないでしょう

だんだんと暴力への沸点が下がっているように思えます


振るわれた暴力から身を守るのは仕方がなかったとはいえ

貧困・後天性の障碍という苦境を作った元凶を葬ったところで

現状は今更変わらない

それでも、養母と同僚に対する同情は浮かんでこない

自分の中に暴力を肯定する心情があることに驚きました

この映画の恐ろしいところですね

物議を醸しているのも納得です


ですが、誰しもが容易に罪人に堕ちること

それを自覚することは大事でしょう

彼も仕事を続けていられれば

度重なる暴力に傷つけられていなければ

話に耳を傾けてくれる人がいれば

ジョーカーは生まれなかったかもしれない


もしも

わたしに仕事がなく貧困に苦しんでいたら

暴力に晒され、人格を踏みにじられていたら

誰にも顧みられず、無視されていたら

自身の存在を守るために、一体何をするのでしょう


幻覚

恋人の存在は処方薬がもたらした幻覚だった

観ている側ですら、何が現実で何が虚構か区別がつかず不安なのに

本人は尚更混乱するでしょう

増してや母親の話すら妄想の生んだ虚構

もはや全てが現実として信じられないのなら

何も恐れるものはない

それこそがジョーカーの強さなのでしょうね

誰よりも自由なのもそのため

倫理も権利も実存も何もかもが嘘だから


群衆

突発的な殺人がメディアの表現を介して多くの賛同者を作った

勝手に集まる道化師の群衆を利用して警察をかわし

群衆は勝手にVigilanteを祭り上げる

それぞれが飽くまで個々の行動、予測不可能で統制はできない

その暴動と混沌の頂点に立つ姿は

孤高のヒーローのようで素敵でしたね

掴みどころのない群衆を動かし、混乱を背に笑っている

そんなジョーカーの姿が大好きなので

とても満足な作品でした


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