地図のいろいろ

半世紀も地図作りに携わっていましたので、この辺で振り返って地図を見直してみようかな~・・・。

復元江戸情報地図

2008-03-03 11:40:26 | Weblog
「復元 江戸情報地図」は平成6年(1994)、朝日新聞社から刊行された地図帳です。
私も、その作業に携わっていましたので、主たる作業をされた中川恵司さんの、日夜を問わぬ作業ぶりには直接接しており、敬服しました。 
縮尺1:6、500 A3判、128頁の大作です。



明治初期(1880~1883)の迅速1:5,000図や東京近傍1:10,000図(1909)を下敷きに、江戸末期(安政年間 1854~1860)の地図を展開するわけですが、明治期の地図は正規の測量がなされていない関係から、歪みが多く、そのまま転載するわけにいかなかったようです。
そこで、プラニメーターを駆使して、「諸向地面取調書」という屋敷台帳の坪数から地割計算をされていました。その上、大大名の屋敷内や寺社の敷地内の様子は、その子孫の所有している資料を参照されたそうです。
大方、山手線の内側すべてにわたって武家屋敷や寺社敷地内を、一軒一軒の地割確認は、常人にはちょっと・・・しかも一人で・・・大変な業績です。



本書に書かれている「地図表現上の新工夫」によると、
「本書の36面の地図は、江戸地図としては合理性のある尾張屋版の「江戸切絵図」の表現法を主に取入れた。
尾張屋版は、大名の上屋敷に家紋(赤)を入れ、中屋敷に■(墨)を、そして、下屋敷に●(墨)を略記号として配している。・・・また、切絵図は武家地を白、寺社地を赤、道路・橋を黄、町屋を薄墨、川・堀・池を青、田畠・山林・土手・馬場・原などを緑と、五色で色分けすることで町並みの性格を解りやすく表現しており、本書も色を吟味した上で、同じ色分けにならっている。
が、幕府直轄の施設・用地や火除地・河岸・蔵地などは、常時広範な人々に利用される公共用地としての性格が強いことから、「公儀地」として紫を新たに加わえた。・・・」
そして、この地図には、現代図を重ね刷りしてあり、今の場所と当時の情況とが読み取れるようにしてある。ただし、ちょっと無理があるようです。現代図は、パールインクで、できるだけ邪魔にならぬよう、見る角度によっては明確に読み取れるようにしてありますが・・・、
その点では、その後の出された、CD版には及びません。

鬼平や銭形平次捕物控などを、読む時に併用すると、なお一層現実味を増して、楽しくなります。