2回目の商業ビル屋上は、1回目の時ほどの瑞々しさが、全体として、消えたものの、出演した各アーティストの今日の舞台と、これからを意識したものが、ライヴの中にあったように、幡山 日光(はたやま にっこう)は、思えた。
2回目のライヴを終え、また、次も別の商業施設の屋上で行う…と言う話が、作者の都合で、恣意的に出ては来ても、各、アーティスト達としては、嬉しいニュースであった。
「お疲れ様です」
会場からの帰宅の途、幡山 日光(はたやま にっこう)は、同じ売れない歌手プロジェクトに参加しているアーティスト、
笹生 英輝(さそう ひでき)に、声をかけられた。
「幡山さん、良い歌声してて、好きなんですよ」
笹生 英輝(さそう ひでき)にそう言われ、幡山 日光(はたやま にっこう)は、本当に?あんたのがイケイケだったでしょうよ、と、今日のステージでの、笹生 英輝(さそう ひでき)を見て思っていた。
「この後、飲みに行きましょうよ。おごるんで」
と、笹生 英輝(さそう ひでき)に、圧され、幡山 日光(はたやま にっこう)は、否、とは、言えなかった。
笹生 英輝(さそう ひでき)の身にまとうオーラや話し方のレベルの違いを、思い知らされる、サシ呑みの中で、笹生 英輝(さそう ひでき)から、幡山 日光(はたやま にっこう)に歌ってもらいたい曲があるので、明後日あたり、どうですか?と言う事になり、幡山 日光(はたやま にっこう)は、笹生 英輝(さそう ひでき)が指定された場所に、赴いた。
――アコウスティックギター弾けるのって、持ち運びが便利で良いよなあ――
道すがら、幡山 日光(はたやま にっこう)は、そう胸の中で、つぶやき、笹生 英輝(さそう ひでき)と合流した。
「で、この間話した曲なんですけど…」
笹生 英輝(さそう ひでき)とのサシ呑みの席で、ある2つの同じジャンルに属する物語の話が、出てきて、その物語の展開や登場キャラクターの
話で、
「そうか、そんな見方もあるか」
だったり、
「やっぱり、そうですよね」
と言う話になり、主題歌や挿入歌の話にもなり、お互い、
「いきなりエンディングに、フルで流れて、記憶に残りましたよね?」
となったあたりで、幡山 日光(はたやま にっこう)に、歌ってもらって聴いてみたい、と、笹生 英輝(さそう ひでき)が、言って、今日を、迎えた経緯があった。
――って、言っても、歌えるのか、俺?――
集合場所は、小さな貸しスタジオだった。
――わざわざ、こんな所まで、借りてやるなんて…――
指定の部屋に行くと、笹生 英輝(さそう ひでき)が、既に待機していた。
「お疲れ様です」
笹生 英輝(さそう ひでき)は、手を挙げて、幡山 日光(はたやま にっこう)に、機嫌良さげに言った。
「で、これが歌詞カードです」
笹生 英輝(さそう ひでき)は、A4に打ち出したものを、幡山 日光(はたやま にっこう)に渡した。
「じゃあ、歌なしで、ちょっとやってみますんで、雰囲気掴んで下さい」
笹生 英輝(さそう ひでき)は、手持ちのアコウスティックギターを、歌なしで、奏で始めた。
――なるほど。ここは、こんな、なのね…――
歌手であっても、楽器演奏は、弾くものの味が出るなあ、と、幡山 日光(はたやま にっこう)は思い、他人の演奏は、いつでも、本物そっくり感が、自分よりも濃くて、巧く感じられた。
「それで、ここの箇所は、前の部分の…」
笹生 英輝(さそう ひでき)は、歌詞カードを指差して、演奏の流れと歌が入るタイミングを、示した。
「こんななんですが、行けそうですか?他人の生演奏って、自分で楽器出来ると、歌い難いと思うんですが」
笹生 英輝(さそう ひでき)に、訊ねられた。
「あとは、やってみないと、ですけれど、巧いですね」
幡山 日光(はたやま にっこう)は、率直にそう思った。
「オッケイです。じゃあ、今回は、歌つきで、お願いしますね」
笹生 英輝(さそう ひでき)は、そう言うと、演奏を始めたので、幡山 日光(はたやま にっこう)は、歌いに入るタイミングを追いかける。歌うこの曲が持つ、もともとの質が高いと、多少、歌唱力がなくても、それなりの完成度が出るので、歌う方としては、気持ちの良いもの。だが、演奏家は、どうなのだろうか?幡山 日光(はたやま にっこう)は、そんな事を想い笹生 英輝(さそう ひでき)の演奏で、最初から最後まで、歌いきった。
「ギターの音色に忠実に歌われるんですね。思った以上に良いですね」
笹生 英輝(さそう ひでき)は、嬉しそうに、言った。
「それは、有り難いです」
リップサービス入ってない?と幡山 日光(はたやま にっこう)が、疑っていると、
「で、リクエストなんですけど、もう1回、歌ってもらえませんか?」
笹生 英輝(さそう ひでき)が、お願い、と言うと、スマートフォンを取り出すと、録音アプリを立ち上げた。
「次の演奏は、動画サイトにも、アップしたいと思います」
