京都を何度も訪れながら、今まで詣でたことのなかった
伏見稲荷。
今回は東福寺から足をのばして、
関西一の初詣客数を誇る、このお稲荷さんに参拝することにする。
社殿が近づくにしたがって、小さな赤い鳥居を売る土産物店が増えてきて、
だんだん稲荷神社の雰囲気が出てくる。
参道に到着してまずは本殿に参る。
商売繁盛の神様として有名なお稲荷様。
果たしてご利益のほどはいかに。
そしてこの稲荷に来たら必ず見て帰らなければ、と思っていた千本鳥居へ。
奉納された赤い木造りの鳥居がずっと先まで続いているのを見て、
本当に千本もあるのだろうか、あるならその最後を確かめてみたい、と
地図も見ないまま、千本鳥居に足を踏み入れてしまったのがすべての始まり。
赤い鳥居に囲まれた参道をひたすら登る。
同じように前を行く参拝客についてずんずん奥へと進んでいくが、
どれだけ上ってもまだまだ鳥居が続く。
いったい先に行くと何が待っているのかもわからず、ただただ足を進める。
足場の悪い場所、傾斜のきつい坂などもあり、
そのうち、どうもこれは頂上をめざして山を登っているのでは、と気づく。
だんだん喉も渇き、息切れもしてきて、もう引き返そうか、と思うが、
ここまで来たのだから、どうせなら最後まで行こう、と自分を励まし
また上っていく。
途中、いくつか緑の開けたところから京都を見下ろせるようになっていたが、
その景色ももう目に入らない。
とにかく、目の前にある赤い鳥居の道をただ黙々と歩くだけである。
そうして一時間あまり、ようやく頂上の一ノ峯「上ノ社」にたどりつく。
へとへとになったところを待っていたのは、
参道の階段で気持ちよさそうに昼寝をしている猫。
左甚五郎の「眠り猫」のようなその穏やかな姿に
癒される思いで、息を整えてから無事、参拝。
本当は来た道とは違ったルートで、ぐるりと周るようにして下山することも
できたのだけれど、さすがに疲れたのでそのままの道を引き返す。
ようやく本殿まで戻り、稲荷山の地図を見ると、
これはもう軽い登山のようなコースになっている。
赤い鳥居に引き込まれて迷い込んでしまった稲荷山の迷宮。
鳥居は本当に千本もあるのか、などと始めは疑っていたけれど、
千本どころか数え切れないその鳥居に、これまで奉納してきた人々の
さまざまな思いを感じる。
また機会があればぜひもう一度登って、とは思うけれど、
その時はもっと準備をして、せめて歩きやすい靴と水筒、
そして「山登り」の覚悟をもって臨みたいものである。