万葉集ブログ・1 まんえふしふ 巻一~巻八

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1658 光明皇后

2010-07-17 | 巻八 冬相聞
藤皇后奉天皇御歌一首

吾背兒与 二有見麻世波 幾許香 此零雪之 懽有麻思

我が背子と ふたり見ませば いくばくか この降る雪の 嬉しくあらまし


藤皇后(光明皇后)、(聖武)天皇に奉る御歌一首

「私のあなたと、二人で見れば、どれほど、この降る雪が、嬉しく思われることでしょう」

1657 作者未詳

2010-07-16 | 巻八 冬相聞
和歌一首

官尓毛 縦賜有 今夜耳 将欲酒可毛 散許須奈由米

官(つかさ)にも 許したまへり 今夜(こよひ)のみ 飲まむ酒かも 散りこすなゆめ

右酒者官禁制称 京中閭里不得集宴 但親々一二飲樂聴許者 縁此和人作此發句焉


和歌一首

「太政官より許可された、(身内だけで呑む)今宵の酒だ。(今夜だけ)呑む酒ではないぞ。(だから、ウメの花よ)散ってはならぬよ」

右は、酒は、官禁制していわく、京中の閭里、集宴すること得ざれぬ。但し、親々一二飲楽するは聴許する。此(こ)れによりて、和(こた)える人、この発句(はじめのく)を作る

右は、酒は、太政官により禁制されており、(奈良の)都の中の村落においても、集まって宴会を開くことが禁止されていた。但し、近親者が一、二名で飲酒することは聴許されていた。これにより、(上の詩歌に)応える人が、この短歌を作成した。


1656 坂上郎女

2010-07-15 | 巻八 冬相聞
大伴坂上郎女歌一首

酒杯尓 梅花浮 念共 飲而後者 落去登母与之

酒杯(さかづき)に 梅の花浮かべ 思ふどち 飲みての後は 散りぬともよし


大伴坂上郎女、歌一首

「杯に、ウメの花を浮かべて。気の合う者同士(今夜は呑みあかしましょうね)。酒宴のあとは(ウメの花には用はありません)。散っても構いませんわ」

1655 三国人足

2010-07-14 | 巻八 冬相聞
三國真人人足歌一首

高山之 菅葉之努藝 零雪之 消跡可曰毛 戀乃繁鶏鳩

高山の 菅の葉しのぎ 降る雪の 消ぬと言ふべくも 恋の繁けく


三国真人人足(みくにのまひとひとたり)の歌一首

「高い山に(自生する)、スゲの葉を押し伏せて、降った雪が、消えることよりも、(男女の)恋のほうが激しいものだ」

1654 坂上郎女

2010-07-13 | 巻八 冬雑歌
大伴坂上郎女雪歌一首

松影乃 淺茅之上乃 白雪乎 不令消将置 言者可聞奈吉

松蔭の 浅茅の上の 白雪を 消たずて置かむ ことはかもなき


大伴坂上郎女、雪の歌一首

「マツの陰の、小さなチガヤの上に、(残る)白雪が、(溶けて)消えぬようこのまま置いておく、(有効な)手段はないのでしょうか」