そう言うと、笹生 英輝(さそう ひでき)は、再び同じ曲を奏で始め、幡山 日光(はたやま にっこう)は、歌い始めたのだった。
(終)
2回目のライヴを終え、また、次も別の商業施設の屋上で行う…と言う話が、作者の都合で、恣意的に出ては来ても、各、アーティスト達としては、嬉しいニュースであった。
「お疲れ様です」
会場からの帰宅の途、幡山 日光(はたやま にっこう)は、同じ売れない歌手プロジェクトに参加しているアーティスト、
笹生 英輝(さそう ひでき)に、声をかけられた。
「幡山さん、良い歌声してて、好きなんですよ」
笹生 英輝(さそう ひでき)にそう言われ、幡山 日光(はたやま にっこう)は、本当に?あんたのがイケイケだったでしょうよ、と、今日のステージでの、笹生 英輝(さそう ひでき)を見て思っていた。
「この後、飲みに行きましょうよ。おごるんで」
と、笹生 英輝(さそう ひでき)に、圧され、幡山 日光(はたやま にっこう)は、否、とは、言えなかった。
笹生 英輝(さそう ひでき)の身にまとうオーラや話し方のレベルの違いを、思い知らされる、サシ呑みの中で、笹生 英輝(さそう ひでき)から、幡山 日光(はたやま にっこう)に歌ってもらいたい曲があるので、明後日あたり、どうですか?と言う事になり、幡山 日光(はたやま にっこう)は、笹生 英輝(さそう ひでき)が指定された場所に、赴いた。
――アコウスティックギター弾けるのって、持ち運びが便利で良いよなあ――
道すがら、幡山 日光(はたやま にっこう)は、そう胸の中で、つぶやき、笹生 英輝(さそう ひでき)と合流した。
「で、この間話した曲なんですけど…」
笹生 英輝(さそう ひでき)とのサシ呑みの席で、ある2つの同じジャンルに属する物語の話が、出てきて、その物語の展開や登場キャラクターの
話で、
「そうか、そんな見方もあるか」
だったり、
「やっぱり、そうですよね」
と言う話になり、主題歌や挿入歌の話にもなり、お互い、
「いきなりエンディングに、フルで流れて、記憶に残りましたよね?」
となったあたりで、幡山 日光(はたやま にっこう)に、歌ってもらって聴いてみたい、と、笹生 英輝(さそう ひでき)が、言って、今日を、迎えた経緯があった。
――って、言っても、歌えるのか、俺?――
集合場所は、小さな貸しスタジオだった。
――わざわざ、こんな所まで、借りてやるなんて…――
指定の部屋に行くと、笹生 英輝(さそう ひでき)が、既に待機していた。
「お疲れ様です」
笹生 英輝(さそう ひでき)は、手を挙げて、幡山 日光(はたやま にっこう)に、機嫌良さげに言った。
「で、これが歌詞カードです」
笹生 英輝(さそう ひでき)は、A4に打ち出したものを、幡山 日光(はたやま にっこう)に渡した。
「じゃあ、歌なしで、ちょっとやってみますんで、雰囲気掴んで下さい」
笹生 英輝(さそう ひでき)は、手持ちのアコウスティックギターを、歌なしで、奏で始めた。
――なるほど。ここは、こんな、なのね…――
歌手であっても、楽器演奏は、弾くものの味が出るなあ、と、幡山 日光(はたやま にっこう)は思い、他人の演奏は、いつでも、本物そっくり感が、自分よりも濃くて、巧く感じられた。
「それで、ここの箇所は、前の部分の…」
笹生 英輝(さそう ひでき)は、歌詞カードを指差して、演奏の流れと歌が入るタイミングを、示した。
「こんななんですが、行けそうですか?他人の生演奏って、自分で楽器出来ると、歌い難いと思うんですが」
笹生 英輝(さそう ひでき)に、訊ねられた。
「あとは、やってみないと、ですけれど、巧いですね」
幡山 日光(はたやま にっこう)は、率直にそう思った。
「オッケイです。じゃあ、今回は、歌つきで、お願いしますね」
笹生 英輝(さそう ひでき)は、そう言うと、演奏を始めたので、幡山 日光(はたやま にっこう)は、歌いに入るタイミングを追いかける。歌うこの曲が持つ、もともとの質が高いと、多少、歌唱力がなくても、それなりの完成度が出るので、歌う方としては、気持ちの良いもの。だが、演奏家は、どうなのだろうか?幡山 日光(はたやま にっこう)は、そんな事を想い笹生 英輝(さそう ひでき)の演奏で、最初から最後まで、歌いきった。
「ギターの音色に忠実に歌われるんですね。思った以上に良いですね」
笹生 英輝(さそう ひでき)は、嬉しそうに、言った。
「それは、有り難いです」
リップサービス入ってない?と幡山 日光(はたやま にっこう)が、疑っていると、
「で、リクエストなんですけど、もう1回、歌ってもらえませんか?」
笹生 英輝(さそう ひでき)が、お願い、と言うと、スマートフォンを取り出すと、録音アプリを立ち上げた。
「次の演奏は、動画サイトにも、アップしたいと思います」
そう言うと、笹生 英輝(さそう ひでき)は、再び同じ曲を奏で始め、幡山 日光(はたやま にっこう)は、歌い始めたのだった。
(終)