露の音 幽かな独り言

 
軌跡を見失わないよう
     追憶のよすがを
       記憶の欠片を遺したいのです

うめだ文楽

2016-03-27 10:53:34 | 日記


しばらくご無沙汰しておりました

文楽を観に行ってきました



会場時間の14:30までの間

グランフロントで買い物をしながら時間を潰し

北館の無印良品の奥にあるナレッジシアターへ入場


若手技芸員さんたちの素顔が紹介されているという

500円のパンフレットを購入し

開演時間までの間読んでいました

20代半ばのわたしと同じ年の方もおられ

なんだかとっても身近に感じられました


15:00になって開演し

司会のテレビ局アナウンサーさんが登壇

文楽を観に来て、舞台に女性が立たれるのを見るのは新鮮でした

そして、この回のゲストである華道家の笹岡隆甫さん

そして技芸員から三味線の鶴澤寛太郎さんが登壇され

トークタイム

華道と文楽それぞれの道へ進まれた経緯や共通点

三味線で感情を語る実演や素材のお話

ストレス解消法やこれからの展望など

色々なお話を聞くことができました


それから15分の休憩

その間、舞台を組み上げる音が幕の向こうから響いていました


時間になり開幕

黒衣さんの「ちょん」という析の音と「とぉ~ざい~」の声に

文楽を観に来た贅沢な時間を実感

「傾城阿波の鳴門~十郎兵衛住家の段~」

7月に「文楽の世界展」で上演された巡礼歌の段で

お弓さんがおつるちゃんを追って家を出るところまで観て

その続きが観られるので楽しみにしてました


前半は以前に観たものの

やはりお弓さんの涙する姿が美しくも切ない

そしておつるちゃん超可愛い

今回も不思議そうに前髪を直す仕草が堪りませんでした


さて、おつるちゃんが発ち、お弓さんも追って行った後

おつるちゃんの手を引いて登場したのは十郎兵衛

夕暮れ時、おつるちゃんの持つお金を狙って

貧者が悪巧みをしているのを聞きつけて連れ帰ったと

しかし、家にお弓さんはおらず…

とりあえず、明かりを灯しつつ、おつるちゃんを家にあげ

持っているお金について尋ねる

さきほどお弓さんに持たされた銭の包みを出し

他にも小判があると言うおつるちゃん

危ないから自分に預けるように言う十郎兵衛

おつるちゃんが断ると、今度は脅すように迫る


娘であることを知らないとはいえ

小さな女の子にたかるなんて…

と、ちょっと呆れ気味に観ていました

主君のために盗賊に身をやつしての暮らしは

安穏としたものではないでしょうけれど

義理を立てるためといっても、何だか釈然としない気分


十郎兵衛の様子に怯えて

「こわい、こわい」と声をあげるおつるちゃん

近所に知れることを恐れて、手で口を塞ぐ十郎兵衛

もがくおつるちゃんを押さえつつ

もっともらしいことを述べて言い聞かせようとしていると

動きを止めるおつるちゃん

大人しくなったと見て、十郎兵衛が手を離すと

そのまま倒れ伏す

息をしていないと、気付け薬を飲ませるも手遅れ


まさかの展開に客席も驚いていると

十郎兵衛も表から聞こえる足音に驚き

慌てて亡骸に布団を被せ、屏風を立てて隠す

すると、帰って来たお弓さん

息を切らせながら、夫におつるを探すよう言い募る

事情をまくし立て、早く探しに出るよう急かすと

その娘の様子を尋ねる十郎兵衛

身に着けているものをお弓さんが説明すると

自分のしたことに気づき、動揺

なおも急き立てるお弓さんを制し

探す必要はないこと、奥の布団に寝ていることを告げる

駆け寄るお弓さん、眠っているものと思って安堵

甲斐甲斐しく巡礼の旅装を解いてあげている内に

手足の冷たさに、息をしていないことに気づく

おつるちゃんの亡骸を抱きかかえて取り乱すお弓さん

十郎兵衛が起こったことを説明する

両親がなした娘への仕打ちを嘆くのも束の間

追手が迫っていることに気づき

奥の間に亡骸を横たえると、障子を被せ

火を着けて、合唱瞑目

手早く荼毘に付したところに、2人の追手

十郎兵衛の大立ち回り

そして追手2人ともを斬り伏せたところで幕


顔が縦に割れる斬られ役の首を久々に観られたり

可愛らしい女の子と

しとやかな女性と豪快な男性をひとり語り分ける

太夫さんの多彩な声を堪能出来て

太棹三味線の迫力ある音色を間近で聴けて

1時間とはいえ、文楽の醍醐味をたっぷり味わえました


演者さん達が舞台に勢揃いされ

代表の方からご挨拶があり

「また観たい」と要望を書いていただければ

次も実現できるかもしれない

ということでしたので、ロビーにてアンケートを書き

家路につきました


親がお金目当てに、再会した子を殺してしまうという筋は

ヨーロッパの昔話として伝わっている「殺人宿」と似ているなぁ

と思ったのですが

義理を立てるため、人情を押し殺すという筋は

文楽によく描かれるパターンですね

恩義ある人の子の身代わりに我が子を差し出す

そのような筋もいくつか観ました

…といってもそれが一般的だったわけではなくて

物語の王道、悲劇で涙を誘う定石だったのでしょうね

芝居に描かれるのは、非日常的な出来事

ならば、きっと人情に流されるのが日常だったのでしょう

そんな風にかつて生きた人々の理想と現実を想ってみたり

過去との対話の糸口になることも

わたしが文楽に惹かれる理由のひとつのように思います


また国立文楽劇場で贅沢な時間を過ごしたいなぁ


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