やさしい芸術論

冬が来たなら、春はそう遠くない

「人間なんてさみしいね」

2021年01月11日 | 

やなせたかしさんの詩を紹介します。

 

この詩はまだアンパンマンが世に出る前の頃の作品です。

 

やなせさんの人生は苦難の連続でした。

親と別れ、弟は戦死し、天涯孤独となります。

様々な病気をしながら過ごして、

漫画家として売れない日々を過ごしながら、

アンパンマンが売れたのは、69歳の時です。

 

アンパンマンがやなせさんの光の部分だとしたら、

この詩はやなせさんの「影」の部分と言えます。

 

影、すなわち苦労や痛みを知っているからこそ、

アンパンマンのような博愛的な人を助ける光のキャラクターを

生み出せたのかもしれません。

 

この詩の

たったひとりで生まれてきて

たったひとりで死んでいく

人間なんてさみしいね

人間なんておかしいね という部分は

恐らく、戦死した弟さんの事だと思います。

 

弟さんは生まれてすぐ、両親がいなくなり、

特攻隊として戦争へ赴き、二十二歳の若さで、

戦地へ向かう途中の海の中へ沈んでいきました。

 

やなせさんは終戦後、弟さんの死を告げられ、

渡されたのは、ただ、骨壺の中に一片の木片が入っているのみでした。

 

何で弟が死んで、何で自分が生きているのか。

答えの無い自問自答を何度も繰り返したのかもしれません。

 

この詩には、辛い人生を一生懸命生きてきて

真剣に人生について考えたやなせさんの

こころの声が聴こえてきます。

 

 

「人間なんてさみしいね」(一部抜粋)

 

 

とにかくこうして

何となく

諸行無常と生きている

このたよりない存在を

誰かがみとめてくれること

心と心がふれあって

何にもいわずにわかること

ただそれだけのよろこびが

人生至上の幸福さ

 

どうせこの世はまともじゃない

オレもオマエもみなさんも

ほんとはマチガイかもしれない

信ずるものはあるもんか

大群衆のまっただなか

石やきいもをかじりつつ

孤独のおもいに胸せまる

 

たったひとりで生まれてきて

たったひとりで死んでいく

人間なんてさみしいね

人間なんておかしいね

 

マチガイだったらよかったね

 

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