発売日直後の能力ではちょっと実用にならないどころかテストもできない性能だったTMPGEnc Video Mastering Works 8。ですが、さすがにそのまま放っておくというということはなく、3/27の時点でビットレートと速度の反映は行われるようになりました。相変わらずAV1においてアスペクト比の指定ができず、1:1しか使えないので実用には足りません。が、テストはある程度できます。今回はテストに使う1440x1080約27分のMPEG2-TSの動画を、解像度はそのままでアスペクト比を無効化したフルスクリーンで各種フォーマットのエンコードを行いました。アスペクト比の調整ができるようになった後とエンコード速度は大差ない設定だとと思われるからです。
フォーマットはH.265/HEVCとAV1。それぞれをソフトエンコード(x265、SVT)とハードエンコード(Intel A310利用、HEと呼称)の両方で、速度指定を変更しつつ行います。ビットレートはVBR0.5Mbps。実用に足るビットレートではありませんが、圧縮能力を見たかったのであえて非常識に小さななサイズにしてみました。画面全体の動きが大きく、低ビットレートでの圧縮には非常に向かないシーンで、おなじみのマークがどこまで再現されているかで能力を見てみます。見てわかりますが、サイズを2x2倍に拡大しています。
システム
OS:Windows11
CPU:Intel Corei7 12700 消費電力に制限を設定し、PBP通りの66Wまでで固定
メモリ:DDR2666 16GB
GPU:Intel Arc A310
H.265/HEVC(HE)とても遅い エンコード時間2分5秒

H.265/HEVC(HE)標準 エンコード時間1分43秒

AV1(HE)とても遅い エンコード時間2分22秒

AV1(HE)標準 エンコード時間01:42秒

H.265/HEVC(x265)とても遅い エンコード時間1時間19分51秒

H.265/HEVC(x265)標準 エンコード時間8分5秒

AV1(SVT)とても遅い エンコード時間7時間53分43秒

AV1(SVT)遅い エンコード時間2時間8分56秒

AV1(SVT)標準 エンコード時間10分30秒

TMPGEnc Video Mastering Works 7使用
H.265/HEVC(x265)とても遅い エンコード時間1時間53分48秒

TMPGEnc Video Mastering Works 7使用
H.265/HEVC(x265)標準 エンコード時間10分4秒

HEの場合、速度を「とても遅い」にしようが、「標準」にしようが画質に差があるとは思えません。「とても遅い」でも十分速いと言えるので、自己満足で設定してもいいでしょう。同じHEで比べるとさすがにH.265/HEVCは論外ですが、AV1はまずまず、なんとか把握できる程度の再現はなされています。ただ、SVTやx265と言ったソフトエンジンでも標準などなら速いので、これならHEに頼らなくても・・・という考えもあるかと思います。が、これはあくまで0.5Mbpsという非常識な低ビットレートだからの速度であることは考慮に入れてください。ビットレートを上げればハードはたいして変わらなくともソフトの時間はより掛かります。そこはもうちょっとマシなビットレートで測ってもいいと思えるほどソフトのバージョンアップが進んでからにしましょう。
SVTの「とても遅い」は0.5Mbpsとは思えない画質を実現します。が、これまた非常識と言っていいほどエンコードに時間がかかります。現実には「遅い」がせいぜいでしょう。それなりに時間はかかりますが圧縮効率の良さを考えると選択する価値は十分あります。かなり速い速度でエンコードを終える「標準」でもx265によるH.265/HEVC「とても遅い」並みの画質になりますので、エンコード効率の良さでAV1を選ぶのも手です。ただ、AV1フォーマットはこのマークのような画面に固定されている部分の再現には力を発揮しますが、動く部分だとすこしあっさり目の画質にする傾向があるので、H.265/HEVCと比べて物足りなく思う人もいるかも知れません。全体的には上回っていても全面的に上回っているわけではないので、体験版などで実際見比べてみてから検討するといいと思います。
旧バージョンの7のH.265/HEVC(x265)もオマケの比較対象に入れてみました。エンコード速度は8になって大分上がっているのですが、その代わりに画質が7と比べて若干落ちたような気がします。ただ、あくまでこの拡大図では、の話であり、通常の動画上では差は感じていません。なにせまだ8は未完成に近い製品なので、総合評価には早いでしょうね。
AV1とエンコード前の元動画のファイルに入っている音声ファイルを直接くっつけて多重化するのは、TMPGEnc Video Mastering Works 8ではツールを利用してMKVに収録する場合のみが可能でした。TSとかMP4ではできなかったのでここは残念。MKVで構わない人はこれでいいでしょうが、他の形式にしたい人は他のツールを探しましょう。
と、現状ではこのくらいでしょうか。とりあえず、早くAV1でもアスペクト比を1:1以外が使えるようにしてほしいです。
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