昨夜からの強い風がやんだのは夜明け前だった。
東の空が赤く染まる頃。風は突然、嘘のように止まったのだ。
突然の静けさというものは、誰もが信じられない出来事を目前にした時の様に一瞬理解し難いものである。
これから起る出来事も全く同じだ。
昨日の夜に仕事が終わった後、 キキと別れ際に何気なく交わした。
「シュン君、明日の朝会ってくれる?」
「私と付き合ってほしいの夜明け前にこの場所で待っててね。」彼女はそう言うと向こうへ走り出し、振り返モせずに大きく叫んだ「絶対に!」
「明日の朝?、今日の朝だろう?ここでいいのかー」と僕は応えた。
彼女はそのまま走り去った。
僕は、約束通りに井の頭公園にやってきた。
池に面したベンチの上に立ち、夜明けの空に向かって大きく伸びをした。今になって眠気が僕の頭をたたく。
眠れない夜は、えてして朝方に眠気がやってくるのだ。
空には雲一つ無く、大きな月が地平線の近くに浮かんでいた。
朝焼けの染まる空は薄い青色が変わっていく中で、僕はそれを何気なく見つけた
月の裏から現われたような、小さな点が見え、それがだんだん大きくなってくる。
次第にはっきり見えるようになり、やがて僕は確信した。誰かが飛んでいる。いや、ふらふらとう浮かびながらこちらへやってくる。
キキの登場だ。
僕はそれがキキだと確信したけれども、信じていない、何故そんな風にそこにいるんだ?
申し訳無さそうに浮かんでいた月のまん中に、
キキは帚にまたがり、悠然と浮かびながら僕を見ている。
キキの顔は見えない。シルエット全体が大きな月の中から浮かび上がっている。
やがて、キキは空で一回転しながら僕のそばに降りてきた。
「シュン君、明日の朝。会ってくれる?」昨日の彼女の声が、眠気から換わって僕の頭
の中をたたく。
「君は魔女か?」
降りてきた彼女に聞いた。
彼女の顔を覗き込みながら、「本当にキキか?」
それは突然の静けさがやってきた様に。理解をこえた事件だ
その-2へ続く
格 好 花
東の空が赤く染まる頃。風は突然、嘘のように止まったのだ。
突然の静けさというものは、誰もが信じられない出来事を目前にした時の様に一瞬理解し難いものである。
これから起る出来事も全く同じだ。
昨日の夜に仕事が終わった後、 キキと別れ際に何気なく交わした。
「シュン君、明日の朝会ってくれる?」
「私と付き合ってほしいの夜明け前にこの場所で待っててね。」彼女はそう言うと向こうへ走り出し、振り返モせずに大きく叫んだ「絶対に!」
「明日の朝?、今日の朝だろう?ここでいいのかー」と僕は応えた。
彼女はそのまま走り去った。
僕は、約束通りに井の頭公園にやってきた。
池に面したベンチの上に立ち、夜明けの空に向かって大きく伸びをした。今になって眠気が僕の頭をたたく。
眠れない夜は、えてして朝方に眠気がやってくるのだ。
空には雲一つ無く、大きな月が地平線の近くに浮かんでいた。
朝焼けの染まる空は薄い青色が変わっていく中で、僕はそれを何気なく見つけた
月の裏から現われたような、小さな点が見え、それがだんだん大きくなってくる。
次第にはっきり見えるようになり、やがて僕は確信した。誰かが飛んでいる。いや、ふらふらとう浮かびながらこちらへやってくる。
キキの登場だ。
僕はそれがキキだと確信したけれども、信じていない、何故そんな風にそこにいるんだ?
申し訳無さそうに浮かんでいた月のまん中に、
キキは帚にまたがり、悠然と浮かびながら僕を見ている。
キキの顔は見えない。シルエット全体が大きな月の中から浮かび上がっている。
やがて、キキは空で一回転しながら僕のそばに降りてきた。
「シュン君、明日の朝。会ってくれる?」昨日の彼女の声が、眠気から換わって僕の頭
の中をたたく。
「君は魔女か?」
降りてきた彼女に聞いた。
彼女の顔を覗き込みながら、「本当にキキか?」
それは突然の静けさがやってきた様に。理解をこえた事件だ
その-2へ続く
格 好 花