城壁の街で : At The Walled City Blog

カナダ・ケベックシティ在住、ラヴァル大学院生の生活雑記
Université Laval, Québec City

旅の読書II : リバイバル?

2006-11-28 | 雑記
もう一冊はこちら


岡嶋二人に関しては前にも少し書いた。どうやら、去年に「この文庫がすごいで」のミステリー部門でランクインしてから売れに売れているようで、大型書店では平積みにまでなっていた。2000年に入ったくらいからこのコンビの本を書店では目にすることは殆どなくなっていたのに、今回の帰国時に見たら講談社文庫版なんてほぼ全ての作品が揃っていた。

2000年から2004年の五年くらいの間に岡嶋二人が読みたくなって文庫本を探しに本屋に出向くも、手に入らなくてガックリしながら家路についたバカ元ファンは自分だけではなかったはずだ。

そんな状況が経った一冊「この文庫がすごい」という雑誌(ムックか?)で紹介された(講談社が「99%の誘拐」をリバイバルしたのは、その少し前なんだと思うけれど)がために大きく変わってしまうんだから世の中わからんもんだ。一般消費者の行動ってのも不思議だけれど、出版業界のプロモートというか流通というかって本当に不思議だよな。

一体、仕掛けたのは誰なんだ?



そんなことはともかく、カナダへ行く飛行機の中で読んだ「そして扉が閉ざされた」は余り面白くはなかった。

「シェルターに閉じ込められた若者4人」という特殊な状況と「そこから徐々に導き出される解答」という元々の「アイデア」が強すぎたために、そこに頼り切ってしまったんだとおもう。心理的な描写とか、人間関係の構築が「そりゃ短絡的過ぎるだろよ」と突っ込みたくなるくらい甘くて、「明日天気にしておくれ」を読んだときのような「おぉ、スゲエ、スゲエ」という興奮をえることは出来なかった。 残念ではあるけれど「ミステリーを読む」というのはそういうもんだと思う。

とりあえず、実家の押入れを漁って「解決まではあと六人」と「タイトルマッチ」を密輸してきたので、気が向いたときに読んでみようと思う。



今になって、「クラインの壷」と「クリスマスイヴ」を手に入れなかったことを非常に後悔している。

次の帰国のときこそは!

旅の読書 Part I

2006-11-28 | 雑記
今回の出張旅行中に読んだ本二冊の紹介





往路と、学会中(もちろん夜寝る前だ)に読んだ本がコレ。言わずと知れた「世界のオザワ」の若いときの欧州行(そのあとアメリカも行っていたな)の記録である。同じ大学で修士をやっているフルート吹きに借りた。


読み始めは、感銘を受けるどころか、余りの自意識過剰気味でリズムの悪い文章に飽きれていた。でも、途中で「26歳の小澤征爾が”武者修行”直後に書き上げたものだと知って、その辺は納得。逆に、覚めやらぬ興奮と、軽い照れがああいった文章を書かせているんだなと思うと、物凄く親近感が持てるようになった。そこからあとは引き込まれるように読みつづけてしまった。


強く感じたことは小澤征爾って、ものすごく明るくて人懐っこい奴なんだろうなということ。だからこそ、多くの人が彼に手を貸し、金を貸し、酒を飲ませ、そしてチャンスを与えたんだろうな。音楽家としての才能に恵まれた上に不断の努力を積み重ねているのは当然のこと、それ以上に彼に道を開いたのは「人柄」だったのかもと勝手に想像していた。


ただ、全体を通して違和感があったというか、不思議に感じた点は、嫌ぁな出来事も山ほど有ったはずなのに、その点には殆ど触れられていないこと。最後の方で、海外での日本人コミュニティの狭さと、人間関係の難しさに関して触れられてはいたけれど(やっぱり小澤征爾でも苦労したんだと思うと嬉しくなった点だ)、その他は殆どかかれていなかったように思う。もともと、マイナスな出来事は気にしない性格なのか、意図して排除したのかどうかは知らないけれど、体験記としてはリアリティに欠けてしまうなぁという気がした(そういやぁ遥か昔に、乙武何某の「五体不満足」を読んだときにも似たようなことを思ったな)。やっぱり、体験記は苦労と喜びの両方があって初めて強いリアリティを持つのかなぁ。

超小市民的な自慢だが、自分は小澤征爾と握手したことがある。






続きは後ほど。