城壁の街で : At The Walled City Blog

カナダ・ケベックシティ在住、ラヴァル大学院生の生活雑記
Université Laval, Québec City

メキシコ湾の原油流出(追記あり)

2010-05-30 | 雑記

昨日、同僚と話しているときに、ひょんなことからメキシコ湾の原油流出の話題が出て「結局のところ、どれくらいの原油が漏れているの?」「プールで言ったら何杯分なの?」という話になったので、理系な僕らはざっと計算してみた。

まず、ニュースが伝えるところによると、現在の流出量は一日あたり流出量は1万2千から2万5千バレルらしい(まぁ、この辺の推計はかなりいい加減だと思うが)。

で、だ

1石油バレルは42ガロン、1ガロンは大体3.8リットルなので、1石油バレルっつうのは大体160リットルになる。そうすると、流出量は190万から400万リットルとなる。

さて、さっき調べたんだけれど、オリンピックのプールって大体 50m X 25m X 2mなんだそうな。なんで、プール一杯は大体2500立方メートル 。1m立方メートル は 1000リットルだから、250万リットルとなる。

というわけで、1日にオリンピックのでっかいプール一杯から二杯分がもれている事になるらしい。

「あぁ、プール1杯ねぇ」って微妙な数字だけれど、それが4月の終わりから1ヵ月以上もれ続けている。これに関しては計算するのが怖いんだけど、ものすごーく単純に計算して、

プール一杯(250万リットル)×30日=7500万リットル

くらい流出済みの可能性があるということになる。つか、それよりも多いだろうな。多分1億リットル=62万5千バレルくらいは行ってんじゃないのか?結構ヤバイいかもね。なんで、どれくらいヤバいかを、色々と例を出して行くので、興味がある人は、読んで、想像してみて、あまりの状況の深刻さにビクビクしてみましょう。

その1、
油は軽いので水面で簡単に広がる。超適当にプール1杯分(=1日の推定流出量)の原油が水面では10cm程度の厚さに広がっちゃうとすると、その油が覆う範囲は単純にプール20個分(深さ2m割る0.1m)、すなわち50x25x20=2万5000平方メートルで、大体東京ドーム半分くらい。たぶん油はもっと広がる、なんで油の影響を受けるエリアはかなり広くなる。

(油に覆われた面積の公式発表を探したんだけれど、わからんかった)

その2、
過去の原油流出事故との比較。1997年のナホトカ号の原油流出事故では620万リットル位の流出があったらしい。あの時はボランティアが出て海岸の重油を回収している映像が連日テレビで流れ、日本中が大騒ぎだった。そのときの流出量の1/3 から2/3位の量が"毎日"流出している。

北米で一番有名な事故は 1989年のExxon Valdez の事故だ。アラスカで起きたこの事故の際には1080万ガロン = 4088万リットル流出し、周囲の環境を破壊しまくった。あまりに被害が大きかったために、20年以上前のこの事故に関しては、未だにScienceで特集記事が出たりする。それよりも多くなりそうな見込みだ。

その3、
国家レベルの原油消費量との比較。日本の一日あたりの石油の消費量は7億7000万リットルくらいらしい(参考)。あ、まぁ、さすがにそれには届かんのね。。。

あと、原油の輸入に使われる巨大タンカー(VLCCクラス)の標準的な積載量は200万バレルで、だいたい3億リットルくらいらしい。さすがにタンカー丸々一隻分にはまだ届いていない。ちなみに船の全長は330mで全幅は60mで喫水は20m。超巨大。

さらに、石油の備蓄に使う石油タンク(中に入った幸運な人もいる)。色々な大きさがあるみたいなんだけれど、九州の石油基地の奴は大きな奴で1基辺り1億6000万リットル、小さな奴で5000万リットル。まぁ、小さな石油タンク1個分は流出していることになる。で、「小さな」とは言うけれど、それでも直径60m、高さ20mとか。やっぱり超巨大。

その4、
ルイジアナとかあの辺の海岸線が湿地だと言う恐ろしい事実。Exxon Valdezやらナホトカ号の時も、海岸線に漂着した石油の回収やら処理やらは大変だった。でも、周囲の海岸線は砂浜か岩礁帯が主だったはず。が、今回は広大な湿地帯が広がっているあたりだ。砂浜はあれだけれど、岩礁帯なら影響を受ける幅少ない、おそらく潮の干満の「高さ」の範囲だけが油をかぶることになるダケですむし、ある程度の回収作業やら、いわばの洗浄作業もできる(洗浄作業をするべきなのかどうかは意見が分かれるところだけれど)。が、湿地の場合は潮の干満で水に浸ったり、干上がったりするエリアがハンパなく広くなる。干満の「高さ」だけでなく、広大な「奥行き」も考慮しないといけないからだ。さらに、一度湿地帯が油をかぶってしまったら、回収やら洗浄作業はほぼ出来ないだろうな。つうわけで、海岸線ではかなり恐ろしい事になる可能性が。。。。(もうなっているのかもしれないけれど・・・)


まぁ、iPad発売やら、米軍基地問題でぎゃーぎゃー言っている間に、メキシコ湾では大変なことになっていますよ、というお話。




この記事を書くための情報を集めようとしていて思ったこと2点。

今回の事故に関して、正確かつ信用の置ける情報って思ったより少ない。というか、無い。情報が隠されているとかいうよりは、だれも全体像を把握できてないんじゃないかなという気がする。

石油関係は単位が混在していてややこしい。バレル、ガロン、リットル、キロリットル、トン。これに関しては、誰かがわざとややこしくして一般人が入り込めないようにしているんじゃないかと思える。






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2 コメント

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Unknown (Wallflower)
2010-05-31 14:24:56
うちの主人はこのオイル流出事件は「雇用を増やすための政府の陰謀」と言っていました。
トヨタのリコールといい、なんだか裏がありそうな事件が最近おおいですね。
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Unknown (H.K.M.)
2010-06-01 04:49:38
新しい形のニューディール政策かよ!いや、それにしてはリスクというか、対価が大きすぎますぜ。。。
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