気が付くとそこは真っ暗闇の中。
両手を自分の顔に近づけようとして動かした。右肩が痛いたかった。
落ちた時に、・・・・・。
たぶん、落ちたのだろう。幾分浮遊感を伴いながら底に到達した感じがした。
今でも何か底に接した尻や足がふわふわしているように感じられる。
両足首も動かすと痛かったが何とか、立ち上れそうだ。
他に怪我は無いようだ。右肩と足首は落下中に壁にぶつけたのだろう。
僕は暫らく、じっと、そこに座っていた。
僕はここが何処なのか、分からない。
確か、ロッタと散歩をしていて土手の上を歩いていた。
僕が土手の草むらで、おもわず、大きなくしゃみをしたと同時に穴に落ちたらしい。
見上げても遥か上のほうに満月のような青い空が見えるだけだ。
やっぱり、あそこから落ちたのか。
空の明るさは分かるけれど、ここまでは光が届かないようで、自分の手を目の前に持っていっても良く見えない。本当の暗闇だ。
ロッタはどうしたのだろう。
落ちたのは僕一人だったのか。
ここは深い井戸の中だろうか。
でも、何時もここの場所、土手を歩いていて、人が落ちるほどの穴が在ろうとは、どうしても思えなかった。もしあったとしても、危険個所として、柵ぐらい有ったはずだ。
ここは何処だろう。ここから出られるのか不安が僕の内側から徐々に膨らんでいく。
それと同じくして恐怖が襲ってくる。
それでも、何かどこか、楽観している自分がいる事が分かる.
ロッタ、ロッタは何処だ。
「ロッタ」と声を出して呼んでみる。
ロッタさえ、居ればと、両手を徐々に這わせる。見えない暗闇の中ロッタの体を探し出すのだ。
「居た。」ロッタの毛だ。毛が指先に触れたのだ.
「ロッタ。」
「おい、生きているのか。」
ロッタの体をまさぐる。やわらかい腹、ふさふさとした胸、そして首と喉、とがった鼻先そして口、生きている。手のひらに温かい息が吹きかかる.
「ロッタ、よかった。」